⚠️ この記事をお読みいただく前に
- 本記事は愛犬の体調管理の参考情報です。特定の病気の治療・予防が目的ではありません。
- 診断・治療は必ず獣医師に相談しましょう。食事内容の変更も獣医師の指導のもとで行うのが安全です。
- 個々の犬の状態によって最適な対応は異なります。
犬が黄色い液体を吐いたら、何から始めればいい?
まず吐物の色と量・回数・直後の様子を観察し、緊急サインの有無を確認。1 回だけで元気・食欲があれば BVS の可能性が高めですが、繰り返す・ぐったりは即受診を。
胆汁嘔吐症候群(BVS)とはどんな状態?
BVS は、長時間胃が空の状態で十二指腸から胆汁が胃に逆流し、胃粘膜を刺激することで嘔吐を引き起こす病態です[1]。典型的には夜間〜早朝の空腹時に黄色い液体や黄緑色の泡を吐きます。
Ferguson らの BVS 20 症例研究[1]では、頻回給餌・就寝前給餌・胃酸低減薬等を組み合わせた治療で多くの症例が改善したと報告されています。
気づきのサイン(早めに記録したい観察項目)
- 吐いた時間帯(早朝/食前/食後/夜間)
- 吐物の色と内容(黄色い液体/泡/未消化フード/血液混入)
- 吐く頻度(1 日 1 回/繰り返す)と持続日数
- 吐く前の行動(口をペチャペチャ/草を食べる/落ち着かない)
- 吐後の元気・食欲・水分摂取の有無
- 下痢・腹痛サイン・発熱の併発
食事の見直しが対処の中核と言われる理由
BVS は基本的に食事スケジュールの調整で改善が期待できる病態です[1]。薬剤に頼らない第一選択として、以下の工夫が広く採用されています。
- 空腹時間を短くする
- 就寝直前に少量与える
- 消化しやすい食材を選ぶ
一方、黄色い嘔吐の背景に慢性疾患(炎症性腸疾患・慢性膵炎・肝胆道系疾患・腎不全等)が隠れているケースもあります。
Hall と Washabau のレビュー[2]でも、繰り返す症例は鑑別診断のための検査が推奨されています。
黄色い嘔吐の原因はどう分類される?
黄色い嘔吐は「機能性(BVS)」「炎症性(胃腸炎・膵炎・IBD)」「物理性(異物・閉塞)」「全身性(肝臓・腎臓・内分泌)」の 4 系統で考えると整理しやすくなります。
| 分類 | 代表疾患 | 典型的な特徴 | 受診目安 |
|---|---|---|---|
| 機能性 | 胆汁嘔吐症候群(BVS)[1] | 早朝の 1 回嘔吐、吐後元気あり、食欲あり | 就寝前軽食を試し、改善なければ受診 |
| 炎症性(急性) | 急性胃腸炎、急性膵炎[4][5] | 連続嘔吐、腹痛、元気消失、発熱を伴うことあり | 当日中の受診 |
| 炎症性(慢性) | 炎症性腸疾患(IBD)、慢性膵炎[7] | 週 1〜数回の嘔吐が長期持続、体重減少 | 計画的に受診し検査 |
| 物理性 | 異物誤飲、腸閉塞、腫瘍 | 食後すぐ繰り返す、水も吐く、強い腹痛 | 緊急受診 |
| 全身性 | 慢性腎臓病、肝胆道系疾患、糖尿病性ケトアシドーシス、副腎皮質機能低下症[2] | 多飲多尿、体重減少、黄疸、活動量低下を併発 | 血液・尿検査を含む受診 |
同じ「黄色い液体」でも背景はさまざま。Elwood らの WSAVA 嘔吐ガイドライン[3]では、急性嘔吐と慢性嘔吐(3 週間以上継続または週数回繰り返す)でアプローチを分けることが推奨されています。
1 回だけで元気なら経過観察、繰り返す・元気がない・全身症状があるなら獣医師の鑑別が必要です。
胆汁嘔吐症候群(BVS)とは?
胃が長時間空のときに胆汁が逆流し、胃粘膜を刺激する機能性疾患です。Ferguson らの研究[1]で頻回給餌・就寝前給餌の有用性が示され、食事スケジュール調整が第一選択です。
BVS の典型像
- 時間帯:早朝(起床前後)や夕方の食前、夜間に多い
- 頻度:週に数回〜毎日 1 回程度
- 吐物:黄色〜黄緑色の液体や泡、未消化のフードはほぼ含まない
- 吐後の状態:元気・食欲は保たれていることが多い
- 誘因:夜の最後の食事から朝食までの間隔が 10〜12 時間以上
なぜ胆汁が逆流するのか
正常時は、幽門括約筋が逆流を防ぎ、モチリンというホルモンが空腹時の腸の収縮(移動性運動複合体:MMC)を制御しています。
長時間の空腹で胃が空になると、以下の流れで嘔吐が起こります[1]。
- 十二指腸の運動と胆汁分泌のタイミングがずれる
- 胆汁が幽門を超えて胃側に逆流する
- 強アルカリ性の胆汁が胃粘膜を刺激し嘔吐反射を引き起こす
💡 BVS と判断しやすい 3 つの典型サイン
- 朝方〜起床直後の1 回限りの黄色嘔吐
- 吐後すぐ普通に元気・食欲がある
- 夜の最後の食事から朝までの絶食時間が長い(10〜12 時間以上)
3 つすべて当てはまり、就寝前軽食を 1〜2 週間試して改善するなら BVS の可能性が高めです。改善しない/悪化する場合は獣医師に鑑別を依頼しましょう。
薬物療法は必要?
多くの BVS 症例は食事スケジュールの調整だけで改善します[1]。改善が不十分な場合に限り、獣医師の判断で胃粘膜保護剤(スクラルファート等)や制酸剤、消化管運動改善薬が短期使用されることがあります。
自己判断で人用の制酸剤や胃薬を与えるのは強く避けたい行為です。
緊急受診すべきサインは?
12 時間以上水も飲めない、繰り返し吐く、強い腹痛サイン、吐血、激しい元気消失、発熱、激しい下痢併発は早期受診が必要です。脱水・膵炎・腸閉塞のリスクがあるため自宅判断せず病院へ[3]。
🚨 即受診(当日中)が必要なサイン
- 1 日に 3 回以上の嘔吐、または 24〜48 時間継続する嘔吐
- 水を飲んでもすぐ吐く(脱水進行のリスク)
- 吐物に血液(鮮血または黒色のコーヒー残渣様)が混じる
- 強い腹痛サイン:背中を丸める/祈りのポーズ(前肢を伸ばし腰を上げる)/お腹を触ると嫌がる
- ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い
- 発熱(耳・脇・足の付け根が普段より熱い)
- 激しい下痢を併発、または血便
- 異物誤飲の心当たりがある
- 仔犬・小型犬・シニア犬・基礎疾患のある犬での嘔吐継続(脱水・低血糖が早く進む)
Elwood らの WSAVA(世界小動物獣医師会)系嘔吐レビュー[3]では、段階的アプローチが推奨されています。
- 急性嘔吐:初診時の問診・身体検査
- 繰り返す・全身症状を伴う場合:血液検査・腹部超音波・X 線等の画像検査を追加
Mansfield の急性膵炎レビュー[4]や Cridge らの 2022 年膵炎レビュー(ACVIM(米国獣医内科学会)系)[5]でも、急性膵炎は早期介入で予後が大きく変わると指摘されています。
強い腹痛と連続嘔吐は最優先で病院へ連絡しましょう。
様子を見てもよいケース
- 1 回だけの黄色嘔吐で吐後すぐ元気がある
- 食欲があり水も普通に飲める
- 下痢・腹痛・発熱・体重減少などの併発がない
- 過去に同じパターンの BVS と診断されている
この場合でも、6〜12 時間絶食して胃を休めた上で、消化しやすい少量から再開するのが安全です。再嘔吐や元気消失が出たら自宅判断を中止しましょう。
食事回数と就寝前の軽食はどう調整する?
夜から朝食までの間隔を 10〜12 時間以内に収めるのが基本です。1 日 2 回を 3〜4 回に分割し、就寝直前に少量の軽食を追加するのが Ferguson らの BVS 研究[1]でも示された標準的アプローチです。
食事スケジュールの組み立て方
- 1 日の総給餌量は変えない(メーカー推奨量+運動量で調整)
- 2 回 → 3〜4 回に分割(朝・昼・夕・就寝前など)
- 夜最後の食事と朝食の間隔を 10〜12 時間以内に
- 就寝直前 30 分以内に小さじ 1〜2 程度の軽食を追加
- 1〜2 週間続けて嘔吐頻度を記録し、改善を確認
| 項目 | 変更前(BVS が出やすい) | 変更後(BVS 対策) |
|---|---|---|
| 食事回数 | 1 日 2 回(朝 7 時・夜 19 時) | 1 日 3〜4 回 |
| 夜最後の食事 | 19 時 | 20〜22 時+就寝直前に少量 |
| 朝食までの絶食時間 | 12 時間 | 8〜10 時間 |
| 就寝前軽食の例 | なし | ふやかしフード小さじ 2、または茹で鶏むね 5g |
就寝前の軽食に向く食材
- 普段のフードを少量ふやかして胃にやさしく
- 消化しやすいたんぱく質源(茹で鶏むね・白身魚)少量
- ふかしたかぼちゃ・さつまいも少量(食物繊維で胃排出を緩やかに)
※ いずれも1 日の総カロリー内で配分し、肥満傾向の犬は獣医師と相談して量を調整しましょう。
💡 食事間隔以外の補助的工夫
- 早食い防止食器:胃の急な膨張で吐くケースに
- 食後 30 分〜1 時間は安静:散歩・運動は食後 1 時間以降に
- 水は常に新鮮で飲める状態に(脱水防止)
- 静かで落ち着いた食事環境:複数頭飼育で競争食いが多いケースは食事場所を分ける
膵炎との見分け方は?
BVS は朝の 1 回程度・吐後元気あり、膵炎は連続嘔吐・強い腹痛・元気消失が特徴です。Mansfield[4] や Cridge ら[5] でも、これらのサインがあれば早期検査が推奨されています。
| 鑑別ポイント | 胆汁嘔吐症候群(BVS) | 急性膵炎 |
|---|---|---|
| 典型的な時間帯 | 早朝・空腹時 | 食後数時間〜不規則、人の食事後発症例あり[6] |
| 嘔吐の頻度 | 1 日 1 回程度 | 連続して何度も繰り返す |
| 吐後の元気 | 保たれている | 明らかに元気消失・ぐったり |
| 食欲 | あり | 食欲廃絶・水も嫌がることが多い |
| 腹痛サイン | 原則なし | 祈りのポーズ・腹部圧痛・背中を丸める |
| 下痢 | 原則なし | あり(水様便、ときに血便) |
| 発熱 | 原則なし | あることが多い |
| 確定検査 | 除外診断+食事改善で軽快 | cPLI(犬膵特異的リパーゼ)測定、腹部超音波[5] |
膵炎が疑われたら避けたい行動
- 「お腹が空いているのかも」と食事を与え続ける(症状を悪化させる可能性)
- 人用の胃薬・痛み止めを与える(NSAIDs は膵炎で禁忌のことが多い)
- 家庭での絶食を 24 時間以上引き延ばす(脱水進行)
- 「明日まで様子を見る」と判断を遅らせる(早期介入が予後を左右)
Lem らの 2008 年症例対照研究[6]では、人の食卓食やゴミの拾い食いが急性膵炎発症のオッズ比を有意に上げる結果が報告されています。
クリスマス・お正月・誕生日など人の食事のおすそ分けが起こりやすい時期は、特に黄色嘔吐+元気消失の組み合わせに注意が必要です。膵炎の食事管理の詳細は犬の膵炎の食事管理ガイドもあわせてご覧ください。
黄色嘔吐で避けたい食材と与えやすい食材は?
高脂肪な人の食事は強く避けたい対象。BVS や膵炎リスクと関連が報告されています[4][6]。一方、消化しやすいたんぱく質源(鶏むね・白身魚)と胃排出を緩やかにする少量の野菜は補助的な選択肢になります。
| 分類 | 強く避けたい食材 | 理由 |
|---|---|---|
| 高脂肪 | 揚げ物、バター、生クリーム、チーズ、ベーコン、ソーセージ、唐揚げの皮 | 膵炎発症のオッズ比上昇[6]、胃排出遅延で嘔吐誘発 |
| 強い香辛料 | カレー、唐辛子、コショウ、ニンニク | 胃粘膜刺激・ネギ類は中毒性 |
| 急変食 | 新フードへの急な全切替 | 消化器負担で嘔吐・下痢 |
| 拾い食い | ゴミ・腐敗物・骨 | 膵炎・腸閉塞・中毒のリスク[6] |
⚠️ 「絶対に与えてはいけない」食材
嘔吐の有無に関係なく、以下は中毒性が確立されており絶対に与えてはいけません:ブドウ・レーズン、キシリトール(人工甘味料)、チョコレート・カカオ、ネギ類(玉ねぎ・長ねぎ・ニラ・ニンニク)、マカダミアナッツ、アルコール。誤食時はすぐに動物病院へ連絡しましょう。詳細は犬に絶対あげてはいけない食べ物 15 選へ。
嘔吐後の回復食として比較的与えやすい食材
1 回嘔吐後で元気がある場合、Elwood らの WSAVA ガイドライン[3]に沿った教科書的アプローチでは、6〜12 時間絶食後に消化しやすい少量から再開します。
- 茹で鶏むね(皮なし)+白米:低脂肪・高消化性の定番
- 白身魚(タラ・カレイ)+白米:鶏が合わない子向け
- ふやかしフード少量:いつものフードを温水でふやかし
- かぼちゃ・さつまいも少量:可溶性食物繊維で便調整
- ヤギミルク・経口補水液(少量ずつ):脱水気味なら水分補給に
量は通常の 1/3〜1/2 から、3〜4 回に分けて与え、24〜48 時間で通常食に戻すのが目安です。再嘔吐があれば自宅再開を中止し獣医師に連絡しましょう。
療法食と手作り食、どう判断する?
BVS 単独であれば消化配慮設計の市販フード+スケジュール調整で十分対処可能なケースが多めです。膵炎・IBD・慢性疾患併発時は療法食、長期手作り食は獣医栄養学者の処方が安全です。
| 選択肢 | 向くケース | 留意点 |
|---|---|---|
| ① 消化配慮の市販フード | BVS 単独、軽度の食欲低下、健康なシニア犬 | 低〜中脂質(乾物 12〜16%)、消化性の高いタンパク源、小粒設計を選ぶ |
| ② 療法食(消化器サポート・低脂肪) | 慢性膵炎、IBD、肝胆道系疾患の併発、繰り返す BVS | 獣医師処方が前提。Watson の慢性膵炎レビュー[7]では脂質乾物 15% 以下が一般的 |
| ③ 家庭調理単純食 | 嘔吐後 24〜48 時間の短期回復食 | 長期使用には栄養設計が必要。Larsen らの 2012 年研究[8]では家庭調理レシピの多くで栄養素不足が指摘 |
フード移行は 7〜10 日で段階的に
消化配慮フードへの切替は急がず段階的に。下痢や食欲低下が出たら一段階戻します。
| 期間 | 新フード | 現行フード | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1〜3 日目 | 25% | 75% | 少量混合で香り・味に慣らす |
| 4〜6 日目 | 50% | 50% | 便の様子・嘔吐頻度を記録 |
| 7〜9 日目 | 75% | 25% | 嫌がる場合は前段階に戻す |
| 10 日目〜 | 100% | 0% | 完全切替後にスケジュール調整を継続 |
家庭調理食を長期維持に使う場合は、Larsen らの 2012 年研究[8]でレシピ多くにカルシウム・微量元素不足が指摘されています。ボード認定獣医栄養学者の処方を受けることが安全です。
フード移行の詳細はフード切り替えのタイミングと手順ガイドへ。
シニア犬で気をつけたいことは?
シニア期は黄色嘔吐の背景に慢性疾患が隠れているケースが増えます。Hall と Washabau のレビュー[2]でも、繰り返す嘔吐は単なる空腹嘔吐と決めつけず原因検索が推奨されています。
シニア犬で背景に潜む可能性のある疾患
- 慢性腎臓病(CKD):尿毒症性嘔吐、多飲多尿を併発[2]
- 慢性膵炎:間欠的嘔吐、食後不調、体重減少[7]
- 炎症性腸疾患(IBD):慢性的な嘔吐・下痢の繰り返し
- 肝胆道系疾患:胆嚢粘液嚢腫、肝酵素上昇、黄疸
- 消化管腫瘍:胃・腸のリンパ腫、腺癌など
- 内分泌疾患:副腎皮質機能低下症(アジソン病)、甲状腺疾患
シニア犬の嘔吐で受診時に確認したい検査
Elwood らの WSAVA ガイドライン[3]では、慢性嘔吐や全身症状を伴う嘔吐に対して以下の段階的検査が推奨されています。
- 血液一般・生化学:腎機能・肝機能・電解質・血糖
- 尿検査:腎臓病・糖尿病のスクリーニング
- cPLI / SDMA:膵特異的リパーゼ・腎機能の早期マーカー
- 腹部超音波検査:膵炎・胆嚢・腫瘍の有無
- 必要に応じて X 線・内視鏡・生検
シニア期の食事管理については犬の腎臓病の食事管理ガイドや膵炎の食事管理ガイドもあわせてご覧ください。
WANPAKU 診断 4,161回から見える、消化器悩み
嘔吐・軟便・食欲不振などの消化器悩みは回答の 21.5%(896回)。食欲不振との併発、皮膚悩みとの併発も多く、消化器単独で見るより複合的な観察が役立ちます。
WANPAKU 診断 4,161回のうち、嘔吐・軟便・食欲不振などの消化器に関連する悩みが選択された回答は 896回(21.5%)です。
小型犬では特にチワワ・トイプードル・パピヨン・マルチーズなどで多く報告されています。
4,161回の診断データから見える、消化器悩みの併発パターン
※ WANPAKU 診断システム集計(消化器悩み選択者、2025年9月〜2026年5月)
消化器悩みは食欲不振・皮膚・アレルギーと密接に関連。複数領域を同時に観察すると診察の精度が上がります。
📚 もっと深く:消化器に関連する話題を spoke 記事で
- 膵炎の食事管理ガイド:低脂質食と再発予防の食事設計
- 小型犬の軟便ケアガイド:消化器悩みの隣接トピック
- 腎臓病の食事管理:シニア犬の嘔吐背景に多い CKD
- 犬がご飯を食べない原因と対策:嘔吐後の食欲低下対応
- フード切り替え 7〜10 日プラン:急変防止の段階移行
受診前に整理しておきたいことは?
嘔吐の時間・回数・吐物の色/写真・食事歴・併発症状・基礎疾患を記録しておくと、診察と検査の設計がスムーズになります。
✅ 受診前チェックリスト
- 嘔吐の時間帯・回数(最初の嘔吐から何時間/何回吐いたか)
- 吐物の色・量・内容(黄色/泡/血液混入/フードの有無)— 可能ならスマホで写真を撮影
- 吐く前後の行動(草を食べる/落ち着かない/祈りのポーズ)
- 現在のフード(メーカー・商品名・量)と直近の食事タイミング
- おやつ・ジャーキー・人の食べ物のおすそ分けの有無
- 異物誤飲の心当たり(おもちゃ・骨・ゴミの拾い食い)
- 下痢・発熱・元気消失・水分摂取量・尿量・体重変化
- 基礎疾患・服薬中の薬・既往の検査結果(あれば持参)
- 過去にも同じパターンで吐いたことがあるか/頻度
💰 検査・治療費の目安(参考値)
- 初診+身体検査:3,000〜6,000 円
- 血液検査一般・生化学:5,000〜15,000 円
- cPLI(膵特異的リパーゼ):5,000〜10,000 円
- 腹部超音波検査:5,000〜15,000 円
- X 線(腸閉塞・異物確認):3,000〜8,000 円
- 輸液・制吐剤投与(軽症対応):5,000〜15,000 円
- 入院管理(膵炎等の重症時、1 日):10,000〜30,000 円
※ 動物病院や地域、合併症で大きく変わります。ペット保険の補償範囲も事前に確認しておくと安心です。
よくある質問
犬が黄色い液体を吐くのは何が原因ですか?
もっとも多いのは胆汁嘔吐症候群(BVS:Bilious Vomiting Syndrome)と呼ばれる空腹時嘔吐で、長時間胃が空の状態で十二指腸から胆汁が逆流して胃粘膜を刺激することで起こります。Ferguson らの BVS 20 症例研究[1]では、頻回給餌・就寝前給餌・胃酸低減薬等を組み合わせた治療で多くの症例が改善したと報告されています。早朝に 1 回だけ吐き、その後元気で食欲があるなら BVS の可能性が高めです。ただし黄色い嘔吐は膵炎・異物・胃腸炎・肝胆道系疾患でも起こるため、繰り返す・元気がない場合は獣医師に相談しましょう。
黄色い嘔吐で緊急受診すべきサインは?
1 日 3 回以上吐く、12 時間以上水も飲めない、ぐったりしている、吐物に血が混じる、強い腹痛サイン(背中を丸める・腹部を触ると嫌がる)、発熱、激しい下痢の併発、嘔吐が 24〜48 時間続くケースは Elwood らの WSAVA 系慢性嘔吐レビュー[3]でも早期受診が推奨されています。脱水進行や膵炎・腸閉塞など重篤疾患の可能性があり、自宅で様子を見ず動物病院に連絡することが望ましい状況です。
胆汁嘔吐症候群(BVS)はどう対処しますか?
Ferguson らの BVS 症例研究[1]では、頻回給餌や就寝直前の少量給餌を含む治療で多くの症例が改善したと報告されています。実践的には食事回数を 1 日 2 回から 3〜4 回に分け、夜の最後の食事と朝食の間隔が 10〜12 時間以内に収まるよう設計します。改善が見られない、症状が悪化する場合は他疾患(膵炎・炎症性腸疾患・肝胆道系疾患)の検査を獣医師に相談しましょう。
膵炎との見分け方は?
Mansfield の 2012 年レビュー[4]や Cridge らの 2022 年膵炎レビュー[5]では、急性膵炎の主症状として強い腹痛・繰り返す嘔吐・食欲廃絶・元気消失が挙げられています。BVS は朝に 1 回程度の嘔吐で吐後元気があるのに対し、膵炎は嘔吐が連続し、祈りのポーズ(前肢を伸ばして腰を上げる)など腹痛サインが見られます。確定診断は cPLI(犬膵特異的リパーゼ)測定や腹部超音波が必要なため、繰り返す嘔吐は獣医師に相談しましょう。
黄色嘔吐の犬に避けたい食材は?
Lem らの 2008 年症例対照研究[6]では、ヒトの食卓食やゴミの拾い食いが膵炎発症のオッズ比を大きく上げると報告されています。脂肪の多い人の食事(揚げ物・バター・生クリーム・チーズ・ベーコン等)は黄色嘔吐の繰り返しや膵炎リスクと関連しやすいため強く避けたい対象です。中毒性が確立された食材(ブドウ・レーズン・キシリトール・チョコレート・ネギ類・カカオ)は嘔吐の有無に関係なく絶対に与えてはいけません。
シニア犬で黄色い嘔吐を見たときの注意点は?
Hall と Washabau の胃運動障害レビュー[2]では、シニア期は慢性腎臓病・慢性膵炎・腫瘍・炎症性腸疾患など黄色嘔吐の背景疾患が多様化することが指摘されています。WANPAKU 診断 4,161回でもシニア犬の食欲不振悩みは 20.9% に上り、消化器悩みと併発しやすい傾向が見えます。シニア犬の繰り返す黄色嘔吐は単なる空腹嘔吐と決めつけず、血液検査・尿検査・腹部画像での原因検索を獣医師に相談しましょう。
吐いた後の食事はどう再開すればいい?
Elwood らの WSAVA 系嘔吐レビュー[3]や教科書的アプローチでは、1 回の嘔吐後で全身状態が良ければ 6〜12 時間絶食して胃を休ませ、その後少量の水→消化しやすい少量の食事(茹で鶏むね+白米やふやかしフード)から再開し、24〜48 時間かけて通常食に戻す手順が一般的です。再嘔吐・元気消失があれば自宅再開を中止し獣医師に相談しましょう。仔犬・小型犬は低血糖リスクが高いため絶食時間は短めが安全です。
まとめ
犬が黄色い液体を吐いたとき、多くは胆汁嘔吐症候群(BVS)と呼ばれる空腹時嘔吐です。Ferguson らの BVS 20 症例研究[1]でも、頻回給餌や就寝前給餌・食事回数の分割で改善が報告されています。
一方、繰り返す嘔吐・強い腹痛・元気消失・吐血・激しい下痢の併発は急性膵炎・腸閉塞・中毒など重篤疾患のサインです。Elwood らの WSAVA 系嘔吐レビュー[3]でも早期受診が推奨されています。
黄色い嘔吐の鑑別は次の 4 系統で考えると整理しやすくなります。
- 機能性:BVS
- 炎症性:胃腸炎・膵炎・IBD
- 物理性:異物・閉塞
- 全身性:腎・肝・内分泌
シニア期は背景疾患が多様化するため、Hall と Washabau の胃運動障害レビュー[2]でも丁寧な原因検索が推奨されています。
家庭でできる対処は食事回数の分割と就寝前軽食、避けたい食材は高脂肪な人の食事です。中毒性が確立された食材(ブドウ・レーズン・キシリトール・チョコレート・ネギ類)は嘔吐の有無に関わらず絶対に与えてはいけません。具体的なフード選定や治療方針は、必ずかかりつけ獣医師と一緒に組み立てましょう。
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参考文献を表示(全 8 件)
- Ferguson L, Wennogle SA, Webb CB. "Bilious Vomiting Syndrome in Dogs: Retrospective Study of 20 Cases (2002-2012)." J Am Anim Hosp Assoc. 2016;52(3):157-161. doi:10.5326/JAAHA-MS-6314(犬の胆汁嘔吐症候群 20 症例の後ろ向き研究。頻回給餌・就寝前給餌・胃酸低減薬・運動促進薬・胃保護薬を組み合わせた治療で多くの症例が改善した)
- Hall JA, Washabau RJ. "Diagnosis and treatment of gastric motility disorders." Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1999;29(2):377-395. doi:10.1016/s0195-5616(99)50027-x(犬猫の胃運動障害の診断と治療レビュー。慢性嘔吐の鑑別ではシニア期の慢性腎臓病・腫瘍・IBD など背景疾患の考慮が必要と整理)
- Elwood C, Devauchelle P, Elliott J, et al. "Emesis in dogs: a review." J Small Anim Pract. 2010;51(1):4-22. doi:10.1111/j.1748-5827.2009.00820.x(WSAVA 系の犬の嘔吐レビュー。急性/慢性嘔吐の段階的アプローチを示す)
- Mansfield C. "Acute pancreatitis in dogs: advances in understanding, diagnostics, and treatment." Top Companion Anim Med. 2012;27(3):123-132. doi:10.1053/j.tcam.2012.04.003(犬の急性膵炎の診断・治療の包括的レビュー。早期経腸栄養が予後改善に寄与)
- Cridge H, Lim SY, Algül H, Steiner JM. "New insights into the etiology, risk factors, and pathogenesis of pancreatitis in dogs: Potential impacts on clinical practice." J Vet Intern Med. 2022;36(3):847-864. doi:10.1111/jvim.16437(犬の急性膵炎の病因・危険因子・病態生理に関する 2022 年最新レビュー)
- Lem KY, Fosgate GT, Norby B, Steiner JM. "Associations between dietary factors and pancreatitis in dogs." J Am Vet Med Assoc. 2008;233(9):1425-1431. doi:10.2460/javma.233.9.1425(犬の膵炎と食事因子の症例対照研究。人の食卓食・拾い食いがオッズ比上昇)
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- Larsen JA, Parks EM, Heinze CR, Fascetti AJ. "Evaluation of recipes for home-prepared diets for dogs and cats with chronic kidney disease." J Am Vet Med Assoc. 2012;240(5):532-538. doi:10.2460/javma.240.5.532(犬猫の家庭調理レシピ評価。栄養素不足が広く指摘)