「りんごを食べていたら愛犬がおねだりしてきた…犬にりんごをあげても大丈夫?」そんな疑問を持つ飼い主さんは多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、りんごの果肉は犬が食べても安全な果物です。ASPCA(米国動物虐待防止協会)の有毒食品リストにもりんごの果肉は含まれていません[1]。
ただし、りんごの種と芯には「アミグダリン」というシアン化合物の前駆体が含まれており、犬に与えてはいけません。この記事では、研究データに基づいて、犬にりんごを安全に与えるための適量・与え方・注意点を詳しく解説します。
りんごの栄養素と犬への効果
りんごに含まれる主な栄養素
USDA(米国農務省)のFoodData Centralによると、皮つきの生りんご100gあたりの栄養成分は以下のとおりです[3]。
| 栄養素 | 100gあたりの含有量 | 犬への期待効果 |
|---|---|---|
| エネルギー | 56kcal | 低カロリーなおやつに最適 |
| ビタミンC | 4.6mg | 抗酸化作用・免疫機能のサポート |
| 食物繊維 | 2.4g | 腸内環境の改善(ペクチンが豊富) |
| カリウム | 107mg | 筋肉・心臓機能の維持 |
| ビタミンA | 3μg RAE | 皮膚・被毛の健康維持 |
| ポリフェノール | 約200mg(品種により変動) | 抗酸化・抗炎症作用[5] |
| 糖質 | 13.8g | (バナナの約6割で低糖質) |
ビタミンC:抗酸化作用で老化予防
犬は体内でビタミンCを合成できますが、ストレスや加齢によって合成量が低下することが知られています。りんごに含まれるビタミンCは、体内の活性酸素を除去する抗酸化作用があり、シニア犬の健康維持に役立ちます[4]。
食物繊維(ペクチン):腸内環境を整える
りんごの食物繊維の特徴は、水溶性食物繊維の「ペクチン」が豊富なことです。ペクチンは腸内で善玉菌のエサとなるプレバイオティクスとして働き、腸内フローラのバランスを整えます。また、ペクチンには便の水分量を調節する作用があり、下痢と便秘の両方に役立つとされています。
ポリフェノール:強力な抗酸化成分
Veberic et al.(2005)の研究によると、りんごにはプロシアニジン、ケルセチン、エピカテキンなど多種類のポリフェノールが含まれていることが報告されています[5]。これらのポリフェノールには強い抗酸化作用があり、細胞の酸化ストレスを軽減する働きがあるとされています。
低カロリー:ダイエット中のおやつにも
りんごは100gあたり約56kcalと、バナナ(89kcal/100g)の約6割のカロリーしかありません。糖質も13.8gとバナナ(22.8g)より少なく、体重管理中の犬のおやつとして適しています。カロリー制限中のおやつ選びについては犬の体重管理ガイドも参考にしてください。
りんごの栄養まとめ
りんごはビタミンC・食物繊維(ペクチン)・ポリフェノールが豊富で、犬の健康に役立つ栄養素を多く含んでいます。しかも低カロリー・低糖質で、バナナやさつまいもと比べても太りにくいおやつです。ぶどうやレーズン、玉ねぎのように犬に有毒な成分は果肉には含まれていません[2]。ただし、種と芯には注意が必要です。
種と芯の危険性
アミグダリンとは?
りんごの種には「アミグダリン」という青酸配糖体が含まれています。アミグダリン自体は毒ではありませんが、犬が種を噛み砕いて摂取すると、体内の酵素によって分解され、シアン化水素(青酸)が生成されます[2]。
Cortinovis & Caloni(2016)の研究レビューでは、りんご・さくらんぼ・桃・梅などバラ科の果物の種子に含まれるシアン化合物の危険性が報告されています[2]。
少量なら大丈夫?
りんごの種1粒に含まれるアミグダリンの量は微量であり、数粒を誤って食べた程度で深刻な中毒症状が出る可能性は低いとされています。しかし、以下の点から習慣的に与えることは絶対に避けるべきです。
- 蓄積リスク:少量でも継続的に摂取すると体内に蓄積される可能性がある
- 小型犬は特に注意:体重あたりの影響が大きく、少量でも症状が出やすい
- 芯にも含まれる:種だけでなく、芯の部分にもアミグダリンが含まれている
シアン化水素中毒の症状
万が一、大量の種を摂取した場合に出る可能性のある症状は以下のとおりです。
- 呼吸困難・過呼吸
- 粘膜の充血(歯茎がレンガ色に)
- 瞳孔散大
- 嘔吐・下痢
- ふらつき・痙攣
種を食べてしまった場合の対処法
- 数粒程度:多くの場合は問題ないが、24時間は様子を観察する
- 大量に食べた場合:速やかに動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰ぐ
- 症状が出た場合:呼吸困難やふらつきが見られたら、直ちに動物病院を受診
犬に危険な食べ物の一覧は犬に危険な食べ物ガイドでも確認できます。
皮ごとあげてOK?
皮にはポリフェノールが豊富
結論から言うと、りんごの皮は犬に与えても安全です。むしろ、りんごの皮には果肉の約4倍ものポリフェノールが含まれており、栄養面では皮ごと与えるのがおすすめです[5]。
Veberic et al.(2005)の研究では、りんごの皮にはプロシアニジン、ケルセチン、エピカテキンなどのフェノール化合物が高濃度で含まれていることが確認されています。これらの成分は抗酸化作用・抗炎症作用を持ち、犬の健康維持に寄与する可能性があります。
農薬が心配なら水洗いを
「皮に農薬が残っているのでは?」と心配する飼い主さんもいるかもしれません。以下の方法で農薬を効果的に除去できます。
- 流水で30秒以上洗う:表面の残留農薬の多くはこれで除去可能
- 重曹水に浸ける:水1Lに重曹大さじ1を溶かし、2分ほど浸けてから水洗い
- スポンジで表面をこする:ワックスや付着した汚れも除去できる
国産のりんごは残留農薬基準が厳しく管理されているため、流水でしっかり洗えば基本的に問題ありません。それでも心配な場合は、皮をむいて果肉だけを与えても栄養は十分に摂取できます。
皮ごと与える際の注意点
皮ごと与える場合は、以下の点に気をつけましょう。
- 薄くスライスする:皮つきの大きな塊は喉に詰まる危険がある
- 消化が弱い犬は様子を見て:皮の食物繊維が負担になる場合は、むいて与える
- 子犬やシニア犬:消化力が弱い場合は皮をむくか、すりおろして与える
体重別の適量目安
「1日の総カロリーの10%以内」が基本ルール
犬のおやつの適量は、1日の総摂取カロリーの10%以内が推奨されています[4]。りんごは100gあたり約56kcalなので、バナナ(89kcal/100g)よりも多めに与えることができます。体重ごとの目安量を下表にまとめました。
| 体重 | 1日の必要カロリー目安 | おやつ上限(10%) | りんごの適量(目安) |
|---|---|---|---|
| 3kg(超小型犬) | 約200kcal | 約20kcal | 約35g(薄切り2枚) |
| 5kg(小型犬) | 約300kcal | 約30kcal | 約50g(薄切り3枚) |
| 10kg(中型犬) | 約500kcal | 約50kcal | 約90g(薄切り5〜6枚) |
| 20kg(大型犬) | 約900kcal | 約90kcal | 約160g(約1/2個) |
| 30kg(大型犬) | 約1,200kcal | 約120kcal | 約210g(約2/3個) |
※上記は避妊・去勢済みの成犬が標準的な活動量の場合の目安です。子犬やシニア犬、持病のある犬は個別に調整が必要です。愛犬の正確なカロリー計算については小型犬のカロリー計算ガイドも参考にしてください。
りんご vs バナナ:おやつとしての比較
- カロリー:りんご56kcal vs バナナ89kcal(りんごが約37%低い)
- 糖質:りんご13.8g vs バナナ22.8g(りんごが約40%少ない)
- 食物繊維:りんご2.4g vs バナナ2.6g(ほぼ同等)
体重管理中の犬には、りんごのほうがカロリー・糖質ともに低くておすすめです。バナナとの詳しい比較は犬にバナナは大丈夫?もご覧ください。
りんごの与え方
りんごの安全な与え方を4パターンご紹介します。愛犬の好みや体質に合わせて試してみてください。
1. 薄くスライスして与える
最もシンプルで安全な与え方です。芯と種を取り除いたあと、5mm〜1cm程度の薄さにスライスして与えましょう。シャキシャキとした食感が犬の食いつきを促します。
- 超小型犬(3kg以下):5mm角のさいの目切り
- 小型犬(3〜10kg):薄いくし切り1〜2枚
- 中〜大型犬(10kg以上):くし切り2〜3枚
2. すりおろして与える
消化器官が未発達な子犬や、歯が弱くなったシニア犬には、すりおろしたりんごがおすすめです。消化吸収がよくなり、ペクチンの効果もより発揮されやすくなります。離乳食のトッピングとしても使えます。
3. 冷凍りんごでひんやりおやつ
りんごを薄くスライスして冷凍すれば、夏にぴったりのひんやりおやつになります。冷たい食感が犬の興味を引き、暑い日のクールダウンにも役立ちます。
- りんごを薄切りにし、種と芯を完全に取り除く
- クッキングシートを敷いたバットに並べる
- 冷凍庫で2〜3時間凍らせる
- 凍ったらジップ袋に移し替えて保存(2週間が目安)
4. ドッグフードへのトッピング
いつものフードにすりおろしたりんごや小さくカットしたりんごを少量トッピングすることで、食いつきが悪い犬の食欲アップが期待できます。りんごの甘い香りが犬の食欲を刺激します。
りんごを与えるときのチェックリスト
- 種と芯を完全に取り除いたか
- 愛犬の体格に合ったサイズにカットしたか
- 1日のおやつカロリーの範囲内か
- 初めての場合、少量からスタートしているか
- 皮ごと与える場合、しっかり水洗いしたか
- 持病(糖尿病・腎臓病など)がないか確認したか
こんな犬にはりんごを控えて
りんごは多くの犬に安全な食品ですが、以下に該当する犬には与えないか、かかりつけの動物病院に相談してからにしましょう。
糖尿病の犬
りんごは100gあたり糖質約13.8gを含んでいます。バナナに比べれば低糖質ですが、糖尿病の犬は血糖値のコントロールが重要なため、甘い果物をおやつとして与えることは血糖値の変動リスクがあります。糖尿病と診断されている犬には、りんごを含む果物を与える前に必ず獣医師に相談してください。
腎臓病の犬
りんごのカリウム含有量(107mg/100g)はバナナ(358mg/100g)と比べて少ないものの、腎臓病の犬はカリウムの排出能力が低下していることが多いため注意が必要です[4]。腎臓に疾患がある犬にりんごを与える場合は、必ずかかりつけの動物病院に相談しましょう。
消化器が弱い犬
りんごの食物繊維(特に皮に多い不溶性食物繊維)は、消化器が弱い犬にとっては負担になる場合があります。初めて与えた後に軟便・下痢が続く場合は、量を減らすか、皮をむいてすりおろして与えてください。食物アレルギーが心配な飼い主さんは、犬のアレルギー完全ガイドもあわせてご覧ください。
りんごを控えるべき犬
- 糖尿病:血糖値の変動リスク
- 腎臓病:カリウム排出能力の低下
- 消化器が弱い犬:食物繊維による下痢や軟便
- アレルギー体質:バラ科アレルギーの犬は注意
- 歯のトラブル:硬いりんごが歯を傷める可能性あり
歯の健康が気になる犬には、犬のデンタルヘルスと食事ガイドも参考にしてください。
よくある質問
犬にりんごを毎日あげても大丈夫ですか?
適量であれば毎日与えても問題ありません。りんごは100gあたり約56kcalとバナナなどに比べて低カロリーですが、糖質は約14g含まれます。おやつは1日の総摂取カロリーの10%以内が目安です。体重5kgの小型犬であれば1日30〜40g(薄切り2〜3枚)程度を目安にしましょう。毎日与える場合は、他のおやつを控えるか主食の量を調整してください。
犬がりんごの種を食べてしまいました。どうすればいいですか?
りんごの種にはアミグダリンというシアン化合物の前駆体が含まれていますが、数粒程度を誤って食べた場合、深刻な中毒症状が出る可能性は低いです。ただし、嘔吐・下痢・元気がない・呼吸が荒いなどの症状が見られた場合は、速やかに動物病院を受診してください。習慣的に種を与え続けることは絶対に避けてください。
りんごの皮は犬にあげても大丈夫ですか?
はい、りんごの皮は犬に与えても安全です。むしろ皮にはポリフェノール(プロシアニジンやケルセチンなど)が果肉の約4倍含まれており、抗酸化作用が期待できます[5]。農薬が気になる場合は、流水で30秒以上しっかり洗うか、重曹水(水1Lに重曹大さじ1)に2分ほど浸けてから水洗いすると効果的です。
子犬にりんごをあげても大丈夫ですか?
離乳が完了した生後4ヶ月以降の子犬であれば、少量のりんごを与えることができます。ただし、子犬は消化器官が未発達のため、すりおろしたりんごを小さじ1杯程度から始めてください。24時間ほど様子を観察し、下痢や嘔吐がなければ少しずつ量を増やしていけます。皮は消化しにくい場合があるので、子犬にはむいて与えるのが安心です。
まとめ
りんごの果肉は犬にとって安全な果物であり、ビタミンC・食物繊維(ペクチン)・ポリフェノールなど有用な栄養素を豊富に含んでいます[3]。しかも100gあたり約56kcalと低カロリーで、体重管理中の犬にもおすすめできるおやつです。
ただし、種と芯にはアミグダリン(シアン化合物の前駆体)が含まれているため、必ず取り除いてから与えてください[2]。皮にはポリフェノールが豊富に含まれているので、しっかり水洗いした上で皮ごと与えるのがおすすめです[5]。
体重5kgの小型犬で1日30〜40g程度を目安に、薄くスライスするかすりおろして与えてください。糖尿病・腎臓病・消化器が弱い犬には控えるか、かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
愛犬の体質や体調に合わせて、りんごを安全に楽しいおやつタイムに取り入れてみてください。
参考文献を表示(全5件)
- ASPCA Animal Poison Control. "People Foods to Avoid Feeding Your Pets."
- Cortinovis C, Caloni F. "Household Food Items Toxic to Dogs and Cats." Front Vet Sci. 2016;3:26. DOI: 10.3389/fvets.2016.00026
- USDA FoodData Central. "Apples, raw, with skin." FDC ID: 171688.
- National Research Council. "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." National Academies Press, 2006.
- Veberic R, et al. "Phenolic compounds in some apple (Malus domestica Borkh) cultivars of organic and integrated production." J Sci Food Agric. 2005;85(10):1687-1694. DOI: 10.1002/jsfa.2113