「つい、テーブルの上のおやつを愛犬がパクッと食べてしまった」——そんな経験はありませんか?
人間にとっては何気ない食べ物でも、犬にとっては命に関わる猛毒になることがあります。チョコレート、ぶどう、玉ねぎ……普段の食卓に当たり前にある食材が、愛犬の健康を脅かす原因になりうるのです。
この記事では、研究データに基づいて犬に絶対に与えてはいけない食べ物15選を危険度別に紹介します。それぞれの中毒量、症状、そして万が一食べてしまった場合の対処法まで詳しく解説します。
犬に危険な食べ物を知っておく重要性
ペット中毒事故の現状
ASPCA(米国動物虐待防止協会)の動物中毒管理センターには、年間約40万件以上のペット中毒に関する相談が寄せられています[3]。このうち食品による中毒は全体の上位を占め、その多くが飼い主の不注意による家庭内での誤食事故です。
日本でも、動物病院への来院理由として「誤食・中毒」は常に上位にランクインしています。特に小型犬は体重が軽いため、ほんの少量の誤食でも体重あたりの摂取量が相対的に多くなり、中毒症状が出やすいという特徴があります。
犬の食品中毒に関するデータ
- ASPCA中毒相談件数:年間40万件超(食品中毒は上位カテゴリ)
- チョコレート中毒:犬の食品中毒で最も報告数が多い
- キシリトール:近年、中毒報告が急増している食品添加物
- ぶどう・レーズン:少量でも致死的な腎不全を起こすケースあり
出典: ASPCA Animal Poison Control Center Annual Report
なぜ犬と人間で「安全な食べ物」が違うのか
犬と人間は、体内での食べ物の分解・代謝のしかたが大きく異なります。例えば、人間はチョコレートに含まれるテオブロミンを素早く代謝できますが、犬はその代謝速度が非常に遅いため、体内に長時間毒性成分が蓄積してしまいます[4]。
また、犬は人間と比べて体重が小さいため、同じ量を食べても体重あたりの摂取量がはるかに多くなります。体重3kgのチワワが板チョコ1枚(約50g)を食べた場合、体重60kgの人間に換算すると約1kg分のチョコレートを一気に食べたのと同じインパクトになります。
このような代謝の違いと体重差を理解することが、誤食事故を防ぐ第一歩です。
この記事の危険度の分け方
本記事では、犬にとっての危険度を3段階に分けて紹介します[1]。
| 危険度 | 基準 | 該当する食べ物の例 |
|---|---|---|
| ★★★(致死的) | 少量でも命に関わる。緊急の対応が必要 | チョコレート、ぶどう、玉ねぎ、キシリトール、マカダミアナッツ |
| ★★(危険) | 摂取量によっては重篤な症状。速やかな対応が必要 | アルコール、カフェイン、アボカド、生の骨、生卵の白身 |
| ★(注意) | 大量摂取や継続的な摂取で健康被害の恐れ | 塩分の多い食品、高脂肪食品、牛乳、生の魚介類、ナッツ類 |
危険度★★★|命に関わる食べ物5選
まずは、犬が食べると命に直結する最も危険な食べ物を5つ紹介します。これらは家庭によくある食材ばかりですので、保管場所や取り扱いに十分注意してください。
1. チョコレート・カカオ製品
チョコレート中毒
有害成分:テオブロミン(メチルキサンチン類)
中毒量の目安:体重1kgあたりテオブロミン20mg以上で症状出現、40-50mg/kgで重篤化、100-200mg/kgで致死的
症状出現時間:摂取後6〜12時間以内
チョコレート中毒は、犬の食品中毒の中で最も報告数が多いものの一つです[4]。チョコレートに含まれるテオブロミン(theobromine)は、人間では素早く代謝されますが、犬の体内では半減期が約17.5時間と非常に長く、体内に蓄積して中毒症状を引き起こします。
チョコレートの種類別テオブロミン含有量
チョコレートの種類によってテオブロミンの含有量が大きく異なります。カカオ含有量が高いほど危険度が増します[1]。
| チョコレートの種類 | テオブロミン量(mg/g) | 体重5kgの犬で症状が出る量 | 致死的な量(目安) |
|---|---|---|---|
| ホワイトチョコレート | 約0.1mg/g | 非常に大量(実質的に低リスク) | - |
| ミルクチョコレート | 約1.5-2.0mg/g | 約50-65g(板チョコ約1枚) | 約250-650g |
| ダークチョコレート | 約5.0-8.0mg/g | 約12-20g(ひとかけ2〜3個) | 約60-200g |
| 製菓用チョコレート | 約14-16mg/g | 約6-7g(非常に少量) | 約30-70g |
| ココアパウダー | 約20-28mg/g | 約3.5-5g(ティースプーン約1杯) | 約18-50g |
主な中毒症状
- 軽度(20mg/kg以上):嘔吐、下痢、落ち着きのなさ、多飲多尿
- 中等度(40-50mg/kg以上):頻脈(心拍数増加)、不整脈、高体温、筋肉の震え
- 重度(100mg/kg以上):痙攣発作、昏睡、心不全、死亡
特に注意するタイミング
バレンタインデー、クリスマス、ハロウィンなど、チョコレートが家庭に多くなる時期は誤食事故が急増します。チョコレートは犬の手が届かない場所に保管してください。ココアパウダーや製菓用チョコレートは特に危険度が高いため、密閉容器に入れて高所に保管しましょう。
2. ぶどう・レーズン
ぶどう・レーズン中毒
有害成分:不明(酒石酸が関与している可能性が示唆されている)
中毒量の目安:体重1kgあたりぶどう約3.3g以上で中毒の報告あり。ただし安全量は確立されていない
症状出現時間:摂取後6〜24時間以内
ぶどうとレーズンによる犬の中毒は、2001年にASPCAによって初めて報告されました。驚くべきことに、中毒を引き起こす正確な成分は未だに解明されていません。2021年の研究で酒石酸(tartaric acid)が原因物質である可能性が示唆されましたが、完全に確定はしていません。
Eubig PAらの研究(2005年)では、ぶどうまたはレーズンを摂取した43頭の犬を調査した結果、約53%が急性腎不全を発症し、そのうち一部は死亡したと報告されています[5]。
主な中毒症状
- 初期症状(6〜12時間):嘔吐(最も一般的)、下痢、食欲不振、腹痛、元気消失
- 進行期(24〜72時間):乏尿(尿量の減少)または無尿、脱水、口臭(尿毒症臭)
- 重篤期:急性腎不全(AKI)、痙攣、昏睡、死亡
レーズンは特に危険
レーズンはぶどうを乾燥させたものなので、重量あたりの毒性成分が凝縮されています。レーズン入りのパン、クッキー、シリアル、トレイルミックスなどにも注意が必要です。干しぶどう、カレンズ(小粒レーズン)も同様に危険です。
ぶどう中毒の厄介な点は、個体差が非常に大きいことです。大量に食べても無症状の犬がいる一方で、ほんの数粒で重篤な腎不全に陥る犬もいます。安全量が確立されていないため、どんなに少量でも犬にぶどう・レーズンを与えるべきではありません。
3. 玉ねぎ・ニラ・ニンニク(ネギ属全般)
ネギ属(Allium)中毒
有害成分:有機チオ硫酸化合物(n-プロピルジスルフィドなど)
中毒量の目安:体重1kgあたり玉ねぎ5g以上(体重5kgの犬で玉ねぎ約25g=中サイズ1/8個)
症状出現時間:摂取後1〜5日(遅発性のため注意)
玉ねぎ、長ねぎ、ニラ、ニンニク、エシャロット、わけぎなどネギ属(Allium)に属するすべての野菜が犬にとって有害です[1]。これらに含まれる有機チオ硫酸化合物は、犬の赤血球内のヘモグロビンを酸化させ、ハインツ小体と呼ばれる異常構造を形成します。ハインツ小体が形成された赤血球は脾臓で破壊され、溶血性貧血を引き起こします。
主な中毒症状
- 初期(1〜3日後):元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢
- 中期(3〜5日後):貧血の症状(歯茎や舌が白っぽくなる)、心拍数の増加、呼吸が荒くなる
- 重篤期:重度の溶血性貧血、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、血尿(赤褐色の尿)、腎不全
加熱・加工しても毒性は消えない
ネギ属の有害成分は加熱、乾燥、粉末化しても分解されません。以下のような食品にも注意してください。
- カレー、肉じゃが、ハンバーグなど玉ねぎを使った料理
- 玉ねぎの入ったスープ・煮汁
- オニオンパウダー、ガーリックパウダー(粉末は濃縮されているため特に危険)
- ラッキョウ、エシャロット
ネギ中毒の特徴として、症状が遅れて現れることが挙げられます。食べた直後は元気でも、1〜5日後に突然貧血症状が現れることがあります。そのため「食べたけど大丈夫だった」と安心するのは危険です。
4. キシリトール
キシリトール中毒
有害成分:キシリトール(糖アルコールの一種)
中毒量の目安:体重1kgあたり0.1g(100mg)以上で低血糖、0.5g/kg以上で肝不全
症状出現時間:摂取後10〜60分以内(非常に速い)
キシリトールは、ガム、キャンディー、歯磨き粉、焼き菓子、一部のピーナッツバターなどに使用される甘味料です。人間にとっては安全ですが、犬にとってはチョコレート以上に危険な物質です[6]。
犬がキシリトールを摂取すると、膵臓から大量のインスリンが急速に放出され、血糖値が急激に低下します(低血糖)。さらに高用量では肝臓の壊死を引き起こし、肝不全に至ることがあります。
具体的な危険量の例
| 犬の体重 | 低血糖を起こす量(0.1g/kg) | 肝不全のリスク(0.5g/kg) | ガムに換算すると |
|---|---|---|---|
| 3kg | 0.3g | 1.5g | ガム1〜2粒で危険 |
| 5kg | 0.5g | 2.5g | ガム2〜3粒で危険 |
| 10kg | 1.0g | 5.0g | ガム3〜5粒で危険 |
主な中毒症状
- 低血糖症状(10〜60分以内):嘔吐、ふらつき、脱力、震え、痙攣、意識消失
- 肝不全(12〜72時間後):黄疸、出血傾向、DIC(播種性血管内凝固症候群)
キシリトール中毒は進行が極めて速い
キシリトール中毒は、他の食品中毒に比べて症状の進行が非常に速いのが特徴です。摂取後10〜30分以内に低血糖症状が現れることがあるため、キシリトールを含む製品を犬が食べた場合は、症状の有無に関わらず直ちに動物病院に連絡してください。
5. マカダミアナッツ
マカダミアナッツ中毒
有害成分:不明
中毒量の目安:体重1kgあたり2.4g以上(体重5kgの犬で約12g=約6〜8粒)
症状出現時間:摂取後12時間以内
マカダミアナッツによる犬の中毒は、1981年にオーストラリアで初めて報告されました[2]。原因となる毒性成分はまだ特定されていませんが、犬に特有の反応を引き起こすことが確認されています。
主な中毒症状
- 後肢の麻痺・脱力:最も特徴的な症状。立てなくなる、歩き方がふらつく
- 嘔吐
- 高体温(39.5度以上)
- 腹痛、震え
マカダミアナッツ中毒は通常、48時間以内に自然回復するケースが多いとされています。ただし、チョコレートコーティングされたマカダミアナッツの場合は、テオブロミン中毒も併発するため、より重篤になるリスクがあります。
危険度★★|注意が必要な食べ物5選
ここからは、大量摂取や特定の状況下で重篤な症状を引き起こす可能性がある食べ物を紹介します。日常的に食卓にのぼる食材も含まれるため、注意が必要です。
6. アルコール(エタノール)
アルコール中毒
有害成分:エタノール
中毒量の目安:体重1kgあたり純アルコール1ml以上で中毒症状。5.5ml/kg以上で致死的
症状出現時間:摂取後30〜60分以内
犬は人間に比べてアルコールの代謝能力が著しく低く、少量のアルコールでも深刻な中毒症状を起こします[1]。ビール、ワイン、日本酒などの飲料だけでなく、発酵したパン生地(体内でエタノールが生成される)、アルコール入りの菓子類、調理用ワインなども危険です。
主な中毒症状
- 嘔吐、下痢
- 中枢神経の抑制(ふらつき、意識障害)
- 低体温、低血糖
- 呼吸抑制、昏睡、死亡(重度の場合)
7. カフェイン
カフェイン中毒
有害成分:カフェイン(メチルキサンチン類)
中毒量の目安:体重1kgあたり140mg以上で重篤な症状
症状出現時間:摂取後1〜2時間以内
カフェインはチョコレートと同じメチルキサンチン類に分類される物質です[2]。コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク、カフェイン含有の栄養ドリンクなどに含まれます。犬はカフェインの代謝が遅いため、人間よりもはるかに少ない量で中毒を起こします。
主な中毒症状
- 落ち着きのなさ、興奮
- 頻脈、不整脈
- 嘔吐、下痢
- 筋肉の震え、痙攣
- 高体温
8. アボカド
アボカド中毒
有害成分:ペルシン(persin)
症状出現時間:摂取後24〜48時間以内
アボカドにはペルシンという毒素が含まれており、果肉、種、皮、葉のすべての部位に存在します[1]。犬に対するペルシンの毒性は鳥類や馬に比べると低いものの、大量摂取すると消化器症状を引き起こす可能性があります。
また、アボカドの大きな種を丸飲みした場合は、消化管閉塞の原因になるため極めて危険です。高脂肪であるため、膵炎のリスクも高まります。
主な中毒症状
- 嘔吐、下痢
- 腹痛
- 心筋障害(大量摂取の場合)
- 消化管閉塞(種を飲み込んだ場合)
9. 生の骨・大きな骨
骨による消化管損傷
危険なもの:鶏の骨(加熱済み)、魚の骨、大きな獣骨の破片
リスク:消化管の穿孔・閉塞、歯の破折、窒息
特に加熱した鶏の骨は縦に裂けやすく、鋭い破片が食道、胃、腸を傷つけ穿孔(穴が開く)を起こす危険性があります。また、硬すぎる骨は犬の歯を折る原因にもなります。
主な症状・リスク
- 口腔内や食道の損傷、出血
- 消化管穿孔による腹膜炎(緊急手術が必要)
- 消化管閉塞(嘔吐、食欲不振、排便困難)
- 歯の破折
- 窒息
10. 生卵の白身
生卵白の長期摂取によるリスク
有害成分:アビジン(avidin)
リスク:ビオチン(ビタミンB7)の吸収阻害
生の卵白に含まれるアビジンというタンパク質は、ビオチン(ビタミンB7)と結合してその吸収を妨げます[2]。1回の少量摂取では問題になりませんが、長期的に生卵白を与え続けるとビオチン欠乏症を引き起こす可能性があります。
加熱するとアビジンは変性するため、しっかり火を通した卵であれば犬に与えても安全です。また、生卵にはサルモネラ菌や大腸菌のリスクもあるため、衛生面からも加熱が推奨されます。
ビオチン欠乏の症状(長期摂取の場合)
- 皮膚炎、毛並みの悪化
- 脱毛
- 成長障害
危険度★|量に注意すべき食べ物5選
以下の食品は、少量であれば直ちに問題にならないことが多いですが、大量摂取や継続的な摂取によって健康被害を引き起こす可能性があります。
11. 塩分の多い食品
塩分過剰摂取のリスク
有害成分:塩化ナトリウム(食塩)
中毒量の目安:体重1kgあたり2〜3g以上の食塩で中毒症状。4g/kg以上で致死的
ポテトチップス、塩せんべい、ハム、ソーセージ、味噌汁など人間用の加工食品には犬にとって過剰な塩分が含まれています[1]。犬は人間に比べて塩分の必要量が少ないため、人間の食事を日常的に与えると塩分過多になります。
主な症状
- 多飲多尿
- 嘔吐、下痢
- ナトリウムイオン中毒(大量摂取時):震え、痙攣、高体温
- 長期的な過剰摂取:腎臓への負担、高血圧
12. 脂肪の多い食品
高脂肪食のリスク
主な危険:急性膵炎の発症リスク
該当食品:揚げ物、ベーコン、バター、豚の脂身、鶏の皮、天ぷらなど
犬に高脂肪の食品を大量に与えると、急性膵炎を発症するリスクが高まります。膵炎は膵臓の消化酵素が自己消化を起こす疾患で、強い腹痛、嘔吐、下痢を伴い、重症化すると多臓器不全に至ることもあります。
特にミニチュア・シュナウザーは遺伝的に高脂血症になりやすく、膵炎のリスクが高い犬種として知られています。
主な症状
- 嘔吐(繰り返す)
- 激しい腹痛(背中を丸める、祈りのポーズ)
- 下痢(脂肪便)
- 食欲不振、元気消失
- 脱水
13. 牛乳・乳製品
乳糖不耐症のリスク
原因:乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼ酵素の不足
該当食品:牛乳、アイスクリーム、生クリーム、一部のチーズ
多くの成犬は、離乳後に乳糖を分解するラクターゼ酵素の産生が減少します[2]。そのため、人間用の牛乳を大量に飲むと、消化されない乳糖が大腸に達し、浸透圧性の下痢やガスの産生を引き起こします。
ただし、ヨーグルトやチーズなど発酵によって乳糖が分解された乳製品は比較的安全です。犬用ミルクやヤギミルクも乳糖が少なく、消化に優しい選択肢です。
主な症状
- 下痢(水様便)
- 腹部膨満、ガス
- 嘔吐
14. 生のイカ・タコ・エビ
チアミナーゼによるビタミンB1欠乏
有害成分:チアミナーゼ(thiaminase)
リスク:ビタミンB1(チアミン)を分解し、長期的な欠乏症を引き起こす
生のイカ、タコ、エビ、貝類などの魚介類にはチアミナーゼという酵素が含まれています。チアミナーゼはビタミンB1(チアミン)を破壊する作用があり、継続的に生の魚介類を与え続けるとビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があります。
チアミナーゼは加熱すると失活するため、十分に火を通した魚介類であれば犬に与えても問題ありません。ただし、イカやタコは消化が悪いため、与える場合は少量にとどめてください。
ビタミンB1欠乏症の症状
- 食欲不振、嘔吐
- ふらつき、歩行障害
- 痙攣
- 重症化すると神経症状(脳の障害)
15. ナッツ類全般
ナッツ類の注意点
主な危険:高脂肪による消化器症状・膵炎リスク、窒息・消化管閉塞のリスク
特に危険:マカダミアナッツ(中毒性あり)、くるみ(カビ毒のリスク)
ナッツ類は全般的に脂肪含有量が高いため、犬に大量に与えると消化器症状や膵炎のリスクが高まります[1]。また、小型犬の場合はナッツが喉に詰まったり、消化管を塞いだりする窒息・閉塞リスクもあります。
くるみは、古くなるとトレモルゲン性マイコトキシンというカビ毒が発生することがあり、これを犬が摂取すると震えや痙攣を引き起こします。ピスタチオやカシューナッツも高脂肪のため、大量摂取は推奨されません。
主な症状
- 嘔吐、下痢
- 腹痛
- 膵炎(高脂肪による)
- 窒息(小型犬で丸飲みした場合)
危険な食べ物一覧比較表
ここまで紹介した15の食べ物を、危険度、中毒量、主な症状で一覧にまとめました。冷蔵庫やキッチンの近くに印刷して貼っておくと安心です。
| 食べ物 | 危険度 | 中毒量の目安(/kg体重) | 主な症状 | 症状出現までの時間 |
|---|---|---|---|---|
| チョコレート | ★★★ | テオブロミン20mg/kg〜 | 嘔吐、不整脈、痙攣 | 6〜12時間 |
| ぶどう・レーズン | ★★★ | 3.3g/kg〜(安全量不明) | 嘔吐、急性腎不全 | 6〜24時間 |
| 玉ねぎ・ネギ類 | ★★★ | 5g/kg〜 | 溶血性貧血、血尿、黄疸 | 1〜5日(遅発性) |
| キシリトール | ★★★ | 0.1g/kg〜 | 低血糖、肝不全 | 10〜60分 |
| マカダミアナッツ | ★★★ | 2.4g/kg〜 | 後肢麻痺、高体温 | 12時間以内 |
| アルコール | ★★ | 純アルコール1ml/kg〜 | 意識障害、低体温 | 30〜60分 |
| カフェイン | ★★ | 140mg/kg〜(重篤) | 興奮、頻脈、痙攣 | 1〜2時間 |
| アボカド | ★★ | 明確な基準なし | 嘔吐、下痢、心筋障害 | 24〜48時間 |
| 生の骨(加熱鶏骨) | ★★ | -(物理的損傷) | 消化管穿孔、閉塞 | 即時〜数日 |
| 生卵の白身 | ★★ | 長期的な継続摂取 | ビオチン欠乏(皮膚炎) | 数週間〜数か月 |
| 塩分の多い食品 | ★ | 食塩2〜3g/kg〜 | 多飲多尿、痙攣 | 数時間 |
| 脂肪の多い食品 | ★ | -(高脂肪食) | 膵炎、嘔吐、腹痛 | 12〜48時間 |
| 牛乳 | ★ | 個体差あり | 下痢、腹部膨満 | 数時間 |
| 生のイカ・タコ・エビ | ★ | 長期的な継続摂取 | ビタミンB1欠乏 | 数週間〜数か月 |
| ナッツ類全般 | ★ | -(高脂肪) | 消化器症状、窒息 | 数時間 |
誤食してしまったときの応急処置
どれだけ気をつけていても、目を離した隙に犬が危険な食べ物を食べてしまうことがあります。そんなとき、飼い主の冷静で迅速な対応が愛犬の命を左右します。
まず確認すべき4つの情報
動物病院に連絡する際、以下の情報をできるだけ正確に伝えてください。
動物病院に伝える情報
- 何を食べたか:食品名、成分表示(パッケージがあれば持参)
- いつ食べたか:摂取してからの経過時間(できるだけ正確に)
- どのくらいの量を食べたか:g数の概算(包装の残りから推計)
- 犬の状態:体重、犬種、年齢、現在の症状の有無
応急処置の手順
ステップ1:落ち着いて状況を確認する
パニックにならず、犬が何を、いつ、どのくらい食べたかを確認します。食べ残しやパッケージがあれば保管してください。
ステップ2:動物病院またはペット中毒相談窓口に連絡する
できるだけ早く動物病院に電話し、状況を伝えて指示を仰ぎます。夜間・休日の場合は、最寄りの夜間救急動物病院に連絡してください。
緊急連絡のポイント
- かかりつけの動物病院の連絡先を事前にスマートフォンに登録しておく
- 夜間救急動物病院の連絡先も併せて確認しておく
- 最寄りの動物病院が見つからない場合は、各都道府県の獣医師会に問い合わせる
ステップ3:獣医師の指示に従う
獣医師から「すぐに来院してください」と言われた場合は、速やかに動物病院へ向かいます。移動中も犬の状態を観察し、嘔吐物がある場合はビニール袋に入れて持参してください。
ステップ4:経過観察が指示された場合
獣医師から「自宅で経過観察」と言われた場合は、以下の点を注意深く観察してください。
- 嘔吐や下痢の有無と回数
- 食欲の変化
- 元気の有無(ぐったりしていないか)
- 歩き方(ふらつきがないか)
- 尿の色と量(特にぶどう中毒の場合)
- 歯茎の色(白っぽくないか=貧血の兆候)
絶対にやってはいけないこと
自己判断で絶対にやってはいけないこと
- 自己判断で吐かせようとしない:食塩水を飲ませる、指を喉に入れるなどの行為は、食道損傷、誤嚥性肺炎、塩分中毒の二次被害を引き起こす危険があります
- 牛乳を飲ませない:「毒を中和する」という俗説がありますが、科学的根拠はなく、乳糖による消化器症状を悪化させる可能性があります
- 様子を見て放置しない:特にキシリトール、チョコレート(大量)、ぶどうの場合は症状が出る前に治療を開始することが重要です
- 民間療法を試さない:オリーブオイルを飲ませる、活性炭を自己投与するなどの行為は、専門家の指示なく行うべきではありません
誤食を未然に防ぐための対策
最も重要なのは、誤食事故を起こさないための環境づくりです。以下の対策を日頃から実践しましょう。
- 食品の保管場所を見直す:チョコレート、ガム、レーズンなどは犬が絶対に届かない場所に保管
- ゴミ箱にフタをする:食べ残しや食品包装を犬が漁れないようにする
- 食事中の管理:人間の食事中に犬に「おすそわけ」をしない習慣をつける
- 来客時の注意:来客者に犬に食べ物を与えないよう伝える
- 家族全員への教育:特に小さな子供に、犬に与えてはいけない食べ物を教える
- 散歩中の注意:路上の食べ残しを拾い食いしないよう「ドロップ(離して)」のコマンドを教える
よくある質問
Q1. 犬がチョコレートを少量なめてしまいました。大丈夫でしょうか?
チョコレートの種類と犬の体重によります。ミルクチョコレートの場合、体重1kgあたり約3.5g以上で軽度の症状が出る可能性があります。例えば体重5kgの犬なら約17g(板チョコ1/3枚程度)から注意が必要です。
ダークチョコやカカオ含有量の高いチョコレートはさらに少量でも危険です。少量でも不安な場合は、食べた量・チョコの種類・犬の体重を伝えて動物病院に相談してください。
Q2. 犬がぶどうを1粒食べてしまいました。どうすればいいですか?
ぶどうは体重1kgあたり3.3g程度(小型犬で1〜2粒)でも腎障害を起こす可能性が報告されています[5]。ただし、個体差が非常に大きく、少量でも重症化する犬もいれば、大量に食べても無症状の犬もいます。
安全な量が確立されていないため、1粒でも食べた場合は速やかに動物病院に連絡し、指示を仰いでください。
Q3. 加熱した玉ねぎなら犬に与えても安全ですか?
いいえ、加熱しても安全ではありません。玉ねぎに含まれる有機チオ硫酸化合物は加熱・乾燥・加工によっても分解されません[1]。
カレー、ハンバーグ、肉じゃがなど、玉ねぎを使った料理の煮汁にも毒性成分が溶け出しているため、犬には絶対に与えないでください。
Q4. 犬が食べてはいけないものを食べた場合、自宅で吐かせていいですか?
自己判断での催吐は推奨されません。食べたものによっては、吐かせることで食道を傷つけたり、誤嚥性肺炎を起こす危険があります。特に鋭利な骨、腐食性物質を食べた場合は絶対に吐かせてはいけません。
まずは動物病院に連絡し、専門家の指示に従ってください。病院では安全な催吐処置や胃洗浄を行うことができます。
Q5. 犬に人間用の牛乳を与えても問題ありませんか?
多くの成犬は乳糖(ラクトース)を分解する酵素が不足しているため、人間用の牛乳を飲むと下痢や消化不良を起こす場合があります。
犬用ミルク(乳糖を分解処理済み)やヤギミルクの方が消化に優しい選択肢です。どうしても牛乳を与えたい場合は、少量から様子を見てください。
まとめ
犬にとって危険な食べ物は、私たちの日常生活の中にたくさん存在しています。この記事で紹介した15の食べ物について、改めて重要なポイントをまとめます。
- 危険度★★★のチョコレート、ぶどう、玉ねぎ、キシリトール、マカダミアナッツは、少量でも命に関わるため、犬の手の届かない場所に保管する
- 危険度★★のアルコール、カフェイン、アボカド、加熱した骨、生卵の白身は、摂取量や状況によって重篤化する可能性がある
- 危険度★の塩分・脂肪の多い食品、牛乳、生の魚介類、ナッツ類は、大量摂取や継続的な摂取で健康被害を引き起こす
- 万が一の誤食時は、自己判断で吐かせたり民間療法を試したりせず、速やかに動物病院に連絡する
- 最も重要なのは誤食を未然に防ぐ環境づくり。食品の保管場所、ゴミ箱の管理、家族全員への教育を徹底する
愛犬の安全を守るために、この記事で紹介した情報を家族全員で共有し、日頃から「犬に与えてはいけない食べ物」の意識を持ち続けることが大切です。少しでも不安を感じたら、迷わずかかりつけの動物病院に相談してください。
参考文献を表示(全6件)
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