「肝臓の数値が高いですね」──動物病院での血液検査でそう指摘されたとき、多くの飼い主さんが不安を感じ、「食事を変えたほうがいいのだろうか」と真っ先に考えるのではないでしょうか。
犬の肝臓病は初期段階では症状が現れにくい「沈黙の臓器」の疾患であり、血液検査の異常値がきっかけで発見されることが少なくありません。しかし肝臓には高い再生能力があるため、適切な食事管理と治療によって病気の進行を遅らせ、肝機能の維持・改善につながるケースも報告されています。
この記事では、ACVIM(米国獣医内科学会)のコンセンサス・ステートメントや査読付き論文の研究データに基づいて、肝臓病の犬に適した食事管理のポイントをわかりやすくまとめました。
重要なお知らせ
肝臓病の食事管理は必ず獣医師の指導のもとで行ってください。この記事は研究データに基づく情報提供を目的としており、個々の犬への医療的アドバイスではありません。愛犬の肝臓の状態や疾患の種類に応じた最適な食事プランは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
犬の肝臓病の基礎知識
肝臓の3つの重要な役割
肝臓は体の中で最も大きな臓器のひとつであり、500以上の代謝機能を担う「化学工場」とも呼ばれています。犬の肝臓が果たす主な役割は以下の3つです。
- 解毒作用:体内に入った有害物質(薬物、毒素、アンモニアなど)を無害な物質に変換して排出する
- 代謝機能:タンパク質、脂質、炭水化物の代謝を行い、エネルギーの貯蔵と放出を調整する。アルブミンや血液凝固因子などの重要なタンパク質を合成する
- 胆汁の生成:脂肪の消化・吸収に不可欠な胆汁を生成し、胆嚢に蓄えて小腸に分泌する
これらの機能が障害されると、体内の毒素が蓄積し、栄養の代謝が乱れ、さまざまな全身症状が現れます。
犬に多い肝臓病の種類
犬の肝臓病にはいくつかの種類があり、それぞれ原因と治療アプローチが異なります[1]。
| 疾患名 | 特徴 | 好発犬種・リスク因子 |
|---|---|---|
| 慢性肝炎 | 肝臓に持続的な炎症が起こり、徐々に線維化が進行する。犬で最も多い肝臓病のひとつ | コッカー・スパニエル、ドーベルマン、スタンダード・プードル、ラブラドール・レトリーバー |
| 肝硬変 | 慢性肝炎が進行し、正常な肝組織が線維組織に置き換わった末期の状態。肝機能が著しく低下する | 慢性肝炎が長期間未治療の場合に進行 |
| 門脈体循環シャント(PSS) | 門脈と全身循環の間に異常な血管が存在し、肝臓を通らずに血液がバイパスされる。肝臓での解毒が行われず、アンモニアなどの毒素が全身を循環する | ヨークシャー・テリア、マルチーズ、ミニチュア・シュナウザー(先天性が多い) |
| 銅蓄積性肝症 | 肝臓に銅が過剰に蓄積し、肝細胞を傷害する。遺伝的要因による銅代謝異常が原因となることが多い | ベドリントン・テリア、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ラブラドール・レトリーバー[4] |
「沈黙の臓器」-- 初期は無症状であることが多い
肝臓は機能予備能が非常に大きく、全体の約70〜80%が障害されるまで明確な症状が現れないことがあると言われています。そのため、肝臓病は健康診断の血液検査で偶然発見されるケースが少なくありません。
進行すると以下のような症状が現れます。
- 食欲低下、体重減少
- 嘔吐、下痢
- 多飲多尿
- 黄疸(皮膚や粘膜、白目が黄色くなる)
- 腹水(お腹に水がたまる)
- 肝性脳症(ぼんやりする、徘徊する、痙攣などの神経症状)
Webster CRLら(2019)のACVIMコンセンサス・ステートメントでは、慢性肝炎は早期発見・早期介入が予後を大きく左右すると強調されています[1]。定期的な健康診断による血液検査(ALT、ALP、GGT、胆汁酸など)が早期発見の鍵です。
シニア犬の栄養管理全般についてはシニア犬の食事ガイドも参考になります。肝臓病がない健康なシニア犬とは異なるアプローチが必要ですが、年齢に応じた基本的な栄養の考え方は共通しています。
肝臓病の食事管理の柱
肝臓病の犬の食事管理において、研究データに基づく4つの重要な柱があります。それぞれの栄養素について、なぜ管理が必要なのか、どのようなアプローチが適切なのかを解説します。
柱1: 良質かつ「適量」のタンパク質
肝臓病の食事管理でもっとも難しいのがタンパク質のコントロールです。タンパク質は多すぎても少なすぎても問題があるという点で、腎臓病以上に繊細な管理が求められます[1]。
タンパク質が多すぎる場合のリスク
- アンモニア産生の増加:タンパク質の代謝で生じるアンモニアは通常、肝臓の尿素回路で無害な尿素に変換される。しかし肝機能が低下するとアンモニアの処理能力が落ち、血中アンモニア濃度が上昇する
- 肝性脳症のリスク:血中アンモニアが脳に到達すると、ぼんやりする、徘徊する、痙攣するなどの神経症状(肝性脳症)を引き起こす
タンパク質が少なすぎる場合のリスク
- 筋肉量の低下(サルコペニア):肝臓病の犬はすでに異化亢進状態にあることが多く、タンパク質不足は急速な筋肉消耗を招く
- 低アルブミン血症の悪化:肝臓で合成されるアルブミンがさらに低下し、腹水や浮腫のリスクが増大する
- 免疫力の低下:十分なタンパク質がなければ、免疫系の機能も維持できない
ACVIMのコンセンサス・ステートメントでは、肝臓病の犬には乾物ベースでタンパク質15〜20%程度の良質なタンパク質を与え、肝性脳症の症状が現れた場合にのみ制限を強化するというアプローチが推奨されています[1][3]。タンパク質源としては、消化率の高い鶏ささみ、白身魚、卵白、大豆タンパクなどが適しています。
犬に必要なタンパク質の基礎知識については犬のタンパク質比較ガイドでも解説しています。肝臓病の場合は健康な犬とは異なるアプローチが必要ですが、タンパク質の「質」の重要性は共通しています。
柱2: 銅の制限
銅(Cu)は肝臓に蓄積しやすいミネラルであり、過剰な銅は活性酸素を産生して肝細胞を直接傷害します。特に銅蓄積性肝症の素因を持つ犬種では、食事中の銅を積極的に制限する必要があります。
銅蓄積性肝症のリスクが高い犬種
Twedt DCら(2003)の研究では、ベドリントン・テリアの銅蓄積性肝症が詳しく報告されています[4]。その後の研究で、以下の犬種でも銅関連の肝臓病リスクが確認されています。
- ベドリントン・テリア:COMMD1遺伝子の変異により銅の排泄能力が著しく低下。最も重症化しやすい
- ラブラドール・レトリーバー:近年の研究で銅蓄積と肝炎の関連が示されている[5]
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア:銅代謝異常の報告あり
- ドーベルマン:慢性肝炎との関連が指摘されている
- ダルメシアン、スカイ・テリア:銅蓄積のリスクが報告されている
Fieten Hら(2014)は、ラブラドール・レトリーバーにおいて食事中の銅と亜鉛のレベルが肝臓の銅・亜鉛濃度に関連することを報告しており、食事による銅制限の重要性を裏付けています[5]。
銅制限のポイント
- 肝臓用療法食は銅含有量が制限されている(通常のフードは乾物ベースで5〜10mg/kg、療法食は5mg/kg以下)
- レバー(特に牛レバー)は銅が極めて多い食品であり、肝臓病の犬には与えない
- 銅管を使用した水道水から飲水している場合は、浄水器の使用を検討する
柱3: 抗酸化物質の補給
肝臓病では酸化ストレスが肝細胞の傷害を加速させることが知られています。Center SA(2004)の総説論文では、肝臓病の管理における抗酸化物質の役割が詳しく検討されています[2]。
肝臓保護に関連する主な抗酸化物質
| 抗酸化物質 | 作用 | 備考 |
|---|---|---|
| ビタミンE | 脂溶性の抗酸化ビタミンとして細胞膜を酸化ダメージから保護する | 多くの肝臓用療法食に強化配合されている |
| ビタミンC | 水溶性の抗酸化物質として活性酸素を除去。ビタミンEの再生にも関与する | 犬は体内で合成できるが、肝臓病では不足する可能性がある |
| SAMe(S-アデノシルメチオニン) | グルタチオン(肝臓の主要な抗酸化物質)の前駆体。肝細胞の保護と修復をサポートする | 獣医師の処方で使用されることが多い |
| シリマリン(ミルクシスル) | オオアザミ由来のフラボノイド。抗酸化作用と肝細胞膜の安定化作用が示唆されている | 犬での研究データはまだ限定的 |
柱4: 亜鉛の補給
亜鉛(Zn)は肝臓病の管理において二重の役割を果たします[2]。
- 銅の吸収を競合的に阻害:亜鉛はメタロチオネインの産生を促進し、腸管での銅の吸収を減少させる。これにより肝臓への銅蓄積を軽減できる
- 抗酸化作用:亜鉛自体が抗酸化作用を持ち、肝細胞の酸化ダメージを軽減する
- 尿素回路のサポート:亜鉛は尿素回路の酵素活性に関与しており、アンモニアの解毒を助ける
Fieten Hら(2014)の研究でも、食事中の亜鉛レベルが肝臓の銅蓄積量に影響を与えることが示されています[5]。ただし、亜鉛の過剰摂取は銅欠乏や消化器症状を引き起こす可能性があるため、サプリメントでの補給は必ず獣医師の指導のもとで行ってください。
その他の重要な栄養管理
エネルギー(カロリー)
肝臓病の犬は代謝が亢進していることが多く、通常よりも多くのカロリーを必要とする場合があります。体重の維持は肝臓病の予後に大きく影響するため、適切なカロリー摂取を確保することが重要です。脂質は濃縮されたエネルギー源として有効ですが、脂肪の消化吸収が低下している場合(胆汁分泌の低下)は注意が必要です。
ナトリウム制限(腹水がある場合)
肝臓病が進行し腹水(お腹に水がたまる状態)がある場合は、ナトリウムの制限が必要です。肝臓用療法食はナトリウム含有量が控えめに設計されていますが、腹水の程度に応じてさらなる制限が求められることがあります。
水溶性ビタミンの補給
肝臓病ではビタミンB群(B1、B6、B12など)やビタミンKが不足しやすいことが知られています。特にビタミンKは血液凝固因子の合成に必要であり、肝臓病で凝固異常がある場合は補給が検討されます。
肝臓病で避けるべき食べ物
肝臓病の犬が避けるべき食品は、肝臓への負担を増やしたり、病態を悪化させたりするものです。以下のカテゴリに注意してください。
高銅食品 -- レバーの過剰摂取に注意
レバー(特に牛レバー)は犬の栄養補給として人気がありますが、銅含有量が極めて高い食品です。健康な犬でも過剰摂取は肝臓への銅蓄積につながる可能性がありますが、肝臓病の犬ではリスクがさらに高まります。
銅が多い食品リスト
- レバー(牛・豚・鶏):特に牛レバーは銅含有量が非常に高い
- 貝類:牡蠣、ムール貝などの貝類
- ナッツ類:カシューナッツ、ゴマなど(犬には基本的に与えない)
- 一部のサプリメント:銅を含むマルチビタミン・ミネラルサプリメント
高ナトリウム食品 -- 腹水がある場合は特に注意
肝臓病が進行して腹水や浮腫がある場合、ナトリウムの摂取を制限する必要があります。
- 人間用の加工食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、チーズなど)
- 味付き肉、味付きおやつ
- パン、シリアル類
- 塩分を含む犬用おやつ
高脂肪食品
肝臓は脂質の代謝に重要な役割を果たしているため、肝機能が低下している状態で高脂肪の食品を与えると、消化不良や脂肪肝の悪化を招くことがあります。特に胆汁の分泌が低下している場合は脂肪の消化吸収が難しくなります。
- 脂身の多い肉(豚バラ、鶏皮など)
- 揚げ物、油で調理した食品
- バター、クリーム
- 高脂肪のおやつ(ジャーキーの一部、ガム類)
ドッグフードの成分表示の読み方については原材料表示の読み方ガイドも参考にしてください。脂質やナトリウムの含有量を正しく読み取ることで、愛犬に適したフードを選びやすくなります。
肝臓病対応のおすすめ療法食
肝臓病用の療法食は、タンパク質の質と量、銅の制限、抗酸化物質の強化、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の配合など、肝臓の負担を軽減しながら栄養を確保できるよう精密に設計されています。療法食の選択・開始は必ず獣医師の指示に基づいて行ってください。
以下は、日本で入手しやすい代表的な肝臓病用療法食です。
ヒルズ プリスクリプション・ダイエット l/d エルディー 犬用
| 対象 | 肝臓病の犬 |
|---|---|
| 主原料 | トウモロコシ、動物性油脂、コーングルテン |
| 成分 | タンパク質15.8% / 脂質21.6% / 銅制限 / 亜鉛強化 |
| 特徴 | 良質タンパク質低銅抗酸化物質配合L-カルニチン配合 |
研究データに基づくポイント
- 高品質で消化率の高いタンパク質を使用し、アンモニア産生を抑えながら必要な栄養を確保
- 銅含有量を制限し、亜鉛を強化配合することで肝臓の銅蓄積リスクを軽減
- 抗酸化物質(ビタミンE、ビタミンC)が肝細胞の保護をサポート
ロイヤルカナン 肝臓サポート 犬用
| 対象 | 慢性肝炎、肝硬変、肝性脳症、銅蓄積性肝症、門脈体循環シャントの犬 |
|---|---|
| 主原料 | 米、動物性油脂、超高消化性小麦タンパク |
| 成分 | タンパク質16.0% / 脂質17.0% / 銅制限 / 亜鉛強化 |
| 特徴 | 適度なタンパク質低銅高嗜好性BCAA配合 |
研究データに基づくポイント
- 分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)を強化配合。肝性脳症のリスク軽減に寄与する
- 銅の含有量を制限し、亜鉛を強化配合。銅蓄積性肝症にも対応
- 嗜好性に配慮した設計で、食欲が低下しがちな肝臓病の犬でも食べやすい
スペシフィック CLD 肝臓ケア 犬用
| 対象 | 慢性肝炎、肝硬変、門脈体循環シャント、銅蓄積性肝症の犬 |
|---|---|
| 主原料 | 米、卵、大豆タンパク |
| 成分 | タンパク質15.5% / 脂質19.0% / 銅制限 / 亜鉛強化 |
| 特徴 | 低銅高消化性タンパク質抗酸化物質強化可溶性食物繊維配合 |
研究データに基づくポイント
- 卵と大豆タンパクを使用した高消化性タンパク質源で、アンモニア産生を最小限に抑える
- 可溶性食物繊維を配合し、腸内でのアンモニア生成を抑制。肝性脳症に配慮した栄養設計
- 銅含有量を厳格に制限し、銅蓄積性肝症にも対応した設計
療法食の切り替えは7〜10日かけて徐々に行います。急な変更は消化器トラブルを引き起こすことがあります。フードの切り替え方法についてはドッグフードの切り替え方ガイドも参考にしてください。
肝臓をサポートするサプリメント
肝臓病の犬の補助療法として、いくつかのサプリメントが獣医療の現場で使用されています。ただし、これらのサプリメントは医薬品ではなく、犬での大規模臨床試験によるエビデンスは限定的である点を理解しておく必要があります[2]。
SAMe(S-アデノシルメチオニン)
SAMeは肝臓における主要な抗酸化物質であるグルタチオンの前駆体です。グルタチオンは肝細胞を酸化ストレスから保護する上で中心的な役割を果たしており、肝臓病では枯渇しやすいことが知られています。
- 作用機序:肝臓でのグルタチオン合成を促進し、肝細胞の抗酸化防御を強化する
- エビデンス:犬での研究では、SAMe投与によりALT値の改善や肝臓のグルタチオン濃度の上昇が報告されている[2]
- 注意点:空腹時に投与する必要がある。獣医師処方のSAMe製剤(Denosyl等)を使用することが推奨される
シリマリン(ミルクシスル / オオアザミ)
シリマリンはオオアザミ(ミルクシスル)から抽出されるフラボノイド混合物で、ヒトの肝臓病治療では古くから使用されてきた歴史があります。
- 作用機序:抗酸化作用、抗炎症作用、肝細胞膜の安定化、肝細胞の再生促進が示唆されている
- エビデンス:ヒトでの研究では一定の効果が示唆されているが、犬での臨床試験データはまだ限定的であり、有効性を断定するにはさらなる研究が必要[2]
- 注意点:品質のばらつきが大きいため、獣医師が推奨する製品を使用する。他の薬剤との相互作用の可能性もある
サプリメントに関する重要な注意
サプリメントは療法食や薬物療法の「代替」ではありません。肝臓病の治療において基本となるのは、獣医師の診断に基づく適切な食事管理と薬物療法です。サプリメントはあくまで補助的な手段であり、自己判断での使用は避け、必ず獣医師に相談してから開始してください。
腎臓病の食事管理との違いに関心がある方は犬の腎臓病と食事管理ガイドも合わせてご覧ください。肝臓病と腎臓病を併発しているケースでは、それぞれの疾患に配慮したバランスの取れた栄養管理が必要です。
よくある質問
肝臓病の犬でもおやつは与えていいですか?
肝臓病の犬にもおやつを与えることは可能ですが、種類と量に注意が必要です。レバーなど銅を多く含むおやつは避け、低脂肪・低銅のものを少量にとどめてください。茹でたさつまいもやかぼちゃを小さくカットしたものが比較的安心です。ただし、おやつのカロリーは1日の必要カロリーの10%以内に収め、療法食の摂取量を減らさないようにしましょう。門脈体循環シャントや重度の肝性脳症がある場合は、タンパク質を含むおやつを制限する必要があるため、必ず獣医師に相談してください。
肝臓病の犬に手作り食を与えてもいいですか?
肝臓病の犬への手作り食は原則として推奨されません。肝臓病の食事管理ではタンパク質の質と量、銅の制限、抗酸化物質の補給など複数の栄養素を精密にコントロールする必要があり、家庭での調理では正確な栄養バランスの確保が困難です。特に銅の含有量は食材によって大きくばらつくため、意図せず過剰摂取になるリスクがあります。どうしても手作り食を希望する場合は、獣医栄養学の専門家に個別のレシピを処方してもらうことが必須です。手作りごはんの栄養面のリスク全般については犬の手作りごはんの栄養リスク解説も合わせてご確認ください。
犬の肝臓病は完治しますか?
肝臓病の予後は疾患の種類と重症度によって大きく異なります。急性の肝炎で原因が特定・除去できた場合は、肝臓の再生能力により回復につながる可能性があります。一方、慢性肝炎や肝硬変は基本的に完治が難しく、食事管理と薬物療法で進行を遅らせ、生活の質(QOL)を維持することが治療目標となります[1]。門脈体循環シャントは外科手術で改善できるケースもあります。いずれの場合も、早期発見と適切な管理が予後を左右するため、定期的な血液検査による肝臓数値のモニタリングが重要です。
健康診断で肝臓の数値が高いと言われたらどうすればいいですか?
肝臓の数値(ALT、ALP、GGTなど)の上昇は、必ずしも重篤な肝臓病を意味するわけではありません。薬の影響、一時的な炎症、内分泌疾患(クッシング症候群など)でも上昇することがあります。まずは獣医師の指示に従い、再検査や追加検査(超音波検査、胆汁酸検査など)を受けましょう。原因が特定されるまでは自己判断で食事を大幅に変更せず、獣医師と相談しながら対応することが大切です。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、初期段階では症状が現れにくいため、数値の異常は早期発見のチャンスと捉えてください。
まとめ
犬の肝臓病の食事管理は、「良質なタンパク質の適量摂取」「銅の制限」「抗酸化物質の補給」「亜鉛の補給」の4つの柱が基本です。肝臓病の種類(慢性肝炎、銅蓄積性肝症、門脈体循環シャントなど)によって管理のポイントが異なるため、疾患に応じた個別化されたアプローチが重要です[1]。
肝臓は高い再生能力を持つ臓器であり、早期に適切な食事管理と治療を開始することで、肝機能の維持・改善につながる可能性があります。Center SA(2004)が示すように、抗酸化物質やニュートラシューティカルによるサポートも補助的な手段として期待されていますが、エビデンスはまだ蓄積途上です[2]。
最も大切なのは、獣医師の指導のもとで肝臓病用療法食を中心とした食事プランを構築し、定期的な血液検査(ALT、ALP、GGT、胆汁酸、アンモニア、アルブミンなど)でモニタリングを続けることです。WANPAKUでは、研究データに基づくエビデンスベースの情報提供を心がけています。愛犬の肝臓の健康が気になる方は、まずかかりつけの獣医師にご相談いただき、この記事の情報を参考に最適な食事管理を見つけてください。
参考文献を表示(全5件)
- Webster CRL, Center SA, Cullen JM, et al. "ACVIM consensus statement on the diagnosis and treatment of chronic hepatitis in dogs." J Vet Intern Med. 2019;33(3):1173-1200. doi:10.1111/jvim.15467
- Center SA. "Metabolic, antioxidant, nutraceutical, probiotic, and herbal therapies relating to the management of hepatobiliary disorders." Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2004;34(1):67-172. doi:10.1016/j.cvsm.2003.09.015
- National Research Council (NRC). "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." Washington, DC: National Academies Press; 2006.
- Twedt DC, Sternlieb I, Gilbertson SR. "Clinical, morphologic, and chemical studies on copper toxicosis of Bedlington Terriers." J Am Vet Med Assoc. 2003;175(3):269-275.
- Fieten H, Hooijer-Nouwens BD, Biourge VC, et al. "Association of dietary copper and zinc levels with hepatic copper and zinc concentration in Labrador Retrievers." J Vet Intern Med. 2014;28(3):822-827. doi:10.1111/jvim.12342