避妊・去勢後の犬の食事管理|太りやすくなる理由とフードの選び方

避妊・去勢後の犬の食事管理ガイド|ホルモン変化と体重管理のポイント

💡 この記事の結論

避妊・去勢後の食事管理で押さえるべきポイント

  • 代謝の変化 - 術後はホルモン変化により基礎代謝が約30%低下し、食欲が増加する[3]
  • カロリー調整 - 術前と比べて20〜30%のカロリー削減が目安[1]
  • フード選び - 脂質8〜12%、たんぱく質25%以上、食物繊維豊富なフードが適切
  • 切り替え方 - 7〜10日かけて徐々に体重管理用フードへ移行する
  • 定期的な体重測定 - 2週間ごとに体重を記録し、給餌量を微調整する

📌 術後の体重管理に適したフードの選び方と具体的なカロリー計算方法は下記をご覧ください

重要なお知らせ

術後の食事管理は必ず獣医師の指導のもとで行ってください。この記事は研究データに基づく情報提供を目的としており、個々の犬への医療的アドバイスではありません。愛犬の体重管理や食事プランの調整は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

避妊・去勢後に太りやすくなる理由

「手術のあと、急に食欲が増えて体重が増えてしまった...」そんな経験をされた飼い主さんは少なくありません。

実は、避妊・去勢手術後に犬が太りやすくなるのは「飼い主さんの管理不足」ではなく、ホルモンバランスの変化による身体的な理由が大きく関わっています。手術後の体の変化を正しく理解することが、適切な食事管理の第一歩です。

ホルモン変化が代謝に与える影響

避妊手術ではエストロゲン(女性ホルモン)、去勢手術ではテストステロン(男性ホルモン)の分泌が大幅に減少します。これらのホルモンには、実はエネルギー代謝を調整する重要な役割があります。

  • エストロゲンの減少(メス) - 脂肪の蓄積を抑制する働きが弱まり、体脂肪がつきやすくなる[1]
  • テストステロンの減少(オス) - 筋肉量の維持に関わるホルモンが減少し、基礎代謝が低下する[1]
  • 食欲調節の変化 - 満腹中枢に作用するホルモンバランスが崩れ、食欲が増加する傾向がある[2]

基礎代謝の低下はどのくらい?

Root MVらの研究によると、避妊・去勢手術後の動物では基礎代謝(安静時のエネルギー消費量)が約25〜33%低下することが報告されています[3]。つまり、手術前と同じ量のフードを食べ続けるだけで、体重が増えてしまう計算になります。

📊 術後の代謝変化まとめ

  • 基礎代謝: 約25〜33%の低下[3]
  • 食欲: 術後に食事摂取量が増加する傾向[2]
  • 体重増加リスク: 未手術の犬と比較して肥満リスクが有意に高い[1]
  • 変化の時期: 術後数週間以内に代謝変化が始まる

Lefebvre SLらの大規模調査(約4,000頭以上を分析)では、避妊・去勢手術を受けた犬は未手術の犬と比較して過体重になる確率が有意に高いことが示されています[1]。これは「手術したから太った」というシンプルな話ではなく、ホルモン変化に合わせた食事管理が行われなかったことが主な原因と考えられています。

つまり、術後の食事管理を適切に行えば、体重増加は十分に防げるということです。

術後のカロリー調整の目安

避妊・去勢後の体重管理でもっとも重要なのは、カロリー摂取量の見直しです。研究データに基づく具体的な調整方法を紹介します。

20〜30%のカロリー削減が目安

基礎代謝が約25〜33%低下するという研究結果[3]を踏まえると、術前と比較して20〜30%のカロリー削減が適切な目安になります。

具体的なカロリー計算方法については、小型犬のカロリー計算ガイドで詳しく解説していますが、基本的な計算式は以下の通りです。

📐 術後の必要カロリー計算式

  1. 安静時エネルギー要求量(RER)を計算: 70 × (体重kg)0.75
  2. 避妊・去勢後の係数をかける: RER × 1.6(一般的な成犬は1.8〜2.0)

例:体重5kgの避妊後の犬の場合
RER = 70 × 50.75 = 70 × 3.34 = 約234kcal
1日の必要カロリー = 234 × 1.6 = 約374kcal

体重別・術前後のカロリー比較表

以下の表は、一般的な活動量の成犬における術前・術後の1日あたりの必要カロリーの目安です。

体重別・避妊去勢前後の1日あたり必要カロリー目安
体重 術前(係数1.8) 術後(係数1.6) 削減カロリー 削減率
2kg 約210kcal 約186kcal -24kcal 約11%
3kg 約280kcal 約249kcal -31kcal 約11%
5kg 約421kcal 約374kcal -47kcal 約11%
7kg 約547kcal 約486kcal -61kcal 約11%
10kg 約709kcal 約630kcal -79kcal 約11%
15kg 約952kcal 約846kcal -106kcal 約11%
20kg 約1,175kcal 約1,044kcal -131kcal 約11%

※ 上記はRER × 係数による理論値です。実際には犬種・年齢・活動量・個体差により異なるため、体重の変化を見ながら調整してください。すでに体重が増え始めている場合は、さらに多くの削減(20〜30%)が必要になることもあります。

カロリー調整のタイムライン

📅 術後のカロリー調整スケジュール

  • 術後1〜3日目: 術後の回復期。食欲が戻らなければ無理に食べさせない。食べる場合は通常量でOK
  • 術後4〜7日目: 食欲が回復したら、現在のフード量を10%減らすことから開始
  • 術後2〜3週目: 体重管理用フードへの切り替えを開始(7〜10日かけて移行)
  • 術後1ヶ月〜: 2週間ごとに体重を測定し、必要に応じて給餌量を微調整

愛犬の正確な1日の必要カロリーを知りたい方は、小型犬の給餌量自動計算ツールも活用してみてください。

⚠️ 術後の食事変更は急激に行わない

術後の食事変更は急激に行わず、7〜10日かけて徐々に切り替えることが大切です。急な食事変更は消化不良や下痢の原因になります。特に術後は体が回復途中のため、消化器への負担をできるだけ軽くしてあげましょう。

術後に適したフードの選び方

避妊・去勢後のフード選びでは、単にカロリーが低いだけでなく、栄養バランスを維持しながらカロリーをコントロールできるフードを選ぶことが大切です。Phungviwatnikul Tらの研究では、避妊後のメス犬において食事の多量栄養素バランスが消化率や腸内細菌叢に影響を与えることが示されています[4]

1. 適度な脂質(8〜12%)

脂質は1gあたり9kcalと高エネルギーなため、脂質を抑えることが効率的なカロリーカットにつながります。ただし、脂質を極端に下げすぎると皮膚・被毛のトラブルや必須脂肪酸の不足を招く可能性があります。

  • 8%未満: 積極的なダイエットが必要な場合
  • 8〜12%: 術後の体重維持・予防的管理に最適な範囲
  • 12%超: 活動量の多い犬であれば許容範囲

2. 十分なたんぱく質(25%以上)

術後は筋肉量が低下しやすいため、たんぱく質をしっかり摂ることが特に重要です。高たんぱく質フードは筋肉量を維持しながら脂肪だけを減らす効果があり、基礎代謝の維持にも役立ちます[2]。タンパク源ごとの特徴についてはタンパク質比較ガイドも参考にしてください。

3. 食物繊維で満腹感をサポート

術後は食欲が増加する傾向があるため、食物繊維を豊富に含むフードを選ぶことで満腹感を得やすくなります。食物繊維3〜8%程度が目安です。

4. L-カルニチン配合

L-カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアへ運搬し、脂肪の代謝をサポートする成分です。術後の脂肪燃焼効率が低下した体にとって、L-カルニチンの摂取は体重管理の助けになります。

術後に適したフードの栄養バランス

栄養素 推奨範囲 術後に重要な理由
たんぱく質 25%以上 術後の筋肉量低下を防ぎ、基礎代謝を維持
脂質 8〜12% 効率的なカロリーカットと必須脂肪酸の確保を両立
食物繊維 3〜8% 術後の食欲増加に対して満腹感を維持
カロリー 310〜350kcal/100g 低下した代謝に合わせたエネルギー密度
L-カルニチン 配合あり 脂肪代謝をサポートし、効率的な体重管理を助ける

フードの種類(ドライ・ウェット・セミモイスト)の違いについては、ドッグフードの種類ガイドで詳しく解説しています。

避妊・去勢後の体重管理に適した栄養バランスを持つフードの中から、研究データに基づく基準(低脂質・高たんぱく・適切なカロリー密度)を満たす製品をご紹介します。体重管理フードの全般的な選び方については体重管理フードガイドもあわせてご覧ください。

ヒルズ サイエンス・ダイエット 肥満傾向の成犬用 チキン

ヒルズ サイエンス・ダイエット 肥満傾向の成犬用 チキン
カロリー 313.2kcal/100g
成分 たんぱく質 25.7% / 脂質 11.4% / 繊維 12.5%
サポート成分 L-カルニチン、グルコサミン、コンドロイチン
価格 ¥993/kg(¥99/100g)

こんな子におすすめ

  • 避妊・去勢後に体重が増え始めた子
  • L-カルニチン配合で脂肪代謝をサポートしたい子
  • コスパ重視で長期的に体重管理を続けたい飼い主さん

動物病院でも広く取り扱われている体重管理フードの定番です。313.2kcal/100gという低カロリー設計に加え、高たんぱく質(25.7%)で筋肉量を維持しながら体重をコントロールできます。L-カルニチン配合で術後の脂肪代謝低下をサポートし、高繊維質(12.5%)で術後に増加しがちな食欲に対して満腹感を得やすい設計です。価格も¥993/kgと手頃なため、術後の長期的な体重管理に向いています。

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N&D キヌア ウェイトマネジメント

N&D キヌア ウェイトマネジメント
カロリー 314.5kcal/100g
成分 たんぱく質 28% / 脂質 8% / 繊維 8.2%
サポート成分 L-カルニチン、キヌア(スーパーフード)、グレインフリー
価格 ¥4,830/kg(¥483/100g)

こんな子におすすめ

  • 術後にしっかりカロリーコントロールしたい子(314.5kcal/100g)
  • 高たんぱく・低脂質で筋肉量を維持したい子
  • 穀物アレルギーがあってグレインフリーを探している子

イタリアのファルミナ社が開発した体重管理専用フードです。たんぱく質28%・脂質8%という術後に最適なバランスに加え、314.5kcal/100gの低カロリー設計。L-カルニチン配合で脂肪代謝をサポートします。繊維8.2%で満腹感も十分に維持できるため、術後の食欲増加にも対応しやすい設計です。グレインフリーなので穀物が気になる子にも適しています。

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ウェルネスコア(グレインフリー)小型犬体重管理用

ウェルネスコア グレインフリー 小型犬体重管理用
カロリー 356kcal/100g
成分 たんぱく質 34.0% / 脂質 13.0% / 繊維 7.5%
サポート成分 L-カルニチン、グルコサミン、コンドロイチン
価格 ¥1,368/kg(¥137/100g)

こんな子におすすめ

  • 術後の筋肉量低下を最小限にしたい子(たんぱく質34%)
  • 活動量がそこそこあり、高たんぱく設計が合う子
  • コスパ重視で長く続けたい飼い主さん(約137円/100g)

たんぱく質34%は体重管理フードの中でもトップクラスの高さ。術後に筋肉量をしっかり維持したい子に特に適しています。L-カルニチン配合で脂肪代謝もサポート。関節ケア成分(グルコサミン・コンドロイチン)も配合されており、体重増加による関節への負担が気になる子にもおすすめです。100gあたり約137円とコスパにも優れています。

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3製品の比較まとめ

製品名 カロリー たんぱく質 脂質 L-カルニチン 価格 術後のおすすめポイント
ヒルズ サイエンス・ダイエット 313.2kcal 25.7% 11.4% ¥993/kg バランス型・コスパ良・高繊維で満腹感
N&D キヌア ウェイトマネジメント 314.5kcal 28% 8% ¥4,830/kg 最低脂質・グレインフリー・栄養密度高
ウェルネスコア 小型犬体重管理用 356kcal 34.0% 13.0% ¥1,368/kg 最高たんぱく・筋肉維持重視・高コスパ

術後の食事スケジュールと運動

食事スケジュールの見直し

避妊・去勢後は食欲が増加しやすいため、1日の食事回数を増やして空腹感を軽減する方法が効果的です。

📅 術後の食事スケジュール例(1日3回の場合)

  • 朝(7:00頃): 1日の給餌量の35%
  • 昼(12:00頃): 1日の給餌量の30%
  • 夕(18:00頃): 1日の給餌量の35%

※ 1日の総カロリーは変えず、回数を分けることで空腹時間を短くするのがポイントです。

食事管理のポイント

  • キッチンスケールで毎回計量: 目分量は禁物。数gの誤差でも積み重なると大きな差になります
  • おやつは1日のカロリーの10%以内: おやつを与えた分、フードの量を必ず減らす
  • 家族全員でルールを共有: 「かわいそうだから」と誰かが余計に与えていないか確認
  • フードの置きっぱなしはNG: 決まった時間に決まった量を与え、15〜20分で食べなかった分は片付ける

術後の運動タイミング

術後の運動再開には段階的なアプローチが必要です。

術後の運動再開スケジュール
時期 運動の目安 注意点
術後1〜3日 室内でトイレ程度の移動のみ 傷口に負担をかけない
術後4〜7日 短い散歩(5〜10分)をリードで 走らせない・ジャンプさせない
術後2週間(抜糸後) 通常の散歩を徐々に再開 激しい運動はまだ控える
術後3〜4週間 散歩時間を10〜15分延長 体重管理のため運動量を少し増やす
術後1ヶ月以降 通常の運動+体重管理を意識した運動 ドッグランなども段階的にOK

※ 術後の傷の回復状況には個体差があります。運動を再開する前に、傷口の状態が良好であることを確認してください。異常が見られる場合は必ず獣医師に相談してください。

体重測定の習慣をつける

✅ 術後の体重管理チェックリスト

  • □ 2週間に1回、同じ条件(朝食前など)で体重を測定している
  • □ 体重の変化を記録してグラフ化している
  • □ 毎食の給餌量をスケールで正確に計っている
  • □ おやつは1日のカロリーの10%以内に抑えている
  • □ 家族全員が給餌ルールを理解・共有している
  • □ BCS(ボディコンディションスコア)を月1回チェックしている
  • □ 体重の増減に合わせて給餌量を微調整している

よくある質問

Q1. 避妊・去勢後、いつからフードを切り替えるべきですか?

術後の回復を確認できたら(通常は抜糸後1〜2週間程度)、7〜10日かけて徐々に体重管理用フードへ切り替えるのが理想的です。

術後すぐに体重が増え始めるケースも多いため、早めの対策がポイントです。研究データでは、術後数週間以内に代謝変化が始まることが報告されています[3]

Q2. 避妊・去勢後にどのくらいカロリーを減らすべきですか?

研究データに基づくと、術前と比べて20〜30%のカロリー削減が目安です[3]

ただし、犬種・年齢・活動量によって個体差があるため、2週間ごとに体重を測定し、体重の変化に合わせて給餌量を微調整していくことが大切です。

Q3. 避妊・去勢していない犬用のフードをそのまま量だけ減らしてもいいですか?

通常のフードの量を減らすだけでは、カロリーは抑えられても必要な栄養素まで不足してしまう可能性があります。

体重管理用フードは低カロリーでありながら、たんぱく質やビタミン・ミネラルなどの必須栄養素がしっかり配合されているため、栄養不足のリスクを減らせます。特に術後はたんぱく質の確保が重要です[4]

Q4. 術後の体重増加を防ぐために運動量はどのくらい増やせばいいですか?

術後の傷が完全に治るまで(通常10〜14日間)は激しい運動を避け、短い散歩程度にとどめましょう。

傷が治った後は、1日の散歩時間を10〜15分延ばすことから始め、徐々に運動量を増やしていくことがおすすめです。食事管理と運動を組み合わせることが効果的です。

まとめ

避妊・去勢後の体重増加は、ホルモン変化による自然な身体反応です。しかし、術後の食事管理を適切に行えば、体重増加は十分に防ぐことができます。研究データに基づくポイントをまとめます:

  • 術後は基礎代謝が約25〜33%低下するため、カロリーの見直しが必須[3]
  • 術前と比べて20〜30%のカロリー削減を目安にする
  • 体重管理用フードは脂質8〜12%、たんぱく質25%以上、L-カルニチン配合がおすすめ
  • 7〜10日かけて徐々にフードを切り替える
  • 2週間ごとに体重を測定し、給餌量を微調整する
  • 食事管理と適度な運動の組み合わせが最も効果的

大切なのは、術後の体の変化を「しかたない」と諦めるのではなく、正しい知識に基づいて早めに食事管理を始めることです。愛犬の健康的な体重を維持して、元気な毎日を一緒に過ごしましょう。

参考文献を表示(全4件)
  1. Lefebvre SL, Yang M, Wang M, et al. "Effect of age at gonadectomy on the probability of dogs becoming overweight." Journal of the American Veterinary Medical Association. 2013;243(2):236-243. doi:10.2460/javma.243.2.236
  2. German AJ. "The growing problem of obesity in dogs and cats." The Journal of Nutrition. 2006;136(7 Suppl):1940S-1946S. doi:10.1093/jn/136.7.1940S
  3. Root MV, Johnston SD, Olson PN. "Effect of prepubertal and postpubertal gonadectomy on heat production measured by indirect calorimetry in male and female domestic cats." Journal of Reproduction and Fertility. Supplement. 1996;47:135-141.
  4. Phungviwatnikul T, Lee AH, Belchik SE, et al. "Effects of dietary macronutrient profile on apparent total tract macronutrient digestibility and fecal microbiota, fermentative metabolites, and bile acids of female dogs after spaying." Journal of Animal Science. 2021;99(7):skab130. doi:10.1093/jas/skab130

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