ドッグフードの原材料に「チキンミール」「家禽副産物」と書かれているのを見て、「これって大丈夫なの?」と不安になったことはありませんか。ネット上では「ミール=粗悪品」「副産物=廃棄物」といった情報が広まっていますが、その多くは正確ではありません。
この記事では、AAFCO(Association of American Feed Control Officials/米国飼料検査官協会)の公式定義に基づいて、「ミール」「副産物」「エキス」「ダイジェスト」の正確な意味を解説します[1]。さらに、原材料表示から品質を見分けるための具体的なポイントもお伝えします。
感情的な情報ではなく、ファクト(事実)に基づいて愛犬のフードを選べるようになることが、この記事の目標です。
「チキンミール」とは – AAFCO公式定義
AAFCOが定める「チキンミール」の定義
AAFCO(米国飼料検査官協会)の公式定義集によると、チキンミール(Chicken Meal)とは以下のように定義されています[1]。
AAFCO定義:Chicken Meal
鶏の肉と皮の組み合わせをレンダリング(加熱処理・脱脂・乾燥)して得られた乾燥粉末製品。骨を含む場合もあるが、羽毛、頭、足、内臓は含まない。カルシウム含有量がリン含有量の2.2倍を超えてはならず、リン含有量は4%以上であること。また、ペプシン不溶物が12%を超えてはならない。
つまり、チキンミールとは「鶏肉を高温で加熱し、水分と脂肪の大部分を除去して乾燥・粉末化したもの」です。レンダリングは食品産業でも広く使われている加工技術であり、それ自体が品質の低さを意味するものではありません。
重要なのは、水分を除去することで、タンパク質が重量あたりに濃縮されるという点です。これは栄養面で大きな意味を持ちます。
「チキン」と「チキンミール」の成分比較
ドッグフードの原材料で「チキン(鶏肉)」と「チキンミール」が並んでいる場合、一見すると「チキン」のほうが高品質に思えます。しかし、水分含有量を考慮すると、実質的なタンパク質量は逆転することをご存じでしょうか[2]。
| 項目 | 生チキン(鶏肉) | チキンミール |
|---|---|---|
| 水分含有量 | 約70〜75% | 約5〜10% |
| タンパク質(原料そのまま) | 約18〜20% | 約60〜65% |
| 脂質 | 約5〜10% | 約10〜12% |
| 灰分(ミネラル分) | 約1% | 約14〜18% |
| 100gあたり実質タンパク量 | 約18〜20g | 約60〜65g |
原材料表示は重量順に記載されるため、水分を多く含む「チキン」は上位に来やすくなります。しかし、加工後に水分が飛ぶと、実際のフードに含まれるチキン由来のタンパク質は見た目の順位ほど多くない可能性があります。一方、チキンミールは最初から乾燥状態であるため、表示された重量がほぼそのまま最終製品に反映されます。
このことから、「チキンミール」が原材料の上位にあるフードは、実質的に動物性タンパク質が豊富である可能性が高いと言えます。「生肉が先に書いてあるから高品質」とは一概に言えないのです。
ポイント
「チキンミール」は水分を除去してタンパク質を濃縮した原材料です。生チキンの約3倍のタンパク質を含むため、タンパク源として効率的な原材料と言えます。「ミール=粗悪」というイメージは、定義を正しく理解すれば誤解であることがわかります。
「副産物(by-product)」とは
AAFCOが定める「副産物」の定義
「副産物」という言葉にネガティブな印象を持つ方は多いですが、AAFCOの定義を確認すると、その実態は想像とは異なるかもしれません[1]。
AAFCO定義:Poultry By-Products(家禽副産物)
食鳥処理された家禽の食用に適した、レンダリングされていない清潔な部位。頭、足、内臓(レバー、心臓、砂嚢、腸など)を含む。羽毛は、加工中に不可避的に混入するものを除き、含まない。
ここで注目すべきは、副産物に含まれる「内臓」の栄養価です。レバー(肝臓)はビタミンA・鉄分・亜鉛が極めて豊富であり、心臓はタウリンやCoQ10の優れた供給源です。人間の食文化でもモツや内臓肉は世界中で食されており、栄養学的に価値の低い部位ではありません。
NRC(米国学術研究会議)の「犬と猫の栄養素要求量(2006年)」でも、内臓肉は犬にとって良質な栄養源として記載されています[2]。
「副産物ミール」と「副産物」の違い
「副産物」と「副産物ミール」は似た名前ですが、加工状態が異なります。
| 項目 | 家禽副産物 (Poultry By-Products) | 家禽副産物ミール (Poultry By-Product Meal) |
|---|---|---|
| 加工状態 | レンダリングされていない(生・冷凍) | レンダリング済み(乾燥粉末) |
| 水分含有量 | 約60〜70% | 約5〜10% |
| 含まれる部位 | 頭、足、内臓(レバー、心臓、砂嚢等) | 同左の部位をレンダリング処理したもの |
| 除外される部位 | 羽毛(不可避的混入を除く) | 羽毛、くちばし、ひづめ等 |
| タンパク質含有量 | 約15〜20% | 約55〜65% |
| 主な用途 | ウェットフード・缶詰 | ドライフード(キブル) |
チキンミールと同様に、副産物ミールもレンダリングによって水分を除去しタンパク質を濃縮したものです。副産物ミールの方がドライフードでよく使用されます。
「副産物」の品質はメーカー次第
AAFCOの定義は原材料の「カテゴリー」を示すものであり、個々のメーカーが使用する副産物の品質まで保証するものではありません。同じ「家禽副産物ミール」でも、新鮮なレバーや心臓を中心に使用するメーカーと、品質にばらつきがあるメーカーでは、実際の栄養価に差が出る可能性があります。だからこそ、メーカーの情報開示姿勢を確認することが重要です。
「エキス」「ダイジェスト」とは
ドッグフードの原材料表示には、「ミール」「副産物」以外にも紛らわしい用語が登場します。代表的な「エキス」と「ダイジェスト」について、それぞれのAAFCO定義を確認しましょう[1]。
「○○エキス」とは
エキス(Extract)は、動物や植物の組織から水や溶媒を使って抽出された成分です。ドッグフードでは主に「チキンエキス」「ビーフエキス」などの形で使用されます。
エキスの主な役割は風味の付与(フレーバリング)です。フードの嗜好性を高めるために少量添加されることが多く、主要なタンパク源としての役割は限定的です。原材料表示の下位に記載されている場合は、風味付けとしての添加と考えてよいでしょう。
「○○ダイジェスト」とは
AAFCO定義:Animal Digest(動物性ダイジェスト)
化学的および/または酵素的な加水分解によって得られた動物組織の加工物。ただし、毛・角・歯・ひづめ・羽毛は、加工中に不可避的に混入するものを除き、使用してはならない。風味付け(フレーバー)を目的として使用される。
ダイジェストは、動物の組織を酵素や酸で分解(消化=digest)して得られるペプチドやアミノ酸の混合物です。人間の食品産業でも「酵素分解物」として広く利用されている技術です。
ドッグフードにおけるダイジェストの主な目的は嗜好性の向上です。特にドライフードの表面にダイジェストをコーティングすることで、犬の食いつきを改善する効果があります。
用語の整理:一覧テーブル
| 用語 | 加工方法 | 主な役割 | タンパク源としての寄与 |
|---|---|---|---|
| ミール | レンダリング(加熱・脱脂・乾燥) | 主要タンパク源 | 高い(タンパク質60〜65%) |
| 副産物 | 未加工(生・冷凍) | タンパク源・栄養源 | 中程度(水分が多い) |
| 副産物ミール | 副産物をレンダリング処理 | 主要タンパク源 | 高い(タンパク質55〜65%) |
| エキス | 水・溶媒で抽出 | 風味付け | 低い(少量添加) |
| ダイジェスト | 酵素・酸で加水分解 | 嗜好性向上 | 低い(少量添加) |
品質の見分け方 – 原材料表示の読み方
ここまでの解説で、「ミール」や「副産物」が必ずしも粗悪品ではないことをご理解いただけたと思います。では、実際にどのように品質を見分ければよいのでしょうか。最も重要なポイントは、動物性タンパク源が特定されているかどうかです。
動物種の特定レベルによる品質評価
| 原材料表示 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| チキンミール ラムミール サーモンミール | 信頼度:高 | 動物種が明確に特定されている。トレーサビリティが確保され、アレルギー管理が可能 |
| 家禽ミール (Poultry Meal) | 信頼度:やや低 | 「家禽」は鶏・七面鳥・アヒルなどを含む総称。具体的にどの鳥類かが不明確 |
| ミートミール (Meat Meal) | 信頼度:低 | AAFCOの定義上、哺乳動物由来であることしかわからない。牛・豚・羊など、具体的な動物種が不明確[1] |
| 動物性油脂 (Animal Fat) | 信頼度:低 | 由来する動物種が特定されない。品質のばらつきが大きい可能性 |
原材料表示チェックの5つのポイント
愛犬のドッグフードを選ぶとき、原材料表示で以下のポイントを確認しましょう。
-
最初の5つの原材料に注目する
原材料は重量順に記載されるため、最初の5つがフードの大部分を占めます。ここに良質な動物性タンパク源(チキン、チキンミール、サーモンなど)が含まれているかを確認してください。 -
動物種が明記されているか
「チキンミール」「ラムミール」のように特定されていれば信頼度が高く、「ミートミール」「家禽ミール」のように曖昧な場合は注意が必要です。 -
複数のタンパク源が使われているか
チキンミール+魚ミールなど、複数の良質なタンパク源を組み合わせたフードは、アミノ酸バランスが良好な傾向があります[2]。 -
分割表記に注意する
同じ穀物を「コーングルテンミール」「コーンスターチ」「コーン」のように分割して記載すると、個々の順位は下がりますが、合計するとトウモロコシ由来の原料が最大量になる場合があります。 -
メーカーの情報開示を確認する
公式サイトで原料の産地や品質基準を公開しているメーカーは、透明性の面で信頼度が高いと言えます。フード選びに迷ったら、フード診断もぜひご活用ください。
なお、日本国内で販売されるペットフードは、ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)により、原材料の表示義務と安全基準が定められています[3]。有害物質の上限値が設定され、定期的な検査も行われているため、日本で正規に流通しているフードには一定の安全性が確保されています。
「ヒューマングレード」表記について
「ヒューマングレード(人間が食べられる品質)」という表記は、AAFCOの公式な定義用語ではありません。マーケティング用語として使われることが多く、法的な規制や統一基準は確立されていません。この表記だけで品質を判断するのではなく、具体的な原材料の内容を確認することが重要です。愛犬に合ったフードの選び方については、ドッグフード選びの基本ガイドも参考になります。
よくある誤解と真実
ネット上で広まっている「ミール」「副産物」に関する代表的な誤解と、AAFCO定義や研究に基づく事実を対比してまとめました[1][4]。
| よくある誤解 | 事実(AAFCO定義・研究に基づく) |
|---|---|
| 「ミール」は廃棄物を使っている | チキンミールはAAFCO定義で「鶏の肉と皮」を原料とし、羽毛・頭・足・内臓は除外されている。レンダリングは水分除去のための一般的な食品加工技術[1] |
| 「副産物」には羽毛やひづめが入っている | AAFCOの定義で羽毛・くちばし・ひづめは明確に除外されている。副産物にはレバー・心臓など栄養価の高い部位が含まれる[1] |
| 「生肉」表記のフードのほうが必ず高品質 | 生肉は水分を約70%含むため、乾燥後の実質タンパク量はミールより少ない場合がある。表示の順位だけで品質は判断できない[2] |
| 「ヒューマングレード」なら安心 | AAFCOの公式定義用語ではなく、法的な統一基準はない。マーケティング用語として使われることが多い |
| ミールは消化が悪い | Thompson(2008)の研究によると、レンダリングされた肉粉(ミール)の消化率は適切に加工されていれば80%以上であり、生肉と大きな差はない[4] |
| 日本のペットフードは無法地帯 | 2009年施行のペットフード安全法により、原材料表示の義務化、有害物質の上限値設定、製造・輸入業者の届出制度が定められている[3] |
上記のように、多くの「常識」とされている情報が、実際のAAFCO定義や研究とは異なっています。愛犬のフード選びでは、イメージではなくファクト(事実)に基づいた判断を心がけましょう。原材料についてさらに詳しく学びたい方は、ドッグフードのタンパク源ガイドもおすすめです。
よくある質問
「チキンミール」は危険な原材料ですか?
いいえ、チキンミールは危険な原材料ではありません。AAFCOの定義では、チキンミールは鶏の肉と皮をレンダリング(加熱・脱脂・乾燥)して粉末にしたもので、羽毛・頭・足・内臓は含まれません。水分が約10%まで除去されているため、生の「チキン」よりもタンパク質が濃縮されており、同じ重量あたりのタンパク質含有量はおよそ3倍になります。動物種が明記された「チキンミール」であれば、品質の高いタンパク源として評価できます。
「副産物(by-product)」にはどんな部位が含まれますか?
AAFCOの定義では、家禽副産物(Poultry By-Products)には内臓(レバー、心臓、砂嚢など)、首、足などの食用可能な部位が含まれます。羽毛、くちばし、ひづめなどは明確に除外されています。レバーや心臓は栄養価が非常に高い部位であり、副産物=低品質とは限りません。ただし、品質にばらつきが出やすいため、動物種が明記されているかどうかが品質判断の重要なポイントです。
「ミートミール」と「チキンミール」の違いは何ですか?
最大の違いは原料となる動物種が特定されているかどうかです。「チキンミール」は鶏肉のみから製造されたことが明確ですが、「ミートミール」はAAFCOの定義上、牛・豚・羊などの哺乳動物に由来するものの、具体的にどの動物の肉が使われているか不明確です。動物種が特定されない原材料は、品質の一貫性やアレルギー管理の面で不利になるため、一般的にはチキンミールやラムミールのように動物種が明記された原材料のほうが信頼性が高いと判断されます。
原材料表示で品質の良いドッグフードを見分けるコツはありますか?
原材料表示で品質を見分ける最も重要なポイントは、動物性タンパク源が特定されているかどうかです。「チキンミール」「ラムミール」「サーモンミール」のように動物種が明記されていれば、原料のトレーサビリティが確保されています。一方、「ミートミール」「動物性油脂」「家禽ミール」のように動物種が不明確な表記は、品質のばらつきが大きくなるリスクがあります。また、原材料の最初の5つに注目し、良質な動物性タンパク源が上位にあるかどうかも重要な判断基準です。フード選びに迷ったらフード診断で愛犬に合った商品を探すこともできます。
まとめ
この記事では、ドッグフードの原材料表示でよく見かける「ミール」「副産物」「エキス」「ダイジェスト」の正確な意味を、AAFCOの公式定義に基づいて解説しました[1]。
最も重要なポイントをまとめると、以下の3つです。
- 「ミール=粗悪」は誤解 – チキンミールは鶏肉を乾燥・濃縮した高タンパク原材料であり、生チキンよりも実質タンパク量が多い
- 「副産物=廃棄物」は誤解 – レバーや心臓など栄養価の高い食用部位を含み、羽毛やひづめはAAFCO定義で除外されている
- 品質判断の鍵は「動物種の特定」 – 「チキンミール」のように動物種が明記されたものを選び、「ミートミール」のように不明確なものには注意する
ネット上の感情的な情報に振り回されるのではなく、AAFCO定義やペットフード安全法[3]などの公的情報に基づいて、冷静にフードを評価する力を身につけることが、愛犬の健康を守る最善の方法です。
原材料表示の読み方がわかれば、「このフードは本当に愛犬に合っているのか」を自分自身で判断できるようになります。ぜひ今日から、愛犬のフードの原材料をチェックしてみてください。
参考文献を表示(全4件)
- AAFCO. "Official Publication - Ingredient Definitions." Association of American Feed Control Officials.
- National Research Council. "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." National Academies Press, 2006.
- 環境省. 「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」
- Thompson A. "Ingredients: Where Pet Food Starts." Topics in Companion Animal Medicine. 2008;23(3):127-132.