ブルーチーズを食べたら?
「チーズをおねだりされるけど、犬にあげても大丈夫?」と迷ったことはありませんか。薬を包んだり、しつけのご褒美にしたりと便利なチーズですが、種類によって安全度が大きく異なることはあまり知られていません。
食べた量が少なくても、症状が出ていなくても、すぐにかかりつけの動物病院(夜間は夜間救急)に電話してください。いつ・どのチーズを・どれくらい食べたかと愛犬の体重を伝え、受診するかは獣医師の指示に従います。包装や食べ残しは捨てずに取っておくと、何をどれだけ食べたかを伝えやすくなります。下の「絶対NGなチーズ・乳製品」に挙げた物を食べたときも同じです。電話で伝えることや自宅でやってはいけないことは、誤食してしまったときの応急処置にまとめています。
ブルーチーズが危険な理由
ブルーチーズ(ゴルゴンゾーラ、ロックフォールなど)に使われる青カビ(Penicillium roqueforti)は、「ロケフォルチンC」という毒素を産生します。犬がこの毒素を大量に摂取すると、筋肉の震え・けいれんなどの中毒症状を引き起こす可能性があります[4]。
少量であっても安全とは言い切れないため、ブルーチーズは犬に一切与えないでください。
絶対NGなチーズ・乳製品
- ブルーチーズ全般:ゴルゴンゾーラ、ロックフォール、スティルトンなど
- 香辛料入りチーズ:ガーリック入り、ハーブ入りなどは犬に有害な成分を含む可能性あり
- チーズフォンデュ・グラタン:ワイン、にんにく、玉ねぎなど犬に有毒な食材が含まれる
チーズの種類で安全性はどう違う?
チーズそのものに、ぶどうや玉ねぎのような犬に有毒な成分はありません[3]。カッテージチーズが最もおすすめで、モッツァレラもOK。プロセスチーズは塩分、クリームチーズは脂肪が多いので少量にします。
| チーズの種類 | 安全性 | 脂肪分(目安) | 塩分(目安) | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| カッテージチーズ | ◎ おすすめ | 低(約2g/100g) | 低〜中 | 低脂肪・高タンパク。犬に最も適したチーズ |
| モッツァレラチーズ | ○ OK | 中(約17g/100g) | 低 | 塩分少なめで比較的安全。少量ずつ与える |
| プロセスチーズ | △ 注意 | 中〜高(約26g/100g) | 高 | 塩分が高く添加物も多い。少量にとどめる |
| クリームチーズ | △ 注意 | 高(約33g/100g) | 低〜中 | 高脂肪で膵炎のリスク。ごく少量なら可 |
| ブルーチーズ | ✕ NG | 高(約29g/100g) | 高 | 青カビの毒素のおそれがあり与えない(食べたときは) |
カッテージチーズが最もおすすめな理由
カッテージチーズは低脂肪・高タンパクの両方がそろった、犬に最も適したチーズです[1]。非熟成タイプのフレッシュチーズで、他のチーズと比べて塩分も控えめです。消化もしやすく、おなかが敏感な犬にも比較的与えやすいのが特長です。
チーズは何gまでOK?体重別の適量
おやつ全体の上限(1日の総カロリーの10%以内)から出した、体重別・種類別の上限の目安は下の表のとおりです。チーズは脂肪分・塩分が多いので、上限に届く前に量を控えると安心です。
| 体重 | 1日の必要カロリー目安 | おやつ上限(10%) | カッテージチーズの適量 | プロセスチーズなら |
|---|---|---|---|---|
| 3kg(超小型犬) | 約200kcal | 約20kcal | 約25g(大さじ2弱) | 約6g(ひとかけ) |
| 5kg(小型犬) | 約300kcal | 約30kcal | 約35g(大さじ2と1/2) | 約10g(スライス1/2枚) |
| 10kg(中型犬) | 約500kcal | 約50kcal | 約60g(大さじ4強) | 約15g(スライス1枚弱) |
| 20kg(大型犬) | 約900kcal | 約90kcal | 約105g | 約27g(スライス1.5枚) |
| 30kg(大型犬) | 約1,200kcal | 約120kcal | 約145g | 約36g(スライス2枚) |
※この表は避妊・去勢済みの成犬が標準的な活動量の場合の目安(安静時エネルギー要求量 RER の約1.3倍)です。活動量や体質によって、5kg なら約280〜370kcal の幅があります。子犬やシニア犬、持病のある犬は個別に調整が必要です。愛犬の正確なカロリー計算については小型犬のカロリー計算ガイドも参考にしてください。
与えすぎのサイン
- 軟便・下痢:乳糖不耐症や脂肪の過剰摂取による消化不良
- 嘔吐:脂肪分が多いチーズを一度に大量に摂取した場合に起こりやすい
- 体重増加:チーズはカロリーが高く、継続的な与えすぎは肥満の原因に
- 過度の喉の渇き:塩分の多いチーズを食べた後に水を大量に飲む場合は塩分過多のサイン
これらの症状が見られたら、チーズの量を減らすか、一時的に中止して様子を見ましょう。
チーズはどう与える?注意すべきことは?
成犬は乳糖を分解する力が落ちているため、少量から始めて便の状態を確認しましょう。塩分の多いプロセスチーズは少量にし、薬を包む用途にはカッテージやモッツァレラが適しています。
1. 乳糖不耐症のリスクを理解する
犬は子犬の時期にはラクターゼ(乳糖を分解する酵素)を多く分泌しますが、成犬になるとラクターゼの分泌量が大きく減少します[2]。乳糖を多く含む乳製品を摂取すると、お腹がゴロゴロしたり、下痢や嘔吐を起こす犬もいます。
チーズは牛乳に比べて製造過程で乳糖が大幅に減少していますが、ゼロではありません。特にフレッシュチーズ(カッテージチーズ、モッツァレラなど)は、ハードチーズ(チェダー、パルメザンなど)よりも乳糖がやや多い傾向があります。
2. 塩分の問題に注意する
特にプロセスチーズは100gあたり約1,100mgのナトリウムを含み、犬にとってはかなりの高塩分です。プロセスチーズ5gだけでも、ナトリウム約55mgを摂取することになります。
塩分の過剰摂取は喉の渇き・多飲多尿・腎臓への負担につながります。チーズを選ぶ際は、できるだけ塩分の少ないカッテージチーズやモッツァレラチーズを選びましょう。
3. 薬を包むのに便利な使い方
チーズは犬に薬を飲ませるときの「包み材」として非常に優秀です。チーズの強い香りと味が薬の苦みを隠してくれるため、薬嫌いの犬でも比較的スムーズに服用できます。
- 少量のチーズ(5g程度)を手で軽く丸める
- 中心に薬を押し込んでチーズで包む
- 犬にそのまま与える(噛まずに飲み込むように促す)
ただし、テトラサイクリン系抗生物質などカルシウムと結合して吸収が阻害される薬もあります。必ず処方時にかかりつけの動物病院で「乳製品と一緒に飲ませてよいか」を確認してください。
4. 初めて与えるときは少量から
初めてチーズを与えるときは、ごく少量(小さじ1杯程度)からスタートしましょう。24時間ほど様子を観察して、下痢・嘔吐・皮膚のかゆみなどのアレルギー症状が出ないか確認します。乳製品は食物アレルギーの原因になることもあるため、慎重に進めてください。
食物アレルギーが心配な飼い主さんは、犬の食物アレルギーと除去食の進め方もあわせてご覧ください。
5. おやつとして与え、主食の代わりにしない
チーズは栄養豊富ですが、犬に必要な栄養素をすべてバランスよく含んでいるわけではありません。あくまでおやつやトッピングとして少量を与え、主食の総合栄養食の代わりにはしないでください。トッピングの工夫についてはドッグフードのトッピングガイドに詳しくまとめています。
チーズを与えるときのチェックリスト
- ブルーチーズ・香辛料入りチーズではないか確認したか
- 愛犬の体格に合った量(体重別目安表を参照)か
- 1日のおやつカロリーの範囲内か
- 初めての場合、少量からスタートしているか
- 持病(膵炎・腎臓病・肥満など)がないか確認したか
チーズを控えるべき犬は?
次に当てはまる犬には与えないか、かかりつけの動物病院に相談してからにしましょう。
チーズを控えるべき犬
- 膵炎・膵炎の既往歴:高脂肪が膵臓に負担をかける[5]
- 肥満・ダイエット中:高カロリーでカロリーオーバーの原因に
- 乳糖不耐症:下痢・嘔吐などの消化器症状のリスク
- 腎臓病:塩分の排出が困難で腎機能をさらに悪化させる
- 心臓病・肝臓病など:食事の管理をしている子は、与える前に獣医師に確認
- 乳製品アレルギー:カゼインなど乳タンパク質に対するアレルギー反応
膵炎(すいえん)の犬・膵炎の既往歴がある犬
高脂肪食と犬の高脂血症・膵炎の関連が指摘されています[5]。膵炎を経験した犬には、カッテージチーズでも与えないほうが安全です。食べていい食材・避けたい食材は膵炎の犬の食事の早見表で確認できます。
肥満・体重管理中の犬
プロセスチーズは100gあたり約330kcalと高カロリーです。きゅうりやにんじんなど、カロリーの低いおやつを選ぶほうが向いています(犬の体重管理ガイド)。
乳糖不耐症の犬
牛乳でお腹を壊したことがある犬は、チーズでも同じ症状が出ることがあります。乳製品を与えたいときは、乳糖がほぼ含まれない長期熟成のパルメザンをごく少量試すか、ヨーグルト(発酵で乳糖が減る)を検討してください。乳製品以外では卵も良質なタンパク源です。
腎臓病の犬
腎臓病の犬は塩分を体の外へ出す力が落ちていることが多く、塩分の多いチーズは腎臓の負担になります。避けたい食材と与えやすい食材は腎臓病の食事の早見表で確認できます。
心臓病・肝臓病などで食事の管理をしている犬
扱いは病気や病期によって違うため、チーズを与える前にかかりつけの獣医師に確認してください。避けたい食材と与えやすい食材は次の記事で確認できます。
チーズにはどんな栄養がある?犬への効果は?
チーズはタンパク質・カルシウム・ビタミンA・B12を含みます。脂肪分・塩分・乳糖も含むため、少量をおやつとして与えるのが基本です。USDA(米国農務省)の FoodData Central による、カッテージチーズ(低脂肪タイプ)100gあたりの値は次のとおりです[1]。
| 栄養素 | 100gあたりの含有量 | 犬への期待効果 |
|---|---|---|
| エネルギー | 84kcal | 低カロリーなタンパク源 |
| タンパク質 | 11.0g | 筋肉の維持・被毛の健康 |
| 脂質 | 2.3g | エネルギー源・皮膚の健康 |
| カルシウム | 103mg | 骨・歯の形成と維持 |
| ビタミンA | 69μg RAE | 視力・免疫機能の維持 |
| ビタミンB12 | 0.42μg | 神経機能・赤血球の生成 |
| ナトリウム | 321mg | (過剰摂取に注意) |
よくある質問
犬用チーズと人間用チーズの違いは何ですか?
犬用チーズは、塩分と脂肪分を大きく減らした製品です。人間用のプロセスチーズの塩分は100gあたり約2.8gですが、犬用は0.1〜0.5g程度です。人間用を与えるなら、塩分の少ないカッテージやモッツァレラを少量にします。
犬にチーズを毎日あげても大丈夫ですか?
少量なら毎日でもかまいません(5kgの犬でカッテージチーズ約35gまで・体重別の表)。毎日与えるなら、その分ほかのおやつやフードを減らし、軟便や下痢が続くときは回数を減らしてください。
まとめ
実践はシンプルです。迷ったら低脂肪のカッテージチーズを、体重別早見表の範囲内で。初めてなら小さじ1杯から始めて24時間ほど便や体調を観察し、ブルーチーズと香辛料入りチーズだけは絶対に与えないでください[4]。
膵炎・肥満・腎臓病・乳糖不耐症の犬や、心臓病などで食事の管理をしている犬には、控えるか、かかりつけの動物病院に相談するほうが安心です。愛犬の体質や体調に合わせて、チーズを安全に活用してください。フード選びの基本についてはドッグフードの種類ガイドも参考になります。
参考文献を表示(全5件)
- USDA FoodData Central. "Cheese, cottage, lowfat, 2% milkfat." FDC ID: 328841.
- National Research Council. "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." National Academies Press, 2006.
- Cortinovis C, Caloni F. "Household Food Items Toxic to Dogs and Cats." Front Vet Sci. 2016;3:26. DOI: 10.3389/fvets.2016.00026
- Young KL, Villar D, Carson TL, et al. "Tremorgenic mycotoxin intoxication with penitrem A and roquefortine in two dogs." J Am Vet Med Assoc. 2003;222(1):52-53. doi:10.2460/javma.2003.222.52
- Xenoulis PG, Steiner JM. "Lipid metabolism and hyperlipidemia in dogs." The Veterinary Journal. 2010;183(1):12-21. DOI: 10.1016/j.tvjl.2008.10.011