⚠️ この記事をお読みいただく前に
- 本記事は愛犬に合うフードを見つけるための参考情報です。特定の病気の治療・予防が目的ではありません。
- 診断・治療・食事の変更は必ず獣医師の指導のもとで行ってください。
- 個々の犬の状態によって最適な対応は異なります。
膵炎と診断されたら、何から始めればいい?
通常食より脂質を抑えた低脂肪食に切り替え、1 回量を減らして 1 日複数回に分けます。具体的な脂質量は獣医師の指示に従います。
膵炎(pancreatitis)とはどんな病気?
膵炎とは、膵臓の消化酵素が過剰にはたらいて、膵臓自身に炎症を起こす病気です[7]。膵臓は食べ物を消化する力と、血糖値を整える力をつかさどる臓器。ここで炎症が起きると、激しい痛みや嘔吐、食欲低下が現れます。発症が急なものを急性膵炎、繰り返し再発するものを慢性膵炎と呼びます。
気づきのサイン(すぐ受診したい症状)
- 急に何度も吐く(食後だけでなく空腹時も)
- お祈りのポーズ(前足を伸ばし腰を上げる、腹痛のサイン)
- 急な食欲低下、ぐったりして元気がない
- 下痢(脂っぽい便、白っぽい便)、発熱、震え
食事の見直しが中核となる理由
膵臓は脂質を分解するリパーゼ(脂質を分解する酵素)を大量に分泌します。脂質の多い食事は膵臓に過剰な負担をかけ、炎症の再燃につながるため、食事から脂質を抑えることが治療と再発予防の中核です[1][6]。査読付きの総説でも、低脂肪食事療法は膵炎管理の基本方針として位置づけられています[1][6]。ゴミ漁り(オッズ比=その要因があると何倍起こりやすいかの目安。13.2 倍)や食卓の残り物(オッズ比 2.2 倍)が膵炎の主要な発症リスク要因として大規模な疫学研究[3]で報告されました。
シニア犬で膵炎が多い理由と発症の引き金
膵炎はシニア犬で発症リスクが高まります。加齢で消化酵素のバランスが崩れやすく、過体重や代謝の変化、併発疾患が増えるためです[1]。発症の主な引き金は次のとおりです。
- 高脂肪食・ゴミ漁り・人間の食卓のおすそ分け
- 過体重・運動不足、高脂血症(中性脂肪が高い状態)
- 薬剤性(一部の抗てんかん薬や抗がん剤など)、内分泌疾患の併発、ストレス・術後
急性膵炎と慢性膵炎、どう違う?
急性は突然の激しい症状、慢性は再発を繰り返す長期管理型。EPI や糖尿病の併発もあるため長期フォローが大切です。
| 項目 | 急性膵炎 | 慢性膵炎 |
|---|---|---|
| 発症 | 突然・激しい | 緩やか・繰り返す |
| 主症状 | 嘔吐・激しい腹痛・発熱 | 断続的な嘔吐・食欲ムラ・体重減少 |
| 食事方針 | 急性期は短時間絶食 → 48 時間以内に再開、低脂肪食 | 長期的に低脂肪食を維持 |
| 給餌頻度 | 少量を頻回に分割 | 少量を複数回に分割 |
| 予後の目安 | 軽症は数日〜1 週間で回復。入院した急性膵炎では生存率約 75%(致死率約 25%)と報告され[9]、壊死性膵炎(膵組織が部分的に壊死する重い状態)など重症ほどリスクが高い | 食事管理で数年単位の維持が可能[1] |
※ 最近の研究[6][8]では、嘔吐がなければ入院後 48 時間以内に経腸栄養(口や胃から栄養をとること)を再開すると、自発的な食事再開までの時間が短縮し、消化器の不耐性も少ないと報告されています。具体的なタイミングは獣医師の指示に従ってください。
慢性膵炎で起こりうる併発症(EPI / 糖尿病 / DIC)
慢性膵炎が進むと、以下の併発症が起こることがあります。長期フォローで早めに見つけることが大切です[1]。
- EPI(膵外分泌不全:消化酵素が出にくくなる状態)—下痢・体重減少が続く
- 糖尿病—インスリンを作る細胞が障害される
- DIC(播種性血管内凝固:全身で血液が固まりにくくなる状態)—重症急性膵炎の合併症として注意
血液検査の数値(cPLI・リパーゼ)はどう読む?
cPLI は膵炎診断で中心的な検査。検査票で「cPLI」または「Spec cPL」を探し、200 を超えていたら獣医師と相談を。
動物病院で「膵臓の数値」と言われるのは、おもに cPLI(犬膵特異的リパーゼ:膵臓だけが出すリパーゼを測る検査)と BUN(尿素窒素:タンパク質を分解した後に出る老廃物)・トリグリセリド(中性脂肪)です。
📊 検査票で見つけたい 2 つの項目
- cPLI(または Spec cPL):200 μg/L 以下が正常、201〜399 が境界(グレーゾーン)、400 以上で膵炎と一致する値とされます[10]。SNAP cPL という院内迅速検査もあります。
- トリグリセリド(中性脂肪):高い状態は高脂血症の指標で、膵炎のリスクと関連します[2]。基準値は検査機関により異なるため、結果は獣医師と確認しましょう。
※ 補助検査:DGGR-リパーゼ、アミラーゼ(炭水化物を分解する酵素)、超音波・CT 画像。
ただし数値だけで確定診断はできず、症状や超音波などの画像所見と組み合わせて総合的に診断されます[1]。
脂質はどのくらい抑える?
通常のフードより脂質を抑えた低脂肪フードへの切り替えが基本。最適な脂質量を定めた科学的根拠は確立されておらず、具体量は獣医師が判断します。
膵炎の食事管理で中核となる要素が脂質制限です。脂質はリパーゼの分泌を強く刺激するため、食べ過ぎは膵臓の負担を直接増やします[1][6]。
📊 「低脂肪」とは?— 科学的根拠の現状
膵炎の犬に最適な脂質量を数値で定めた科学的根拠は、現時点で確立されていません[6]。獣医療では通常のフードより脂質を抑えた低脂肪食への切り替えが基本方針とされ[1][6]、高脂血症がある場合はより脂質の低い設計が選ばれます[2]。具体的な脂質量は症状や体質によって異なるため、フード選びはかかりつけ獣医師の指示に従ってください。
高脂血症は膵炎リスクを高めることが分かっており[2]、ミニチュアシュナウザーは遺伝的に高脂血症になりやすく、膵炎の好発犬種としても有名です。
食事回数は急性期・回復期・維持期でどう変える?
少量頻回給餌が基本。回復に応じて 1 回量を増やしながら、給餌回数を段階的に減らします。具体的な回数は獣医師の指示に従います。
| 段階 | 給餌の分け方 | 意識すること |
|---|---|---|
| 急性期(発症〜数日) | 少量を頻回に | 嘔吐がなければ 48 時間以内に再開、温めて香りを引き出す[6][8] |
| 回復期(数日〜数週間) | 回数を減らし1回量を増やす | 低脂肪食を継続 |
| 維持期(再発予防) | 通常に近い回数へ | 適正体重 BCS 4-5/9(ボディコンディションスコア:肋骨が軽く触れる程度)を維持 |
1 日に必要なカロリーは体重から計算できますが、個体差が大きいため獣医師に伺うのが確実です。小型犬の給餌量計算ツールやカロリー計算ガイドも併用ください(体重を入れるだけで目安カロリーが分かります)。
再発リスクで気をつけるべきことは?
主要な発症リスクは「ゴミ漁り(オッズ比 13.2 倍)」。家庭の生活習慣の見直しが発症リスクの低減につながります。
📊 膵炎の主要な発症リスク要因
犬種要因も知られています。研究[4]ではヨークシャーテリアが致死的急性膵炎のリスク要因として挙げられました。最新の総説[1]では下記が好発犬種として報告されています。
- ミニチュアシュナウザー(高脂血症と関連)/ ミニチュアダックスフンド / コッカースパニエル / ヨークシャーテリア
⚠️ 再発予防の家庭ルール
- 食卓からのおすそ分けを禁止(家族全員で徹底)
- ゴミ箱を犬が開けられない構造に(蓋付き・高い場所)
- 適正体重 BCS 4-5/9 を維持(肋骨が軽く触れる程度)
- 定期的な血液検査(cPLI・トリグリセリド・体重)
- おやつは低脂肪のものを少量(ジャーキー類は避ける)
膵炎の犬が食べていい食材・避けたい食材は?
茹でた鶏ささみ・白米・かぼちゃ・さつまいも・卵白など低脂肪素材は獣医師相談で与えやすく、脂質の多い食材は避けます。
| 避けたい食材 | 具体例 | 理由 |
|---|---|---|
| 揚げ物 | 唐揚げ・天ぷら・フライドポテト | 脂質が極めて多く、膵臓への負担が大きい |
| 脂身の多い肉 | バラ肉・霜降り肉・皮付き鶏肉・ベーコン・ソーセージ | リパーゼ分泌を強く刺激 |
| 乳製品(脂質高) | バター・生クリーム・チーズ(カマンベール等) | 脂肪分が多く消化器負担も大きい |
| ナッツ類 | アーモンド・くるみ・ピーナッツ | 脂質が非常に多く、犬には消化困難 |
| 市販おやつ(高脂肪) | ジャーキー・ビスケット・揚げ菓子 | 脂質と塩分が多い |
| 人間の食べ残し | 残飯・味付き料理 | ゴミ漁りはオッズ比 13.2 倍のリスク[3] |
比較的与えやすい食品(獣医師相談で)
- 茹でた鶏ささみ・鶏むね肉(皮と脂身を除く):低脂肪・高消化性
- 白米・おかゆ:脂質が少なく、エネルギー補給に
- 茹でたかぼちゃ・さつまいも:食物繊維と糖質、少量から
- 白身魚(タラ・カレイ等の茹で):低脂肪のタンパク源
- 無糖・低脂肪のプレーンヨーグルト(少量):チーズ類より脂質低
- 加熱した卵白(少量):脂質ほぼゼロの良質タンパク源(卵黄は脂質が多いので避ける)
与えてもよいおやつの考え方
選び方次第で楽しみは残せます。1 日の総カロリーに占めるおやつは 10% 以下を目安に、低脂肪の素材を少量。市販の高脂肪ジャーキー・チーズスティック・ビスケットは避けましょう。
療法食と手作り食、どう判断する?
療法食は脂質設計が精密で扱いやすい一方、完全な手作りは栄養設計の難しさから慎重な判断が求められます。
| 選択肢 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|
| ① 低脂肪療法食 | 脂質・タンパク質・繊維が精密に設計 | 食いつきが悪い場合あり、獣医師の指示前提 |
| ② 療法食 + 補完トッピング | 食いつき改善、低脂肪素材を少量プラス | トッピング内容は獣医師相談、総脂質量に注意 |
| ③ 完全手作り食 | 素材を選べる、アレルギー対応の柔軟性 | ボード認定獣医栄養学者(獣医栄養学の専門資格をもつ獣医師)の処方が必須、家庭で十分に低脂肪を保つのは難しい |
膵炎の犬への完全な手作り食は、ボード認定獣医栄養学者など専門家の処方なしでは慎重な判断が求められます。慢性腎臓病向け手作りレシピを調査した研究[5]では、市販書籍やインターネット上のレシピの多くが栄養学的に不十分と報告されており、慢性疾患の食事療法では同様の傾向が指摘されています。
フード移行は 7〜30 日で段階的に
新フードへの切替は、急に全量を変えると下痢や拒食、再発の引き金になります。
| 期間 | 新フード | 現行フード | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1〜3 日目 | 25% | 75% | 少量混合で香り・味に慣らす |
| 4〜7 日目 | 50% | 50% | 便の様子・食欲を確認 |
| 8〜14 日目 | 75% | 25% | 嫌がる場合は前段階に戻す |
| 15 日目〜 | 100% | 0% | 完全切替。再発しやすい子は 30 日かけても可 |
食欲低下や軟便が出たら、一段階前に戻して 2〜3 日様子を見ましょう。詳細は手作りごはんの栄養リスク解説へ。
食欲が落ちたとき、どう工夫する?
温め・ふやかし・ウェット切替・少量頻回・低脂肪トッピングの 5 つの工夫が役立ちます。
痛みや吐き気から食欲が顕著に低下することがあります。WANPAKU 診断データでは、消化器の悩みを選択された回答のうち 食欲不振との併発は約4割。
食欲低下時の 5 つの工夫
- 温める:電子レンジで 10〜15 秒、または ぬるま湯(37〜38℃)で香りを引き出す
- ウェットフード活用:低脂肪ウェットの療法食、または ドライと混ぜる
- 少量頻回給餌:1 日量を複数回に分けて胃腸負担を軽減
- 低脂肪トッピング:茹でた鶏ささみのゆで汁、加熱卵白少量、無糖・低脂肪ヨーグルト少量(必ず獣医師に相談)
- 食事環境:静かで落ち着ける場所で、痛みがあるときは無理に量を増やさず食べたがるタイミングを尊重
体重減少が止まらないとき・末期で食べないとき
体重減少が続くなら、カロリー再計算と EPI(膵外分泌不全)の可能性を獣医師に相談を。脂っぽい便・食べているのに痩せる場合は TLI(トリプシン様免疫反応物質:膵酵素を測る血液検査)検査が選択肢です。
末期で食べないときは、療法食の理想を貫くより「食べてくれるものを食べられるだけ」に方針を切り替える時期があります。少量のささみのゆで汁を混ぜる、シリンジ(注射器型給餌器具)でぬるめのスープ状フードを少しずつ与えるなど、QOL 最優先に。食欲増進薬の選択肢もあります。
⚠️ すぐに獣医師へ相談すべきサイン
食事をほとんど摂らない(特に膵炎経験のある犬では半日〜1 日でも要注意)、頻繁な嘔吐、お腹の痛みのサイン、ぐったりして元気がない場合は速やかに動物病院を受診してください。膵炎の再燃や脱水のリスクがあります。
食欲低下の全般的な原因は6 つの原因と対処法へ。
WANPAKU 診断 4,161回から見える、消化器の悩み
消化器の悩みは 21.5%(896回)。食欲不振との併発 37.1%、ミニチュアダックスでは 26.5%。
WANPAKU 診断 4,161回のうち、消化器の悩みを選択された回答は 896回(21.5%)。膵炎好発犬種のミニチュアダックスフンドでは消化器悩みが 26.5% と平均より高めです。
4,161回の診断データから見える、消化器悩みの併発パターン
※ WANPAKU 診断システム集計(消化器悩み選択者、2025年9月〜2026年5月)
膵炎は消化器悩みの代表例。食欲不振や関節ケア(29.6% 併発)と密接に関連します。
📚 もっと深く:膵炎に関連する話題を spoke 記事で
- 食べないときの 6 つの原因:今日からできる対処法
- 小型犬の給餌量計算ツール:体重を入れるだけで目安が分かる
- シニア犬の食事ガイド:7 歳からの栄養管理
- 手作りごはんの栄養リスク:完全手作り食の留意点
- 腎臓病の食事管理:併発時の参考に
受診前に整理しておきたいことは?
フード・食事回数・体重・嘔吐の様子を記録すると診察がスムーズに。治療費は症状で大きく変わります。
家族のライフスタイル別の食事管理
- 共働き世帯: 朝晩 2 回 + 昼の自動給餌器を活用、おやつのカロリー記録を家族で共有
- 多頭飼い: 個別給餌で盗食防止(別室 or タイミング差し替え)。療法食の場合は特に厳格に
- 留守番が長い家庭: 知育玩具で食事時間を延長、スローフィーダー活用
- シニア犬: 食欲低下を毎日記録、24 時間以上食べない場合は受診
✅ 受診前チェックリスト
- 現在のフードの種類・量(パッケージ持参が理想)
- 食事の回数とタイミング、おやつの内容と頻度
- 体重の変化(過去 3 か月)
- 嘔吐の頻度・タイミング・吐物の様子
- 便の様子(脂っぽい・白っぽい・下痢の有無)
- 痛みのサイン(お祈りのポーズ・お腹を触られるのを嫌がる等)
- 過去の血液検査結果(cPLI・トリグリセリド・肝酵素)
- 家族の食卓からおすそ分けの有無、ゴミ箱事故の有無、服用中の薬・サプリ
💰 治療費の目安(参考値)
- 軽症(通院のみ):2〜3 万円(血液検査・点滴・薬代)
- 中等度(短期入院):5〜10 万円(入院 2〜5 日、輸液・鎮痛剤・画像検査)
- 重症(長期入院):10〜15 万円以上(入院 1 週間以上、集中管理)
※ 動物病院や地域、合併症の有無で大きく変わります。ペット保険の対象になるかも確認しておくと安心です。
よくある質問
犬の膵炎で食べてはいけないものは何ですか?
膵炎の犬が避けたい食品は、揚げ物・脂身の多い肉・バター・生クリーム・ナッツ・市販のジャーキー・チーズ(カッテージ以外)など脂質の多い食品です。大規模な疫学研究[3]では、ゴミ漁り(人間の食べ物)が膵炎発症のオッズ比 13.2 倍と主要なリスク要因として報告されています。家庭の食卓から落ちたものや揚げ物の余りを与えるのも避けましょう。
犬の膵炎の寿命や余命はどれくらいですか?
症状の重さで大きく異なります。軽症の急性膵炎は早期治療で数日〜1 週間で回復するケースが多い一方、入院が必要な急性膵炎を対象とした研究では生存率約 75%(致死率約 25%)と報告されています[9]。高窒素血症や合併症(急性腎障害など)があると死亡リスクは高くなります[9]。慢性膵炎は再発を繰り返しながらも、適切な食事管理で数年単位の維持が可能です[1]。具体的な見通しはかかりつけ獣医師にご相談ください。
膵炎の犬に与えてもよいおやつや卵はありますか?
脂質の少ないおやつをごく少量、獣医師相談のうえで活用できます。例:茹でた鶏ささみ少量、薄切りりんご(少量・芯と種除く)、無糖・低脂肪のプレーンヨーグルト少量、加熱した卵白少量等。卵黄は脂質が多いため避け、卵白のみが目安です。1 日の総摂取カロリーに占めるおやつは 10% 以下に。市販の高脂肪ジャーキーやビスケットは避けましょう。
膵炎の犬の脂質はどのくらい抑えますか?
膵炎の犬に最適な脂質量を数値で定めた科学的根拠は確立されていません[6]。獣医療では通常のフードより脂質を抑えた低脂肪食への切り替えが基本方針とされ[1][6]、高脂血症がある場合はより脂質の低い設計が選ばれます[2]。具体的な脂質量は獣医師の指示に従ってください。揚げ物・脂身の多い肉・バター・生クリーム・ナッツ類はとくに脂質が多いため避けます。
膵炎の犬の食事回数はどう変えればいいですか?
「少量頻回給餌」が基本です。1 回量を減らして 1 日複数回に分け、急性期はより頻回に与えます[6]。具体的な回数は症状により異なるため獣医師の指示に従ってください。最近の研究[6][8]では、嘔吐がなければ 入院後 48 時間以内に経腸栄養を再開すると自発摂取への復帰が早く、消化器の不耐性も少ないと報告されています。
cPLI や リパーゼの値はどう読めばいいですか?
cPLI(犬膵特異的リパーゼ:膵臓だけが出すリパーゼを測る検査)は膵炎診断で精度の高い血液検査です。200 μg/L 以下が正常、201〜399 が境界(グレーゾーン)、400 以上で膵炎と一致する値とされます[10]。SNAP cPL という院内迅速検査もあります。数値だけで確定診断はせず、症状や超音波などの画像所見と組み合わせて総合的に診断されます[1]。
膵炎用の療法食を食べてくれない場合はどうすればいいですか?
食いつきが悪い場合は、まずフードを人肌程度(37〜38℃)に温めて香りを引き出す方法が有効です。少量のぬるま湯でふやかす、ウェットタイプの療法食に切り替える、茹でた鶏ささみのゆで汁を少量混ぜる方法もよいでしょう。トッピングは脂質が低い素材に限定し、必ず獣医師相談を。絶食が 2 日以上続く場合は速やかに動物病院を受診しましょう。
フードの切り替え期間はどれくらいかけるべきですか?
目安は 7〜30 日。膵炎の急性期を脱して回復期に入ったら徐々に新フードへ。例:1〜3 日目は新フード 25%+現行 75%、4〜7 日目は 50% ずつ、8〜14 日目は新フード 75%、15 日目以降は完全切替。食欲低下や軟便が出たら一段階戻して 2〜3 日様子を見ます。急な切替は再発リスクのため避けましょう。
膵炎の犬はさつまいもを食べていいですか?
さつまいもは脂質が非常に少なく食物繊維が豊富なため、皮をむいて加熱し(茹でる・蒸す)味付けせず少量であれば、比較的与えやすい食材です[6]。ただし糖質が多いので量は控えめにし、トッピングやおやつは 1 日の総カロリーの 10% 以内に。揚げる・バターやはちみつを加えるのは避けます。持病の状態によって適否は変わるため、与える前にかかりつけ獣医師にご確認ください。
膵炎の犬に鶏ささみを与えてもいいですか?
皮と脂身を除いて茹でた鶏ささみは、低脂肪・高消化性で膵炎の犬にも比較的与えやすいタンパク源です[6]。必ず加熱し、塩や油などの味付けはしないこと。ゆで汁を少量フードに混ぜると、食欲が落ちたときの風味付けにも使えます。量は獣医師と相談し、主食の療法食を置き換えない範囲で少量にとどめましょう。
まとめ
犬の膵炎の食事は、「脂質を抑える」「少量頻回給餌」「再発リスク要因の回避」の 3 つが土台です。最適な脂質量を数値で定めた科学的根拠は確立されておらず、通常食より脂質を抑えた低脂肪食への切り替えと、1 回量を減らして複数回に分ける給餌が基本となります[1][6]。具体的な内容は獣医師の指示に従ってください。
大規模な疫学研究[3]が示すように、ゴミ漁りや人間の食事の与え方など、家庭の生活習慣が主要な発症リスク要因。食卓からのおすそ分け禁止、ゴミ箱対策、適正体重維持、定期的な血液検査で再発を予防しましょう。療法食を中心に、補完トッピングや手作りという選択肢を獣医師との相談で組み合わせることが、長く穏やかに暮らすための土台になります。
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参考文献を表示(全 11 件)
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