「納豆を食べていると愛犬がじっと見つめてくる…犬に納豆をあげても大丈夫なのかな?」そんな疑問を持つ飼い主さんは多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、納豆は犬が食べても問題のない食品です。日本の伝統的な発酵食品である納豆は、良質なタンパク質やビタミンK2、ナットウキナーゼなど、犬の健康にもうれしい栄養素を豊富に含んでいます。
ただし、「安全=いくらでもOK」というわけではありません。大豆アレルギーのリスクや、付属のタレ・からしの危険性など、知っておくべき注意点もあります。この記事では、研究データに基づいて、犬に納豆を与える際の適量・与え方・注意点を詳しく解説します。
納豆の栄養素と犬への効果
納豆に含まれる主な栄養素
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」によると、糸引き納豆100gあたりの栄養成分は以下のとおりです[1]。
| 栄養素 | 100gあたりの含有量 | 犬への期待効果 |
|---|---|---|
| エネルギー | 190kcal | 良質なエネルギー源 |
| タンパク質 | 16.5g | 筋肉・被毛・皮膚の健康維持 |
| 脂質 | 10.0g | 皮膚・被毛のツヤを保つ |
| 食物繊維 | 6.7g | 腸内環境の改善 |
| ビタミンK | 600μg | 骨の形成・血液凝固に関与 |
| カリウム | 660mg | 筋肉・心臓機能の維持 |
| レシチン | (大豆由来で豊富) | 脳機能・細胞膜の維持 |
良質なタンパク質:犬の体づくりの基本
納豆の原料である大豆は「畑の肉」とも呼ばれ、植物性食品のなかで特に良質なタンパク質を含む食品です。NRC(米国学術研究会議)の「犬と猫の栄養素要求量」によると、成犬は体重1kgあたり約2.62gのタンパク質を食事から摂取する必要があるとされています[2]。
さらに、納豆は発酵によって大豆タンパク質が分解され、アミノ酸やペプチドの状態になっているため、消化吸収がしやすいという利点があります。胃腸が弱い犬やシニア犬にとっても、比較的消化の負担が少ない食品といえます。
ビタミンK2:骨と血液の健康を支える
納豆はビタミンK2(メナキノン-7)が極めて豊富な食品です。ビタミンKは血液の正常な凝固に不可欠なビタミンであり、同時に骨へのカルシウム沈着を促進する働きもあります[2]。主食のドッグフードで基本的なビタミンKは摂取できますが、納豆からの自然な補給も健康維持に役立ちます。
食物繊維とプロバイオティクス:発酵食品ならではの力
納豆には100gあたり6.7gと豊富な食物繊維が含まれており、これは犬の腸内の善玉菌のエサとなります。さらに、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)自体がプロバイオティクスとして腸内環境を整える働きがあるとされています[4]。
発酵の過程で生成されるさまざまな有益成分が、犬の腸内フローラのバランスを良好に保つのに役立つとされています。ただし、食物繊維の摂りすぎは逆に下痢や軟便の原因になるため、適量を守ることが大切です。
納豆の栄養まとめ
納豆は良質なタンパク質・ビタミンK2・食物繊維・ナットウキナーゼが豊富で、発酵によって消化吸収もしやすい食品です。犬に有毒な成分は含まれていません[5]。ただし、高タンパク・高カリウムであることを忘れずに、あくまで「おやつ・トッピング」として適量を与えましょう。
犬に納豆を与えるメリット
プロバイオティクスとしての腸内環境改善効果
納豆の最大の特徴は、生きた納豆菌を含む発酵食品であるという点です。Schmitz & Suchodolski(2016)の研究では、犬の腸内細菌叢がプロバイオティクスによって改善されうることが報告されています[4]。
納豆菌は胃酸に強く、生きたまま腸に到達しやすいという特性を持っています。腸内で善玉菌の増殖を助け、有害菌の活動を抑制することで、お腹の調子を整えるのに役立つとされています。便の状態が安定しない犬や、抗生物質の服用後に腸内環境が乱れた犬への補助的なケアとしても注目されています。
ビタミンK2と骨の健康
納豆に豊富に含まれるビタミンK2(メナキノン-7)は、カルシウムを骨に沈着させるオステオカルシンの活性化に関与しています。成長期の犬やシニア犬にとって、骨の健康維持は重要なテーマです。
主食の総合栄養食で基本的なビタミンKは摂取できていますが、納豆を少量トッピングすることで、自然な形でのビタミンK2補給が可能になります。
ナットウキナーゼの血栓予防効果
納豆に含まれるナットウキナーゼは、フィブリン(血栓の主成分)を直接分解する酵素として、Sumi et al.(1987)の研究で初めて報告されました[3]。ヒトの研究では、血栓の予防や血液をサラサラにする効果が示唆されています。
ナットウキナーゼに関する注意
ナットウキナーゼの血栓予防効果は主にヒトの研究で報告されているものであり、犬における臨床データは限定的です。犬への効果を過信せず、あくまで参考程度にとどめてください。心臓や血液の疾患がある犬に対しては、かかりつけの動物病院に相談のうえ判断しましょう。
レシチン:脳と細胞膜の健康に
大豆由来のレシチンは、細胞膜の構成成分であり、脳機能の維持にも関与しています。特にシニア犬の認知機能サポートとして注目される成分です。納豆には大豆レシチンが自然な形で含まれており、毎日の食事に少量加えることで穏やかな変化が見られることがあります。
体重別の適量目安
「1日の総カロリーの10%以内」が基本ルール
犬のおやつの適量は、1日の総摂取カロリーの10%以内が推奨されています[2]。納豆は100gあたり約190kcalで、1パック(約50g)で約95kcalです。小粒の納豆1粒は約0.5gで、約1kcalに相当します。体重ごとの目安量を下表にまとめました。
| 体重 | 1日の必要カロリー目安 | おやつ上限(10%) | 納豆の適量(目安) |
|---|---|---|---|
| 3kg(超小型犬) | 約200kcal | 約20kcal | 約3〜5g(小粒6〜10粒) |
| 5kg(小型犬) | 約300kcal | 約30kcal | 約5〜8g(小粒10〜16粒) |
| 10kg(中型犬) | 約500kcal | 約50kcal | 約10〜15g(約1/4パック) |
| 20kg(大型犬) | 約900kcal | 約90kcal | 約25〜35g(約1/2パック) |
| 30kg(大型犬) | 約1,200kcal | 約120kcal | 約40〜50g(約1パック) |
※上記は避妊・去勢済みの成犬が標準的な活動量の場合の目安です。子犬やシニア犬、持病のある犬は個別に調整が必要です。愛犬の正確なカロリー計算については小型犬のカロリー計算ガイドも参考にしてください。
与えすぎのサイン
- 軟便・下痢:食物繊維や脂質の過剰摂取による消化不良
- 嘔吐:一度に大量に食べた場合に起こりやすい
- おならの増加:大豆の食物繊維による腸内ガスの発生
- 体重増加:継続的に与えすぎた場合、カロリーオーバーに
これらの症状が見られたら、納豆の量を減らすか、一時的に中止して様子を見ましょう。
納豆の与え方と注意点
1. タレ・からしは絶対に使わない
納豆に付属のタレやからしは、犬には絶対に与えないでください。タレには醤油(高塩分)や砂糖が含まれ、からしは辛味成分が犬の消化器を刺激します。納豆を犬に与える際は、必ず味付けなしのプレーンな状態で与えましょう。
2. ひきわり納豆がおすすめ
犬に納豆を与えるなら、ひきわり納豆が最も食べやすくおすすめです。粒が細かく刻まれているため消化しやすく、ドッグフードにも混ぜやすいメリットがあります。粒納豆を使う場合は、スプーンの背で軽くつぶしてから与えると消化の負担が軽くなります。
3. ドッグフードにトッピングとして使う
納豆はそのまま与えるよりも、いつものドッグフードに少量をトッピングするのがおすすめです。納豆の粘りと香りが食欲を刺激し、食いつきが悪い犬の食欲アップにもつながります。トッピングの工夫についてはドッグフードのトッピングガイドに詳しくまとめています。
4. 最初は1粒から試す
どんな食材でも同じですが、初めて納豆を与えるときは、ごく少量(1〜2粒程度)からスタートしましょう。24時間ほど様子を観察して、下痢・嘔吐・皮膚のかゆみなどのアレルギー症状が出ないか確認します。問題がなければ、2〜3日かけて少しずつ量を増やしていきましょう。
食物アレルギーが心配な飼い主さんは、犬のアレルギー完全ガイドもあわせてご覧ください。
5. 加熱せずそのまま与える
納豆に含まれるナットウキナーゼは熱に弱く、70度以上で活性が失われるとされています。ナットウキナーゼの酵素活性を生かしたい場合は、加熱せずにそのまま与えましょう。ただし、冷蔵庫から出したばかりの冷たい納豆は、少し室温に戻してから与えるとお腹に優しいです。
納豆を与えるときのチェックリスト
- タレ・からしを取り除いたか(使わない)
- ひきわり、または粒をつぶしてから与えているか
- 1日のおやつカロリーの範囲内か
- 初めての場合、1〜2粒からスタートしているか
- 大豆アレルギーや持病(甲状腺・腎臓)がないか確認したか
こんな犬には納豆を控えて
納豆は多くの犬に安全な食品ですが、以下に該当する犬には与えないか、かかりつけの動物病院に相談してからにしましょう。
大豆アレルギーの犬
納豆の原料は大豆です。大豆アレルギーの犬には、納豆も含めて大豆製品を与えないでください。発酵によってタンパク質の構造が一部変化しますが、アレルゲンが完全に分解されるわけではありません。大豆製品(豆腐・豆乳・おからなど)で過去にアレルギー症状が出た犬は、納豆も避けるべきです。
甲状腺機能低下症の犬
大豆に含まれるイソフラボンは、甲状腺ホルモンの産生に影響を与える可能性があります。甲状腺機能低下症と診断されている犬や、甲状腺ホルモンの薬を服用中の犬には、大豆製品の摂取について動物病院に相談してから判断してください。少量であれば問題になるケースは少ないとされていますが、念のため注意が必要です。
腎臓病の犬
納豆はカリウムが豊富な食品(100gあたり660mg)です。腎臓病の犬はカリウムの排出能力が低下していることが多く、高カリウム血症のリスクがあります[2]。腎臓に疾患がある犬には、納豆を含むカリウムの多い食品は避けるべきです。愛犬の腎臓の健康管理については犬の体重管理ガイドも参考にしてください。
抗凝固薬を服用中の犬
納豆に含まれるビタミンK2は血液凝固に関与するため、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用中の犬には影響を与える可能性があります。抗凝固薬を処方されている犬には、納豆を与える前に必ずかかりつけの動物病院に確認してください。
納豆を控えるべき犬
- 大豆アレルギー:発酵してもアレルゲンは完全に分解されない
- 甲状腺機能低下症:イソフラボンが甲状腺ホルモンに影響する可能性
- 腎臓病:高カリウム血症のリスク
- 抗凝固薬服用中:ビタミンK2が薬の効果に影響する可能性
- 消化器が弱い犬:軟便・下痢が続く場合は中止
よくある質問
犬に納豆を毎日あげても大丈夫ですか?
毎日少量を与えること自体は問題ありません。納豆は発酵食品のため、継続的に与えることで腸内環境の改善が期待できます。ただし、1日の総摂取カロリーの10%以内に収めることが重要です。体重5kgの小型犬であれば1日5〜8g(小粒10〜16粒)程度が目安です。毎日与える場合は、ほかのおやつを控えるか、主食のフード量を少し調整しましょう。また、納豆に付属のタレやからしは絶対に使わないでください。
ひきわり納豆と粒納豆、犬にはどちらがいいですか?
犬にはひきわり納豆がおすすめです。ひきわり納豆は粒が細かく刻まれているため消化しやすく、ドッグフードにも混ぜやすいメリットがあります。また、ひきわり納豆は粒納豆に比べて表面積が大きいため、ビタミンKの含有量がやや多いという特徴もあります。初めて納豆を与える際も、ひきわり納豆のほうが少量の調整がしやすいのでおすすめです。粒納豆を使う場合は、スプーンの背で軽くつぶしてから与えてください。
大豆アレルギーの犬にも納豆は大丈夫ですか?
大豆アレルギーの犬には納豆を与えないでください。納豆の原料は大豆であり、発酵によってタンパク質の構造は一部変化しますが、アレルゲンが完全に分解されるわけではありません。大豆アレルギーと診断されている犬や、大豆製品(豆腐・豆乳など)で皮膚のかゆみ・嘔吐・下痢などの症状が出たことがある犬には、納豆も避けるべきです。アレルギーが疑われる場合は、動物病院で相談してください。食物アレルギーについて詳しくは犬のアレルギー完全ガイドをご覧ください。
賞味期限切れの納豆を犬に与えても大丈夫ですか?
賞味期限を過ぎた納豆は犬に与えないでください。納豆は発酵食品ですが、賞味期限を大幅に過ぎるとアンモニアが増加し、品質が劣化します。見た目に変化がなくても、風味や栄養価が低下している可能性があります。特に犬は人間よりも体が小さく、劣化した食品の影響を受けやすいため、必ず賞味期限内の新鮮な納豆を与えるようにしましょう。
まとめ
納豆は犬にとって安全な食品であり、良質なタンパク質・ビタミンK2・ナットウキナーゼ・食物繊維など有用な栄養素を豊富に含んでいます[1]。発酵食品ならではのプロバイオティクス効果により、腸内環境の改善も期待できます[4]。
ただし、高タンパク・高カリウムであるため、与えすぎには注意が必要です。体重5kgの小型犬で1日5〜8g程度を目安に、必ずタレ・からしを除き、ひきわりか粒をつぶして与えてください。大豆アレルギー・甲状腺機能低下症・腎臓病の犬には控えるか、かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
日本の伝統的な発酵食品である納豆を、愛犬の体質や体調に合わせて、安全に食生活に取り入れてみてください。
参考文献を表示(全5件)
- 文部科学省.「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」糸引き納豆.
- National Research Council. "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." National Academies Press, 2006.
- Sumi H, Hamada H, Tsushima H, Mihara H, Muraki H. "A novel fibrinolytic enzyme (nattokinase) in the vegetable cheese Natto; a typical and popular soybean food in the Japanese diet." Experientia. 1987;43(10):1110-1111. DOI: 10.1007/BF01956052
- Schmitz S, Suchodolski J. "Understanding the canine intestinal microbiota and its modification by pro-, pre- and synbiotics – what is the evidence?" Vet Med Sci. 2016;2(2):71-94. DOI: 10.1002/vms3.17
- ASPCA Animal Poison Control Center. "People Foods to Avoid Feeding Your Pets."