犬の心臓病の食事|ナトリウム制限の目安と避けたい食材の早見表

犬の心臓病と食事管理ガイド

「心臓に雑音があるね」「シニア期だから一度心エコーをしましょう」——動物病院でそう言われたあと、家のフードやおやつを前に「これは続けていいの?」と手が止まる飼い主さんは多いです。WANPAKU 診断システムを使ったうち、シニア犬の飼い主(n=939)のうち 23.5% が体重管理を、20.9% が食欲不振を悩み事に挙げており、心臓病に関連する不安は珍しいことではありません。ひとりで抱えこむ必要はありません。

この記事をお読みいただく前に

  • 本記事は、愛犬に合ったフードを見つけるための参考情報です。特定の病気の治療・予防を目的としたものではありません。
  • 病気の診断・治療は必ず獣医師にご相談ください。食事の変更も獣医師の指導のもとで行ってください。
  • 記載内容は公開時点の研究データに基づいていますが、個々の犬の状態によって最適な対応は異なります。
  • 重篤な疾患は獣医師指示の療法食が最優先です。本記事は獣医師指示のもとで通常フード選びを検討する場合の参考情報です。

🚨 緊急の方はまずこちらへ

「夜間の咳が止まらない」「呼吸が速い・苦しそう」「舌や歯ぐきが青白い」「失神した」——これらの症状があれば、本記事を読み込む前に速やかに動物病院を受診してください。うっ血性心不全の発作は時間との勝負です。受診先がわからない場合は夜間救急センターへ。

💡 この記事の結論

心臓病の食事は「ナトリウム制限を段階的に、栄養素のバランスを保ちながら」が出発点。診断・治療・処方はかかりつけ獣医師の指示に従ってください。

  • ナトリウム制限はステージ別に - B2 で乾物 0.2〜0.3%、C で 0.15〜0.25% が ACVIM(米国獣医内科学会)ガイドライン[2]と獣医栄養学レビュー[9]での慣例的な目安
  • タウリン・L-カルニチン - DCM の一部の犬で欠乏が報告。補給で改善した症例あり[4][8]
  • EPA・DHA(オメガ3) - 1998 年の Freeman 研究で悪液質の改善が報告[1]
  • カロリー確保で悪液質の進行を抑える - 心不全の犬の 54% に悪液質の兆候[1]
  • ステージ B2 + ピモベンダン - EPIC trial で生存期間が中央値約 462 日延長[5]

📌 食材 OK / NG 早見表へ療法食 vs 手作り中立比較へ診断データで見るシニア犬の悩みへ

⚠️ この記事をお読みいただく前に

  • 本記事は愛犬に合うフードを見つけるための参考情報です。特定の病気の治療・予防が目的ではありません。
  • 診断・治療・食事の変更は必ず獣医師の指導のもとで行ってください。
  • 個々の犬の状態によって最適な対応は異なります。

心雑音と言われたら、何から始めればいい?

受診頻度を上げ、塩分の多い食べ物を見直し、適正体重を保ちます。ACVIM ステージに応じた食事の調整は獣医師と段階的に進めます。

犬の心臓病とはどんな病気?

犬の心臓病でもっとも多いのは僧帽弁閉鎖不全症(MVD:心臓の弁がしっかり閉じなくなり血液が逆流する病気)で、小型犬のシニア期に高頻度で見られます[7]。一方、ドーベルマンやグレートデーン等の大型犬では拡張型心筋症(DCM:心臓の筋肉が薄くなり拡張する病気)が知られています[4]。Freeman 2018[3]では、グレインフリーフードを食べていた犬での DCM 報告増加について FDA 調査の知見が整理されており、現在も研究が続いています。

MVD(小型犬)と DCM(大型犬)の違い
MVD と DCM の違い。実際の判断は獣医師にご相談を。

気づきのサイン(早めの受診が大切)

  • 夜間や朝方の乾いた咳(特に運動・興奮後)
  • 呼吸が速い・苦しそう(安静時呼吸数が 1 分 30 回以上)
  • 運動を嫌がる、すぐに息が上がる
  • 失神・ぐったり、舌や歯ぐきの色が悪い(青白い・紫がかる)
  • 食欲低下と体重減少(悪液質:心不全に伴う筋肉量の減少)

食事の見直しが大切な理由

過剰なナトリウム摂取は体液貯留を促し、心臓への前負荷(血液量増加による負担)を増やします。ACVIM コンセンサス[2]では、心拡大を伴うステージ B2 以降で段階的なナトリウム制限が推奨されており、悪液質予防のためのカロリー確保や、DCM ではタウリン・L-カルニチンの状態確認が重視されます[2][4]

シニア犬で心臓病が増える理由

MVD は加齢に伴って発症リスクが大きく上がります。Borgarelli & Häggström 2010 の総説[7]では、小型犬の高齢期に高頻度で MVD が見られ、特にキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでは比較的若い段階から心雑音が確認されることが報告されています。シニア期の定期的な聴診と心エコー検査は、無症状期からの介入につながります。

ACVIM ステージはどう分類される?

A→B1→B2→C→D の 5 段階。心拡大の有無(A・B1 vs B2)と心不全症状の有無(B2 vs C)が分岐点です。

ACVIM ステージ A→B1→B2→C→D の進行
ACVIM コンセンサスのステージ分類。具体的な判断は獣医師にご相談を。
ステージ臨床的特徴食事方針ナトリウム目安(乾物ベース)
A素因のある犬種だが構造的異常なし(例:若いキャバリア)通常の良質フードでよい。ゴミ漁り・人間の食卓のおすそ分けを避ける通常〜0.4% 程度
B1心雑音あり、心拡大なし、無症状過度な制限は不要。高ナトリウム食品を避ける程度通常〜0.3% 程度
B2心雑音あり、心拡大あり、無症状軽中等度のナトリウム制限を開始。タウリン状態を獣医師に確認0.2〜0.3%
Cうっ血性心不全(CHF)の症状あり(咳・呼吸困難・運動不耐)低ナトリウム療法食への切替を検討。EPA・DHA 補給も選択肢0.15〜0.25%
D標準治療に反応しない難治性心不全食欲維持を最優先。少量頻回給餌で QOL を重視獣医師の指示に従う

※ ステージ B2 で 2016 年の EPIC trial[5]ではピモベンダン投与によりうっ血性心不全発症または心臓死までの期間が中央値 1,228 日(プラセボ 766 日)と、約 462 日延長したと報告されました。早期介入の重要性を裏付けるエビデンスです。具体的なタイミングは獣医師の指示に従ってください。

急なナトリウム制限に注意

無症状のステージ B1 段階で急にナトリウムを極端に制限すると、RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系:体液量を調節するホルモン系)が過剰に活性化され、かえって心臓に負担となる可能性があります。段階的なアプローチが重要です。

血液検査の数値(NT-proBNP・トロポニン)はどう読む?

NT-proBNP は心臓への負担、トロポニンは心筋障害の指標。心エコー・聴診と合わせて総合判断します。

動物病院で「心臓の数値」と言われるのは、おもに NT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体:心臓に負担がかかると分泌されるホルモンの前駆体)と トロポニン(心筋障害のマーカー)です。

📊 検査票で見つけたい 2 つの項目

  • NT-proBNP:心臓への前負荷・後負荷を反映。値が高いほど心不全の重症度が高い傾向。検査機関で基準値が異なるため、絶対値より経時的な変化が重要。
  • cTnI(心筋トロポニン I):心筋細胞の障害を示す。値が高いと急性の心筋ダメージを示唆。DCM・心筋炎・重症 MVD 等で上昇。

※ 補助検査:胸部 X 線(心拡大・肺水腫)、心エコー(弁・心筋・心房径)、心電図(不整脈)。

値が高くても症状や画像所見と合わせて総合判断するため、解釈はかかりつけ獣医師と一緒に行いましょう。

ナトリウム制限は何 % が目安?

乾物ベース(水分を抜いた状態の重量で)ステージ B2 で 0.2〜0.3%、C で 0.15〜0.25% が ACVIM の目安です。

心臓病の食事管理で中核となる要素がナトリウム制限です。過剰なナトリウムは体液を貯留させ、心臓の前負荷を増やします[2]。Freeman 2006 の研究[9]では、早期 MVD の犬に対する穏やかなナトリウム制限と抗酸化物質・オメガ3を含む食事介入が左心房径の縮小に寄与したと報告されています。

📊 ナトリウム量の目安(乾物ベース)

  • ステージ A・B1:通常〜0.3〜0.4%(高ナトリウム食品を避ける程度)
  • ステージ B2:0.2〜0.3%(軽中等度の制限を開始)
  • ステージ C:0.15〜0.25%(低ナトリウム療法食を検討)
  • 通常の成犬用フード:0.4〜0.6%(→ B2 以降は療法食への切替が中核)

※ 上記の目安値は ACVIM ガイドライン[2]を踏まえ、獣医栄養学レビュー[9]等で慣例的に用いられる範囲です。

ナトリウムは塩そのものだけでなく、調味料・加工肉・チーズ・市販ジャーキー・スナック菓子などにも多く含まれます。フード裏面の成分表示で「ナトリウム」または「塩分」を確認しましょう。

タウリン・L-カルニチンの補給はどう判断する?

DCM が疑われる場合や好発犬種では血中濃度の測定を獣医師と相談。MVD 単独では通常必要ありません。

タウリンは心筋の収縮機能・抗酸化作用に注目される含硫アミノ酸、L-カルニチンは脂肪酸を心筋のミトコンドリアに運びエネルギー産生に関わる栄養素です。

1997 年の Kittleson らによる MUST trial[8]では、血中タウリン濃度が低下したアメリカン・コッカー・スパニエルの DCMでタウリン・L-カルニチン補給により心機能が改善した症例が報告されました。同様の知見を整理した別の総説[4]もあります。

タウリン・L-カルニチンの考え方(獣医師相談で)

  • DCM が疑われる場合:血中タウリン・L-カルニチン濃度を測定し、欠乏があれば補給を検討
  • 好発犬種:アメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリバー、ニューファンドランド等
  • MVD 単独:欠乏が原因となることは少なく、通常は不要

サプリメントの種類・用量は必ず獣医師に相談し、自己判断での開始は避けましょう。

EPA・DHA はどう活用する?

魚油由来のオメガ3。1998 年の Freeman 研究では悪液質の改善が報告。ステージ C 以降で活用が検討されます。

1998 年の Freeman らの研究[1]では、魚油由来の EPA・DHA を補給した心不全の犬で、IL-1(炎症性サイトカイン)の濃度低下と悪液質の改善が報告されました。オメガ3 は抗炎症的な働きと心筋の酸化ストレス軽減への寄与が示唆されており、心臓病用療法食には EPA・DHA が強化配合された製品が多くあります。

家庭で活用する場合は、フードの脂質バランスを崩さないよう、サプリの種類・用量は獣医師相談のうえで決めましょう。

カロリー管理と悪液質予防、どう考える?

十分なカロリーと良質なタンパク質で筋肉量を維持。心不全の犬の半数前後に体重減少の兆候が報告されています。

心不全が進むと心臓性悪液質(Cardiac Cachexia:心不全に伴う筋肉量の著しい減少)が起こることがあります。1998 年の Freeman らの研究[1]では、心不全の犬の 54% に何らかの悪液質の兆候が認められたと報告されています。

  • 十分なカロリーを確保:心不全の犬は安静時でもエネルギー消費が増えやすい
  • 良質なタンパク質を維持:腎臓病の併発がない限り、過度なタンパク質制限は避ける
  • 定期的な体重・体型モニタリング:BCS(ボディコンディションスコア)を月 1 回チェック
  • 肥満は適正体重へ:肥満は心臓負担を増やすため減量を検討(ただし心不全の犬は慎重に)

マグネシウム・カリウムは利尿薬の使用で尿中に排泄されやすくなる電解質です。心筋の電気的活動に関わるため、定期的な血液検査でモニタリングが必要です。

心臓病で避けたい食材と与えやすい食材は?

塩分の多い食材は避け、茹でた鶏ささみ(無塩)・白米・かぼちゃ・ブルーベリーなど低ナトリウム素材は獣医師相談で活用可。

心臓病の犬で避けたい食材と比較的与えやすい食材
避けたい食材(左)と比較的与えやすい食材(右)の目安。実際の判断は獣医師にご相談を。
避けたい食材具体例理由
加工肉・塩漬け肉ハム・ベーコン・ソーセージナトリウム含有量が極めて多い
市販おやつ(高塩分)犬用ジャーキー・ビスケット塩分と添加物が多い
チーズ類チェダー・パルメザン・カマンベール(カッテージ以外)塩分・脂質ともに多い
スナック菓子ポテトチップス・塩せんべいナトリウム・脂質ともに多い
味付きスープ・汁物味噌汁・うどんつゆ・カップ麺の汁調味料由来のナトリウムが極めて多い
人間の食べ残し残飯・味付き料理意図せぬナトリウム過剰摂取の温床

比較的与えやすい食品(獣医師相談で)

  • 茹でた鶏ささみ・鶏むね肉(無塩、皮と脂身を除く):低ナトリウム・高タンパク
  • 白米・おかゆ(無塩):エネルギー補給に
  • 茹でたかぼちゃ・さつまいも(無塩):食物繊維・カリウム源として少量から
  • 白身魚(タラ・カレイ等の無塩茹で):低ナトリウムのタンパク源
  • 無塩プレーンヨーグルト(少量):チーズ類より塩分が少ない
  • ブルーベリー・りんご薄切り(少量):抗酸化作用が注目される自然食材

与えてもよいおやつの考え方

1 日の総カロリーに占めるおやつは 10% 以下を目安に、塩分の少ない素材を少量。市販の犬用ジャーキー・チーズスティック・ビスケットは塩分が高いので避けましょう。

療法食と手作り食、どう判断する?

療法食は栄養設計が精密。完全な手作りはボード認定獣医栄養学者の処方なしでは慎重な判断が求められます。

療法食 / 補完トッピング / 完全手作り食の中立比較
3 つの選択肢を中立に並べた比較。最終判断は獣医師との相談で。
選択肢メリット留意点
① 心臓病用療法食ナトリウム・タウリン・EPA/DHA が精密に設計食いつきが悪い場合あり、獣医師の指示前提
② 療法食 + 補完トッピング食いつき改善、低ナトリウム素材を少量プラストッピング内容は獣医師相談、総ナトリウム量に注意
③ 完全手作り食素材を選べる、アレルギー対応の柔軟性ボード認定獣医栄養学者の処方が必須、家庭でナトリウム量を一定に保つのは難しい

心臓病の犬への完全な手作り食は、ボード認定獣医栄養学者など専門家の処方なしでは慎重な判断が求められます。慢性疾患向け手作りレシピを調査した研究では、市販書籍やインターネット上のレシピの多くが栄養学的に不十分と報告されており、心臓病でも同様の傾向が指摘されています。

フード移行は 7〜30 日で段階的に

新フードへの切替は、急に全量を変えると下痢や拒食、悪液質の引き金になります。

期間新フード現行フード注意点
1〜3 日目25%75%少量混合で香り・味に慣らす
4〜7 日目50%50%便の様子・食欲を確認
8〜14 日目75%25%嫌がる場合は前段階に戻す
15 日目〜100%0%完全切替。食欲ムラのある子は 30 日かけても可

食欲低下や軟便が出たら、一段階前に戻して 2〜3 日様子を見ましょう。詳細は手作りごはんの栄養リスク解説へ。

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食欲が落ちたとき、どう工夫する?

温め・ふやかし・ウェット切替・少量頻回・無塩トッピングの 5 つの工夫が有効です。

心不全に伴う食欲低下は悪液質の引き金になります。WANPAKU 診断データでは、シニア犬の飼い主(n=939)のうち 食欲不振を悩み事に挙げる方は 20.9% でした。

食欲が落ちたときの 5 つの工夫
食欲低下時の 5 つの工夫(実施は獣医師相談のうえで)。

食欲低下時の 5 つの工夫

  1. 温める:電子レンジで 10〜15 秒、または ぬるま湯(37〜38℃)で香りを引き出す
  2. ウェットフード活用:低ナトリウムウェットの療法食、または ドライと混ぜる
  3. 少量頻回給餌:1 日量を 4〜5 回に分けて胃腸負担を軽減
  4. 無塩トッピング:茹でた鶏ささみのゆで汁(無塩)、無塩プレーンヨーグルト少量、ブルーベリー数粒(必ず獣医師に相談)
  5. 食事環境:静かで落ち着ける場所で、息切れがあるときは無理に量を増やさず食べたがるタイミングを尊重

体重減少が止まらないとき・末期で食べないとき

体重減少が続くなら、カロリー再計算悪液質の進行・併発疾患(腎臓・甲状腺)の評価を獣医師に相談を。

末期で食べないときは、療法食の理想を貫くより「食べてくれるものを食べられるだけ」に方針を切り替える時期があります。少量のささみのゆで汁を混ぜる、シリンジ(注射器型給餌器具)でぬるめのスープ状フードを少しずつ与えるなど、QOL 最優先に。食欲増進薬の選択肢もあります。

⚠️ すぐに獣医師へ相談すべきサイン

食事をほとんど摂らない(特に心不全の犬では半日以上でも要注意)、夜間の咳が続く、安静時呼吸数が増える、舌や歯ぐきの色が悪い、失神したなどの場合は速やかに動物病院を受診してください。うっ血性心不全の悪化や肺水腫のリスクがあります。

食欲低下の全般的な原因は6 つの原因と対処法へ。

WANPAKU 診断 4,161 回から見える、シニア犬の悩み

シニア犬の飼い主(n=939)では体重管理 23.5%、食欲不振 20.9% が悩み事の上位。心臓病と関連が深い領域です。

WANPAKU 診断 4,161 回のうち、シニア犬(7 歳以上、n=939)の飼い主の悩み事を集計したところ、心臓病とつながる領域として 体重管理 23.5%、食欲不振 20.9%、関節ケア 28% が上位に挙がりました。心臓に負担をかける肥満や、悪液質期に深刻化する食欲低下は、シニア期の代表的な悩みと重なります。

4,161 回の診断データから見える、シニア犬の悩みと心臓病の関連

※ WANPAKU 診断システム集計(n=939 シニア犬、2025年9月〜2026年5月

関節ケアとの併発
28.0%
消化トラブル
26.6%
体重管理
23.5%
食欲不振
20.9%

心臓病は単独で出現するより、体重管理・食欲不振との関連で意識される場面が多い領域です。

📚 もっと深く:心臓病に関連する話題を spoke 記事で

受診前に整理しておきたいことは?

フード・食事回数・体重・咳の頻度を記録すると診察がスムーズに。治療費は症状で大きく変わります。

家族のライフスタイル別の食事管理

  • 共働き世帯: 朝晩 2 回 + 昼の自動給餌器を活用、おやつのカロリー記録を家族で共有
  • 多頭飼い: 個別給餌で盗食防止(別室 or タイミング差し替え)。療法食の場合は特に厳格に
  • 留守番が長い家庭: 知育玩具で食事時間を延長、スローフィーダー活用
  • シニア犬: 食欲低下を毎日記録、24 時間以上食べない場合は受診

✅ 受診前チェックリスト

  • 現在のフードの種類・量(パッケージ持参が理想)
  • 食事の回数とタイミング、おやつの内容と頻度
  • 体重の変化(過去 3 か月)
  • 咳・呼吸の様子(夜間・運動後・安静時)
  • 安静時呼吸数(1 分間。寝ているときに測ると安定)
  • 運動意欲・散歩中の息切れの有無
  • 過去の血液検査結果(NT-proBNP・トロポニン・腎機能)と心エコー所見
  • 家族の食卓からのおすそ分けの有無、服用中の薬・サプリ

💰 治療費の目安(参考値)

  • 軽症(通院・経過観察):3〜5 万円(聴診・心エコー・血液検査)
  • 中等度(投薬開始):月 5,000〜15,000 円(ピモベンダン・利尿剤など、長期継続)
  • 重症(うっ血性心不全・入院):10〜30 万円以上(酸素吸入・利尿管理・集中管理)

※ 動物病院や地域、合併症の有無で大きく変わります。ペット保険の対象になるかも確認しておくと安心です。

よくある質問

犬の心臓病で食べてはいけないものは何ですか?

心臓病の犬が避けたい食品は、加工ハム・ベーコン・市販ジャーキー・チーズ(カッテージ以外)・スナック菓子・味付きスープなどナトリウム(塩分)の多い食品です。ACVIM コンセンサス[2]では、心拡大を伴うステージ B2 以降で段階的なナトリウム制限が推奨されています。家庭の食卓から落ちた味付きの料理や塩漬け食品を与えるのも避けましょう。

犬の心臓病の寿命や余命はどれくらいですか?

ステージで大きく異なります。2016 年の Boswood らによる EPIC trial[5]では、心拡大を伴うステージ B2 の犬にピモベンダンを投与した群でうっ血性心不全発症または心臓死までの期間が中央値 1,228 日(プラセボ群 766 日)と、約 462 日延長したと報告されています。ステージ C 以降は個体差が大きく、Borgarelli 2008[6]では生存期間中央値 19.5 ヶ月(標準偏差 ±13.2 ヶ月)と報告されています。具体的な見通しはかかりつけ獣医師にご相談ください。

心臓病の犬に与えてもよいおやつは何ですか?

ナトリウムが少ないおやつをごく少量、獣医師相談のうえで活用できます。例:茹でた鶏ささみ(無塩)少量、薄切りりんご(少量・芯と種除く)、無塩プレーンヨーグルト少量、ブルーベリー数粒、茹でたかぼちゃ少量等。市販の犬用ジャーキー・チーズスティック・ビスケットは塩分が高いので避けましょう。1 日の総摂取カロリーに占めるおやつは 10% 以下に。

心臓病の犬のナトリウム制限は何%が目安ですか?

フードのナトリウム含有量は、ステージ B1 では過度な制限は不要、ステージ B2 で乾物ベース 0.2〜0.3%、ステージ C で 0.15〜0.25%、ステージ D は獣医師の指示に従うのが ACVIM コンセンサス[2]に沿った目安です。通常の成犬用フードは 0.4〜0.6% 程度なので、心拡大があるステージでは低ナトリウム療法食への切り替えが基本となります。急なナトリウム制限はかえって体に負担となるため段階的に進めます。

NT-proBNP やトロポニンの値はどう読めばいいですか?

NT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体:心臓に負担がかかると分泌される指標)は心不全の重症度を反映する血液検査で、値が高いほど心臓への負担が大きいと解釈されます。トロポニンは心筋の障害を示す指標です。いずれも参考値や測定機関で基準が異なるため、解釈はかかりつけ獣医師と一緒に行いましょう。心エコー検査や聴診と合わせて総合判断します。

心臓病用の療法食を食べてくれない場合はどうすればいいですか?

食いつきが悪い場合は、まずフードを人肌程度(37〜38℃)に温めて香りを引き出す方法が有効です。少量の無塩のぬるま湯でふやかす、ウェットタイプの療法食に切り替える、無塩の鶏ささみのゆで汁を少量混ぜる方法もよいでしょう。トッピングは塩分の少ない素材に限定し、必ず獣医師相談を。絶食が 1 日以上続く場合は速やかに動物病院を受診しましょう。

キャバリアは心臓病になりやすいですか?

はい、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは僧帽弁閉鎖不全症(MVD)の好発犬種として広く知られています。Borgarelli & Häggström 2010 の総説[7]では、MVD は老齢犬で多く見られ、診断犬の約 30% が心不全に進行すると報告されています。MVD の好発犬種では早期から心雑音が観察されることがあり、若い頃からの定期的な心臓検診(聴診・心エコー検査)と、ナトリウムを過剰に含まない食事を心がけることが推奨されます。

フードの切り替え期間はどれくらいかけるべきですか?

目安は 7〜30 日。例:1〜3 日目は新フード 25%+現行 75%、4〜7 日目は 50% ずつ、8〜14 日目は新フード 75%、15 日目以降は完全切替。食欲低下や軟便が出たら一段階戻して 2〜3 日様子を見ます。心臓病の犬では急な切替が食欲低下や悪液質の引き金になりうるため、必ずゆっくり進めましょう。

まとめ

犬の心臓病の食事は、「ナトリウムを段階的に抑える」「タウリン・EPA など栄養素のバランスを保つ」「悪液質を避けるためのカロリー確保」の 3 つが土台です。ナトリウムは ACVIM ステージ B2 で乾物ベース 0.2〜0.3%、C で 0.15〜0.25% が目安[2]。EPA・DHA は 1998 年の Freeman 研究[1]で悪液質の改善が報告されており、療法食での活用が選択肢となります。

2016 年の EPIC trial[5]が示すように、心拡大を伴うステージ B2 でのピモベンダン投与は生存期間の中央値を約 462 日延長すると報告されています。早期発見・早期介入の意義が裏付けられた結果です。療法食を中心に、補完トッピングや手作りという選択肢を獣医師との相談で組み合わせることが、長く穏やかに暮らすための土台になります。

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参考文献を表示(全 9 件)
  1. Freeman LM, Rush JE, Kehayias JJ, et al. "Nutritional alterations and the effect of fish oil supplementation in dogs with heart failure." J Vet Intern Med. 1998;12(6):440-448. doi:10.1111/j.1939-1676.1998.tb02148.x
  2. Keene BW, Atkins CE, Bonagura JD, et al. "ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs." J Vet Intern Med. 2019;33(3):1127-1140. doi:10.1111/jvim.15488
  3. Freeman LM, Stern JA, Fries R, Adin DB, Rush JE. "Diet-associated dilated cardiomyopathy in dogs: what do we know?" J Am Vet Med Assoc. 2018;253(11):1390-1394. doi:10.2460/javma.253.11.1390
  4. Sanderson SL. "Taurine and carnitine in canine cardiomyopathy." Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2006;36(6):1325-1343. doi:10.1016/j.cvsm.2006.08.010
  5. Boswood A, Häggström J, Gordon SG, et al. "Effect of pimobendan in dogs with preclinical myxomatous mitral valve disease and cardiomegaly: The EPIC Study—A randomized clinical trial." J Vet Intern Med. 2016;30(6):1765-1779. doi:10.1111/jvim.14586
  6. Borgarelli M, Savarino P, Crosara S, et al. "Survival characteristics and prognostic variables of dogs with mitral regurgitation attributable to myxomatous valve disease." J Vet Intern Med. 2008;22(1):120-128. doi:10.1111/j.1939-1676.2007.0008.x
  7. Borgarelli M, Häggström J. "Canine degenerative myxomatous mitral valve disease: natural history, clinical presentation and therapy." Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2010;40(4):651-663. doi:10.1016/j.cvsm.2010.03.008
  8. Kittleson MD, Keene B, Pion PD, Loyer CG. "Results of the multicenter spaniel trial (MUST): taurine- and carnitine-responsive dilated cardiomyopathy in American cocker spaniels with decreased plasma taurine concentration." J Vet Intern Med. 1997;11(4):204-211. doi:10.1111/j.1939-1676.1997.tb00092.x
  9. Freeman LM, Rush JE, Markwell PJ. "Effects of dietary modification in dogs with early chronic valvular disease." J Vet Intern Med. 2006;20(5):1116-1126.

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