「ラム肉のドッグフードはアレルギーにいいって聞いたけど、本当?」「鶏肉ベースのフードとどう違うの?」そんな疑問を持つ飼い主さんは多いのではないでしょうか。
ラム(仔羊肉)は、ドッグフードの原材料として長い歴史を持つタンパク源です。かつては多くの犬にとって食べ慣れない「ノベルプロテイン」であったため、食物アレルギーの除去食として広く使われてきました。しかし現在ではラムベースのフードが普及し、その位置づけは大きく変わっています[2]。
この記事では、ラム肉の栄養価・アレルギーとの関係の変遷・マトンとの違いから、ラムベースのフードが向いている犬・向かない犬まで、研究データに基づいて詳しく解説します。フード選びの参考にしてください。
ラム肉の栄養価
ラム肉に含まれる主な栄養素
USDA(米国農務省)のFoodData Centralによると、ラム肉(もも肉、赤身、生)100gあたりの栄養成分は以下のとおりです[1]。
| 栄養素 | 100gあたりの含有量 | 犬への期待効果 |
|---|---|---|
| エネルギー | 約206kcal | 活動に必要なエネルギー供給 |
| タンパク質 | 約20g | 筋肉・臓器・被毛の形成と維持 |
| 脂質 | 約14〜16g | エネルギー源・皮膚被毛の健康維持 |
| 亜鉛 | 約4.0mg | 免疫機能・皮膚の健康・細胞分裂 |
| 鉄 | 約1.9mg | 酸素運搬(ヘム鉄として吸収率が高い) |
| ビタミンB12 | 約2.6μg | 神経機能・赤血球の形成 |
| ナイアシン(B3) | 約6.0mg | エネルギー代謝・皮膚の健康 |
| リン | 約188mg | 骨と歯の形成 |
タンパク質:良質なアミノ酸バランス
ラム肉は100gあたり約20gのタンパク質を含み、犬にとって必須の10種類のアミノ酸をバランス良く含有しています。NRC(米国学術研究会議)の「犬と猫の栄養素要求量」によると、成犬は体重1kgあたり1日に約2.62gのタンパク質が最低限必要とされています[3]。ラム肉はこの要件を十分に満たす優良なタンパク源です。
特にラム肉に豊富なリジンやメチオニンは、犬の筋肉維持や被毛の健康に重要な役割を果たすアミノ酸です。タンパク源としての品質は鶏肉や牛肉と同等以上と評価されています。
脂質:やや高めだが良質な脂肪酸を含む
ラム肉の脂質含有量は100gあたり約14〜16gで、鶏むね肉(約2g/100g)と比較するとかなり高めです。一方で、ラム肉の脂肪には共役リノール酸(CLA)やオレイン酸が含まれており、適量であれば犬の皮膚・被毛の健康維持に寄与します。
ただし、脂質が多い分カロリーも高くなるため、ラムベースのフードを選ぶ際は粗脂肪の保証分析値を必ず確認しましょう。脂質管理について詳しくは犬の体重管理ガイドも参考にしてください。
亜鉛・鉄・ビタミンB12:ミネラルとビタミンが豊富
ラム肉が鶏肉や白身魚と比較して特に優れているのが、亜鉛・鉄・ビタミンB12の含有量です。
- 亜鉛(約4.0mg/100g):犬の免疫機能の維持、皮膚のターンオーバー促進、被毛の健康に欠かせないミネラル。亜鉛欠乏は皮膚トラブルの原因にもなります
- 鉄(約1.9mg/100g):ラム肉に含まれる鉄は「ヘム鉄」と呼ばれ、植物性の「非ヘム鉄」と比べて吸収率が2〜3倍高いのが特徴です。酸素を全身に運ぶ赤血球の生成に不可欠です
- ビタミンB12(約2.6μg/100g):神経系の正常な機能維持と赤血球の形成に関わるビタミン。肉類にしか含まれない栄養素で、ラム肉は特に含有量が多い食材です
ラム肉の栄養まとめ
ラム肉は良質なタンパク質に加え、亜鉛・鉄・ビタミンB12が豊富な優秀なタンパク源です。一方で脂質はやや高めのため、カロリー管理が必要な犬には量の調整や低脂肪設計のフード選びが重要です。栄養バランスを重視したい飼い主さんにとって、ラム肉は検討する価値のある選択肢といえるでしょう。
ラム肉とアレルギーの歴史
「ノベルプロテイン」としてのラム肉
犬の食物アレルギーは、特定のタンパク質に対して免疫システムが過剰に反応することで発症します。診断の際には、犬がこれまで食べたことのないタンパク源(ノベルプロテイン)を使った除去食試験が行われます。
1980〜1990年代、北米や日本のドッグフード市場では鶏肉・牛肉が圧倒的に主流でした。多くの犬がラム肉を食べた経験がなかったため、ラムは「新奇タンパク源=ノベルプロテイン」として食物アレルギーの除去食に最適とされ、「ラム&ライス」フォーミュラが一世を風靡しました。
普及による「ノベル」の終焉
しかし、ラム&ライスフォーミュラの人気が高まるにつれ、皮肉なことにラム肉はもはや多くの犬にとって「未経験のタンパク源」ではなくなりました。Mueller et al.(2016)の系統的レビューによると、犬の食物アレルギーの原因タンパク質として、ラム肉は牛肉・乳製品・鶏肉・小麦に次ぐ報告数があります[2]。
つまり、現在のラム肉は「アレルギー対応の特別なタンパク源」ではなく、鶏肉や牛肉と並ぶ一般的なタンパク源のひとつという位置づけに変わっています。食物アレルギーの詳しい仕組みと対策については犬のアレルギー完全ガイドをご覧ください。
現在のノベルプロテインとは
ラムに代わって現在ノベルプロテインとして注目されているのは、鹿肉(ベニソン)・カンガルー・アリゲーター・昆虫タンパクなど、まだ一般的に普及していないタンパク源です。また、加水分解タンパクを用いたフードも、アレルギー対策のアプローチとして広がっています。
ラム肉とアレルギーの注意点
- 「ラム=アレルギーに安全」ではない:現在はラムにアレルギーを持つ犬も報告されている
- 除去食試験は必ず獣医の指導のもとで:自己判断でのフード変更はアレルギー診断を困難にする場合がある
- 初めてラムを食べる犬には有効な場合も:鶏肉・牛肉にアレルギーがあり、ラム未経験の犬であれば候補になる
ラムとマトンの違い
月齢による分類
羊肉は、羊の月齢によって以下のように分類されます。
| 名称 | 月齢の目安 | 肉質の特徴 |
|---|---|---|
| ラム | 生後12ヶ月未満 | 柔らかく、臭みが少ない。脂肪は白く淡泊 |
| ホゲット | 生後12〜24ヶ月 | ラムとマトンの中間的な肉質 |
| マトン | 生後24ヶ月以上 | 風味が強く、脂肪が多い。独特の臭みがある |
ドッグフードでの使い分け
ドッグフードの原材料表示で「ラム」と記載されている場合、基本的には仔羊肉を指します。しかし、AAFCOの原材料定義では羊肉の月齢による厳密な区分は設けられていません[4]。そのため、メーカーの自主基準に依存する部分が大きいのが現状です。
一般的な傾向として、以下の違いがあります。
- プレミアムフード:ニュージーランド産やオーストラリア産の若齢ラムを明示的に使用するケースが多い。「グラスフェッドラム(牧草飼育ラム)」などの品質訴求がある
- 一般〜低価格帯フード:「ラムミール」「ラム肉粉」として加工された原材料が使われることが多く、月齢の明示がないケースもある。コスト面からマトンが混在している可能性もゼロではない
フード選びの際には原材料表示を注意深く確認しましょう。表示の読み方について詳しくはドッグフードの原材料表示の読み方ガイドが参考になります。
ラムミールとは?
「ラムミール」とは、ラム肉から水分と脂肪を除去し、乾燥・粉砕したものです。生のラム肉に比べてタンパク質が凝縮されており(約65〜70%)、原材料表記上では生肉よりもタンパク質の実質含有量が多い場合があります。「ミール=低品質」とは限りませんが、原材料の産地やグレードを明示しているメーカーを選ぶのが安心です。
ラムベースフードの特徴
嗜好性が高い
ラム肉はその独特の風味から、多くの犬にとって嗜好性(食いつき)が高いタンパク源として知られています。特に鶏肉ベースのフードに飽きてしまった犬や、食が細い犬の食欲改善に効果的なケースが多く報告されています。
食いつきの改善方法については食いつきが悪い犬への対策ガイドも参考にしてください。
やや高脂肪の製品が多い傾向
ラム肉は原材料としての脂質がやや高いため、ラムベースのドッグフードは鶏肉ベースや魚ベースのフードに比べて粗脂肪が高めに設計されている製品が多い傾向にあります。
具体的な傾向として、以下のような違いがあります。
| 主原料 | 粗脂肪の一般的な範囲(乾物値) |
|---|---|
| 鶏肉ベース | 10〜16% |
| 魚ベース | 10〜15% |
| ラムベース | 12〜18% |
| 牛肉ベース | 12〜18% |
※上記は一般的な傾向であり、メーカーや製品ごとに大きく異なります。必ず個別の保証分析値を確認してください。
グレインフリーとの組み合わせが多い
ラムベースのフードは、アレルギー対応を訴求する製品が多いことから、穀物不使用(グレインフリー)のフォーミュラと組み合わせて販売されるケースが目立ちます。ラム+ポテト、ラム+サツマイモなどの組み合わせが代表的です。
グレインフリーフードの選び方についてはグレインフリードッグフードの選び方ガイドで詳しく解説しています。
ラムが向いている犬・向かない犬
ラムが向いている犬
- 鶏肉・牛肉にアレルギーがあり、ラムが未経験の犬:ノベルプロテインとして除去食に使える可能性がある(獣医の指導のもとで)
- 食いつきが悪い犬:ラムの風味は嗜好性が高く、食欲の改善が期待できる
- 皮膚・被毛のコンディションを整えたい犬:亜鉛・鉄・良質な脂肪酸が皮膚の健康をサポート
- 活動量の多い犬:やや高カロリーのため、運動量が多い犬のエネルギー需要に適している
ラムが向かない犬・注意が必要な犬
以下の犬にはラムベースのフード選びに注意が必要です
- 膵炎の犬:ラムは脂質が高めのため、膵炎の犬には脂肪量の負担が大きい。低脂肪フード(粗脂肪10%以下)が推奨される[3]
- 肥満・体重管理中の犬:高カロリーなラムベースフードはカロリーオーバーの原因に。低脂肪設計の製品を選ぶか、給餌量を厳密に管理すること
- ラムにアレルギーがある犬:すでにラムを食べてアレルギー症状(かゆみ、消化器症状など)が出た犬は当然避けるべき
- 腎臓病の犬:タンパク質やリンの摂取制限がある犬は、主治医の指示に基づいたフード選びが最優先
- シニア犬で活動量が少ない犬:必要カロリーが低下しているため、高脂肪のラムベースフードでは太りやすい
膵炎の犬の食事管理について詳しくは犬の膵炎と食事管理ガイドを参考にしてください。
よくある質問
ラム肉のドッグフードはアレルギー対策になりますか?
かつてラム肉は多くの犬にとって未経験の「ノベルプロテイン(新奇タンパク源)」であったため、食物アレルギーの除去食として広く使われていました。しかし現在はラムベースのフードが普及し、ラムにアレルギーを持つ犬も報告されています[2]。すでにラムを食べ慣れている犬にとっては、アレルギー対策としての特別な優位性はありません。初めてラムを試す犬であれば、除去食試験の候補タンパク源として有効な場合があります。
ラムとマトンの違いは何ですか?ドッグフードではどちらが使われますか?
ラムは生後1年未満の仔羊の肉、マトンは生後2年以上の成羊の肉です。ラムは肉質が柔らかく臭みが少ない一方、マトンは風味が強く脂肪が多い傾向があります。ドッグフードでは「ラム」表記が一般的ですが、AAFCOの原材料定義では月齢による厳密な区別はなく、メーカーによって使い分けの基準が異なります[4]。価格面ではマトンのほうが安価なため、低価格帯のフードではマトンが使われていることもあります。
ラム肉のドッグフードは膵炎の犬に与えても大丈夫ですか?
注意が必要です。ラム肉は鶏むね肉や白身魚に比べて脂質含有量が高く(100gあたり約14〜16g)、ラムベースのドッグフードも脂肪含量がやや高めの製品が多い傾向にあります。膵炎の犬は脂肪の消化に負担がかかるため、低脂肪のフードが推奨されます。ラムベースのフードを与えたい場合は、粗脂肪10%以下の製品を選び、かかりつけの動物病院に相談してから判断してください。詳しくは犬の膵炎と食事管理ガイドをご覧ください。
ラム肉の独特なにおいが苦手な犬はいますか?
犬は一般的にラム肉の風味を好む傾向があり、嗜好性は高いタンパク源のひとつです。ただし、鶏肉や魚ベースのフードに慣れている犬がラムベースのフードに切り替えた際、独特の風味を敬遠するケースもまれにあります。そのような場合は、既存のフードに少量ずつ混ぜて7〜10日かけて段階的に切り替えることで、スムーズに移行できることが多いです。フードの切り替え方法についてはフードの切り替えタイミングガイドも参考にしてください。
まとめ
ラム肉は、良質なタンパク質・亜鉛・鉄・ビタミンB12が豊富な優秀なタンパク源です[1]。嗜好性も高く、多くの犬が好んで食べるフードの原材料として長く親しまれてきました。
かつては食物アレルギーの除去食として「ノベルプロテイン」の代名詞でしたが、現在は普及により鶏肉・牛肉と並ぶ主流タンパク源のひとつに位置づけられています[2]。「ラム=アレルギー対策」という認識は過去のものとなりつつあり、ラム未経験の犬でなければ特別なアレルギー対応効果は期待できません。
一方で、脂質がやや高いというデメリットもあります。膵炎や肥満傾向の犬には脂肪含量を慎重に確認する必要があり、すべての犬に無条件で推奨できるわけではありません。
ラムベースのフードを選ぶ際には、愛犬のアレルギー歴・体重・活動量・持病の有無を考慮し、保証分析値の粗脂肪を確認したうえで判断しましょう。どのタンパク源が愛犬に最適か迷ったら、まずは無料のフード診断を試してみてください。
参考文献を表示(全4件)
- USDA FoodData Central. "Lamb, leg, whole (shank and sirloin), separable lean only, trimmed to 1/4" fat, choice, raw." FDC ID: 172536.
- Mueller RS, Olivry T, Prélaud P. "Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (2): common food allergen sources in dogs and cats." BMC Vet Res. 2016;12:9. DOI: 10.1186/s12917-016-0633-8
- National Research Council. "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." National Academies Press, 2006.
- Association of American Feed Control Officials (AAFCO). "Understanding Pet Food: Ingredient Definitions."