「最近、愛犬がフードを残すようになった」「体重が少しずつ減っている気がする」──10歳を超えた愛犬の変化に、不安を感じていませんか。
犬の栄養学において、7歳前後からの「シニア期」と10歳以上の「超高齢期(ジェリアトリック期)」では、求められる食事管理のアプローチが大きく異なります。シニア期が「太りすぎ防止」を意識する時期であるのに対し、超高齢期は「やせすぎ防止」「食べられること自体の確保」が最重要課題になるのです[4]。
この記事では、10歳以上の超高齢犬に特化して、食欲低下・体重減少・筋肉量低下・認知機能低下といった課題への栄養面からの対応策を、研究データに基づいて解説します。7歳からのシニア期全般の食事管理についてはシニア犬の食事ガイド(7歳から)をご覧ください。
この記事をお読みになる前に
超高齢犬の食事変更は、必ずかかりつけの動物病院で健康状態を確認したうえで行ってください。腎臓病・心臓病・糖尿病・膵炎などの持病がある場合は、それぞれの疾患に応じた食事管理が最優先されます。この記事は持病のない超高齢犬を主な対象とした一般的な栄養情報です。
超高齢期(ジェリアトリック期)とは
シニア期と超高齢期の違い
犬のライフステージは一般的に「パピー期」「成犬期」「シニア期」「超高齢期(ジェリアトリック期)」に分類されます。超高齢期の定義は犬種のサイズによって異なりますが、Laflamme(2005)の分類[4]を踏まえると、おおよそ以下のようになります。
| 犬のサイズ | シニア期の目安 | 超高齢期の目安 | 人間換算の目安 |
|---|---|---|---|
| 小型犬(10kg未満) | 7〜9歳 | 10歳以上 | 約56歳以上 |
| 中型犬(10〜25kg) | 7〜8歳 | 9歳以上 | 約56歳以上 |
| 大型犬(25〜45kg) | 6〜7歳 | 8歳以上 | 約55歳以上 |
| 超大型犬(45kg以上) | 5〜6歳 | 7歳以上 | 約54歳以上 |
シニア期が「老化の始まり」への適応であるのに対し、超高齢期は「老化がかなり進行した状態」への対応が求められます。この違いを理解することが、適切な食事管理の第一歩です。
超高齢期に起こる身体の変化
超高齢期では、以下のような身体的・生理的変化が顕著になります。
- 基礎代謝の変化:シニア前期では基礎代謝が低下するが、超高齢期ではさらに進行し、同時に食事量も大幅に減少する
- 消化吸収能力の低下:胃腸の機能が衰え、同じ食事を摂っても吸収できる栄養素の割合が低下する
- 免疫機能の低下:感染症にかかりやすくなり、回復にも時間がかかる
- 感覚機能の低下:嗅覚・味覚が鈍くなり、フードへの興味が薄れる
- 筋肉量・体脂肪の減少:同化(筋肉を作る)能力が低下し、体重が落ちやすくなる
Freeman(2012)は、加齢に伴う体組成の変化(特に除脂肪体重の減少)が、超高齢犬の栄養管理において最も重要な考慮事項の一つであると指摘しています[2]。つまり、超高齢犬の食事管理では「いかに食べてもらうか」「いかに筋肉を維持するか」が中心的なテーマとなるのです。
超高齢期特有の5つの課題
超高齢期の犬が直面する食事関連の課題は、シニア前期とは質的に異なります。それぞれの課題と、その背景にあるメカニズムを理解することで、適切な対策が見えてきます。
課題1: 食欲低下・選り好み
超高齢犬で最も多い悩みの一つが食欲の低下です。原因は多岐にわたります。
- 嗅覚・味覚の衰え:犬はフードの香りで食欲が刺激されるため、嗅覚の低下は食欲に直結する
- 慢性的な痛み:関節炎や歯周病の痛みが食事行動を抑制する
- 消化器の不快感:胃腸機能の低下により、食後に不快感を覚えることで食事を避けるようになる
- 薬の副作用:長期服薬による食欲抑制や味覚変化
- 活動量の低下:運動量が減ることでエネルギー消費が減り、空腹感が起きにくくなる
特に注意すべきは、超高齢犬の食欲低下は「わがまま」ではなく、身体的な原因があることがほとんどだという点です。「昔は何でも食べたのに」と嘆く前に、まず動物病院で健康チェックを受けることをおすすめします。
課題2: 体重減少・筋肉量低下(サルコペニア/悪液質)
サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量と筋力の進行性の低下を指します。また、がんや慢性疾患に伴う悪液質(カヘキシア)では、筋肉と脂肪の両方が急速に減少します[2]。
Freeman(2012)は、高齢犬における意図しない体重減少は、基礎疾患のサインである可能性があり、早期に獣医師の評価を受けるべきと強調しています[2]。体重減少は以下のような悪循環を生みます。
- 筋肉量の減少 → 基礎代謝のさらなる低下 → エネルギー効率の悪化
- 免疫機能の低下 → 感染リスクの上昇
- 体力の低下 → 活動量の減少 → 食欲のさらなる低下
ボディコンディションスコア(BCS)のチェック
超高齢犬の体重管理では、体重計の数字だけでなくボディコンディションスコア(BCS)を定期的に確認しましょう。肋骨が簡単に触れるか、腰のくびれが過度でないか、背骨や腰骨が目立っていないかをチェックします。BCS 4〜5/9(9段階評価)が理想です。超高齢犬ではBCS 5(やや多め)を維持するくらいが安全とされることもあります。
課題3: 歯の喪失・咀嚼力低下
10歳を超えると、歯周病の進行による歯の喪失や、顎の筋力低下によって硬いドライフードを噛み砕けなくなる犬が増えます。歯が痛いために食事を拒否しているケースも少なくありません。
- ドライフードをふやかす、粒を小さくする
- ウェットフードやセミモイストフードへの切り替え
- 定期的な歯科チェック(全身麻酔のリスクとベネフィットは獣医師と相談)
課題4: 消化吸収能力の著しい低下
超高齢犬では消化酵素の分泌量が減少し、腸管の吸収面積も萎縮することで、食べた食事から栄養を取り込む効率が大幅に低下します。NRC(2006)は、加齢に伴い脂肪の消化率やタンパク質の利用効率が低下することを報告しています[1]。
このため、超高齢犬には消化しやすい食材(鶏ささみ、白身魚、卵白など)を使用し、消化吸収率の高いフードを選ぶことが重要です。また、一度に大量に与えるのではなく、少量を複数回に分けて与えることで消化器への負担を軽減できます。
課題5: 認知機能の低下(認知症 / CDS)
犬の認知機能障害症候群(CDS: Cognitive Dysfunction Syndrome)は、11歳以上の犬の約28%、15〜16歳の犬では約68%に何らかの認知機能低下が見られるとされています。症状には以下のようなものがあります。
- 見当識障害(部屋の中で迷う、壁に向かって立ち尽くす)
- 睡眠・覚醒リズムの変化(夜中に徘徊する、昼間に寝続ける)
- 家族や同居犬への反応の変化
- トイレの失敗の増加
- 食事行動の変化(フードの場所がわからない、食べ方を忘れる、食事中に途中でやめてしまう)
Pan Y et al.(2010)の研究では、中鎖脂肪酸(MCT)を含む食事が高齢犬の認知機能テストの成績を有意に改善させたことが報告されており[3]、食事からの認知機能サポートの可能性が注目されています。この点については次のセクションで詳しく解説します。
超高齢犬の栄養管理 4つのポイント
超高齢期の栄養管理は、シニア前期とは逆の発想が必要になる場面が多くあります。シニア前期が「カロリーを減らし太りすぎを防ぐ」ことを重視するのに対し、超高齢期は「カロリーを確保しやせすぎを防ぐ」方向にシフトします[4]。
ポイント1: カロリー密度を上げる(少量で高カロリー)
食べる量が減った超高齢犬に、「もっと食べさせよう」と大量のフードを目の前に置いても逆効果です。少ない量でも必要なカロリーを摂取できるよう、カロリー密度の高いフードに切り替えることが基本戦略です。
カロリー密度を上げる具体的な方法
- 高脂肪のフードを選ぶ:脂肪は1gあたり約9kcalとタンパク質・炭水化物(各約4kcal/g)の2倍以上のカロリーを持つ。脂肪含量が15〜20%のフードを検討
- ウェットフードと混ぜる:ウェットフードは嗜好性が高く、少量で効率的にカロリーを摂取できる
- トッピングでカロリーを補う:少量のサーモンオイル(小さじ1/2程度)やゆで卵の白身をトッピング
- 「シニアライト」は避ける:超高齢犬に低カロリーのシニアライトフードを与えると、カロリー不足を招く恐れがある
膵炎のリスクに注意
脂肪を増やす際は、膵炎の既往がある犬では慎重な対応が必要です。急激な脂肪量の増加は膵炎の再発リスクを高めます。脂肪を増やす場合は、少量ずつ段階的に行い、便の状態を観察してください。
ポイント2: タンパク質は高めに維持(良質で消化しやすいもの)
かつては「シニア犬にはタンパク質を減らすべき」という考え方が主流でしたが、現在の栄養学では健康な高齢犬にはむしろタンパク質を増やすべきという見解が主流です[2]。
NRC(2006)は、高齢犬の最低タンパク質要求量は成犬と同等かそれ以上であると述べています[1]。Freeman(2012)も、高齢犬では筋肉を維持するために必要なタンパク質の「同化閾値」が高くなる(同じ量のタンパク質では筋肉合成の効率が落ちる)ため、より多くのタンパク質が必要であると指摘しています[2]。
タンパク質管理のポイント
- 乾物ベースで25%以上のタンパク質を含むフードが目安(腎臓病がない場合)
- 消化率の高いタンパク源を選ぶ:鶏ささみ、白身魚、卵、低脂肪の赤身肉
- 植物性タンパク質よりも動物性タンパク質を優先:アミノ酸スコアが高く、消化吸収率も優れている
- 腎臓病がある場合は例外:腎臓病の食事管理ガイドを参照し、タンパク質制限が必要
タンパク質の量と質の違いについてより詳しく知りたい方は、ドッグフードのタンパク質比較ガイドも参考にしてください。
ポイント3: MCTオイル(中鎖脂肪酸)で認知機能をサポート
近年、中鎖脂肪酸(MCT: Medium-Chain Triglycerides)が高齢犬の認知機能をサポートする可能性が注目されています。MCTはココナッツオイルやパーム核油に多く含まれる脂肪酸で、通常の長鎖脂肪酸とは異なる代謝経路を持ちます。
MCTが認知機能に作用するメカニズム
加齢に伴い、脳がグルコース(ブドウ糖)をエネルギー源として利用する効率が低下します。MCTは肝臓で速やかにケトン体に変換され、このケトン体が脳の代替エネルギー源として機能します。
Pan Y et al.(2010)が「British Journal of Nutrition」に発表した研究では、MCTを5.5%含む食事を与えた高齢犬(平均10.5歳)のグループは、対照群と比較して複数の認知機能テスト(弁別学習課題、空間記憶課題など)で有意な改善を示しました[3]。しかも、この効果は投与開始後比較的早期から現れ、長期間持続したことが報告されています。
MCTの取り入れ方
- MCTオイル配合フード:一部のシニア用・脳の健康ケア用フードにはMCTオイルが配合されている。原材料表示で「中鎖脂肪酸油」「MCTオイル」「ココナッツオイル」を確認
- MCTオイルのトッピング:食用MCTオイルを少量(小型犬で小さじ1/4〜1/2程度)フードに混ぜる方法もある。初めは少量から始め、下痢がないか確認しながら増やす
- 注意点:膵炎の既往がある犬、肝臓に問題がある犬では使用前に獣医師に相談すること
ポイント4: ウェットフード・セミモイストの活用
超高齢犬の食事管理において、ウェットフード(缶詰・パウチ)やセミモイストフードの活用は非常に有効な選択肢です。
ウェットフードのメリット
- 嗜好性が高い:香りが強く、嗅覚が低下した超高齢犬でも食欲が刺激されやすい
- 水分補給になる:ウェットフードは水分含有量70〜80%。脱水リスクが高い超高齢犬の水分補給を自然にサポート
- 柔らかく食べやすい:歯を失った犬、咀嚼力が低下した犬でも無理なく食べられる
- 消化しやすい:水分を多く含むため胃腸への負担が比較的少ない
コストを抑える活用法
ウェットフードはドライフードに比べてコストが高くなりがちです。ドライフードを主食にしつつ、ウェットフードをトッピングとして少量加える「ミックスフィーディング」が、コストと効果のバランスに優れた方法です。ドライフードの上にウェットフードをスプーン1〜2杯のせるだけでも、食いつきが大きく改善することがあります。
食欲がないときの6つの工夫
超高齢犬が食べなくなったとき、「仕方ない」とあきらめてしまうのは危険です。超高齢犬の体力は若い犬に比べて予備力が少なく、食べない期間が長引くほど回復が困難になります。以下の工夫を試して、少しでも食べてもらいましょう。
工夫1: フードを温めて香りを引き出す
電子レンジで10〜15秒程度温めるか、37〜38度Cのぬるま湯を少量かけて、フードの温度を人肌程度にすることで香りが立ちやすくなります。嗅覚が衰えた超高齢犬にとって、温かい香りは食欲を刺激する有効な手段です。
工夫2: 嗜好性の高いトッピングを加える
ゆでた鶏ささみをほぐしたもの、無塩の鶏スープ(少量)、ゆで卵の白身、ゆでかぼちゃなどを少量トッピングするだけで食いつきが劇的に変わることがあります。ただし、持病がある場合は使える食材が限られるため、獣医師に確認してください。
工夫3: 手から直接与える
食器からは食べないのに、飼い主の手から差し出すと食べる超高齢犬は多いです。認知機能が低下している場合、食器の中のフードを「食べ物」と認識できなくなっていることがあります。手から少しずつ口元に運んであげましょう。
工夫4: 少量頻回で負担を軽減
1日2回の食事を3〜5回に分割します。一度に多くの量を食べられない超高齢犬でも、回数を増やすことで1日のトータル摂取量を確保できます。消化器への負担も軽減されます。
工夫5: 食事環境を見直す
静かで落ち着いた場所で食事をさせましょう。食器の高さも重要で、首を下げる姿勢がつらい場合は食器台を使って顔の高さに合わせると食べやすくなります。関節炎がある犬では、滑りにくいマットを敷くことで踏ん張りやすくなり、食事に集中できます。
工夫6: フードの形状・テクスチャーを変える
ドライフードをぬるま湯でふやかす、ドライとウェットを混ぜる、フードをフードプロセッサーでペースト状にするなど、同じ栄養素でもテクスチャーを変えるだけで食べてくれることがあります。超高齢犬は日によって好みが変わることもあるため、いくつかのバリエーションを用意しておくと安心です。
すぐに動物病院へ相談すべきサイン
- 48時間以上まったく食べない
- 急激な体重減少(1〜2週間で体重の5%以上の減少)
- 水も飲まない
- 嘔吐や下痢が続いている
- ぐったりして元気がまったくない
これらの症状がある場合は、食事の工夫で対処する段階ではありません。速やかにかかりつけの動物病院を受診してください。
犬が食べない場合の原因や対処法については犬がご飯を食べない原因と対処法でも詳しく解説しています。
超高齢犬におすすめのフード3選
超高齢犬のフード選びでは、「高カロリー密度」「高消化性タンパク質」「嗜好性の高さ」の3点が重要な判断基準です。以下に、超高齢期の栄養ニーズに適したフードを紹介します。
ロイヤルカナン ミニ エイジング 12+ (小型犬の12歳以上用)
| 対象 | 12歳以上の小型犬(体重1〜10kg) |
|---|---|
| 主原料 | 米、肉類(鶏、七面鳥)、動物性油脂 |
| 成分 | タンパク質26.0%以上 / 脂質16.0%以上 / カロリー約378kcal/100g |
| 特徴 | 超高齢犬用高消化性小粒設計抗酸化物質配合 |
おすすめポイント
- 12歳以上の超高齢犬に特化して設計された数少ないドライフード
- 超小型の粒サイズで、歯や顎が弱った犬でも食べやすい
- 独自の抗酸化物質ブレンドにより、加齢による細胞の酸化ストレスに配慮
- 消化率の高いタンパク質を使用し、消化吸収能力が低下した超高齢犬に対応
ヒルズ サイエンス・ダイエット シニアアドバンスド 小型犬用 13歳以上
| 対象 | 13歳以上の小型犬 |
|---|---|
| 主原料 | チキン、小麦、トウモロコシ |
| 成分 | タンパク質20.5%以上 / 脂質14.5%以上 / カロリー約365kcal/100g |
| 特徴 | 13歳以上対応脳の健康維持ビタミンE・C配合 |
おすすめポイント
- 13歳以上を対象とした超高齢犬専用フードで、脳の健康維持に配慮した栄養設計
- ビタミンE・Cなどの抗酸化成分を強化配合し、加齢に伴う酸化ストレスに対応
- 消化しやすい高品質なチキンを主原料として使用
- 獣医師推奨ブランドとして長年の実績あり
デビフ シニア犬の食事 ささみ&すりおろし野菜(ウェットフード)
| 対象 | シニア犬・超高齢犬 |
|---|---|
| 主原料 | 鶏ささみ、かぼちゃ、にんじん |
| 成分 | タンパク質8.5%以上 / 脂質2.0%以上 / 水分82.0%以下 |
| 特徴 | ウェットタイプ国産やわらか食感水分補給 |
おすすめポイント
- すりおろし野菜をベースにした柔らかいペースト状で、歯がなくても食べやすい
- 国産の鶏ささみを使用し、嗜好性が高い。ドライフードへのトッピングにも最適
- 水分含有量が約82%と高く、脱水リスクの高い超高齢犬の水分補給をサポート
- 少量パック(85g)で使い切りやすく、食べムラがある犬にも対応しやすい
フードの切り替えは7〜10日かけて徐々に行います。超高齢犬は消化器がデリケートなため、急な変更は下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。フードの切り替え方法についてはドッグフードの切り替え方ガイドを参考にしてください。
よくある質問
超高齢犬(10歳以上)にシニア用フードだけで十分ですか?
一般的なシニア用フードは7歳以上を対象に設計されており、カロリーを抑える方向で調整されていることが多いです。しかし10歳以上の超高齢犬では逆に体重減少や筋肉量低下が問題となるため、カロリー密度が高く消化吸収に優れたフードが必要になります。シニア用の中でも「超高齢期向け」「ハイシニア向け」と明記されたフードや、ウェットフードの併用を検討してください。シニア期全般の食事管理についてはシニア犬の食事ガイド(7歳から)も参考にしてください。
超高齢犬に必要なタンパク質量はどのくらいですか?
超高齢犬では筋肉量の維持が重要な課題となるため、タンパク質を過度に制限すべきではありません。NRC(2006)の基準を踏まえると、健康な超高齢犬では乾物ベースで25%以上の良質なタンパク質が推奨されます[1]。ただし腎臓病や肝臓病がある場合はタンパク質制限が必要になるため、かかりつけの動物病院で血液検査を受けたうえで判断してください。
MCTオイルは超高齢犬の認知機能に効果がありますか?
Pan Y et al.(2010)の研究では、MCT(中鎖脂肪酸)を含む食事を与えた高齢犬において、認知機能テストの成績が有意に改善したことが報告されています[3]。MCTは肝臓でケトン体に変換され、加齢でグルコース利用効率が低下した脳の代替エネルギー源として働くと考えられています。ただし、すべての犬に同様の効果があるわけではなく、また膵炎の既往がある犬では脂質の急な増加に注意が必要です。
超高齢犬が2日以上何も食べません。どうすればいいですか?
超高齢犬が48時間以上まったく食べない場合は、速やかにかかりつけの動物病院を受診してください。若い犬に比べて超高齢犬は体力の予備力が少なく、脱水や低血糖が急速に進行するリスクがあります。受診までの間は、少量の水やぬるま湯を口元に持っていき、水分だけでも摂らせるようにしましょう。嘔吐や下痢、ぐったりしている場合は緊急性が高いため、すぐに受診してください。
まとめ
超高齢犬(10歳以上)の食事管理は、シニア前期の「カロリー制限・太りすぎ防止」とは逆の発想が求められます。「いかに食べてもらうか」「いかに筋肉量を維持するか」が最重要テーマであり、カロリー密度を上げ、良質なタンパク質を十分に確保し、消化しやすいフードを選ぶことが基本戦略です[4]。
MCTオイル(中鎖脂肪酸)による認知機能サポートの研究[3]は、食事からの脳の健康ケアの可能性を示しており、超高齢犬の食事設計に新たな視点を加えています。また、ウェットフードやセミモイストフードの活用は、嗜好性・水分補給・食べやすさの面で超高齢犬に特に適した選択肢です。
何より大切なのは、超高齢犬の「食べない」を放置しないことです。食欲低下には必ず原因があり、工夫次第で改善できることも少なくありません。温める、トッピングを加える、手から与える、少量頻回にする──できることから試しながら、愛犬の残りの日々を少しでも元気に、おいしく過ごさせてあげましょう。
超高齢期の食事管理に不安がある場合は、かかりつけの動物病院で定期的な健康チェックを受けながら、愛犬に合った最適なフードと給餌方法を見つけてください。
参考文献を表示(全4件)
- National Research Council (NRC). "Nutrient Requirements of Dogs and Cats." Washington, DC: National Academies Press; 2006.
- Freeman LM. "Cachexia and sarcopenia: emerging syndromes of importance in dogs and cats." J Vet Intern Med. 2012;26(1):3-17. doi:10.1111/j.1939-1676.2011.00838.x
- Pan Y, Larson B, Araujo JA, et al. "Dietary supplementation with medium-chain TAG has long-lasting cognition-enhancing effects in aged dogs." Br J Nutr. 2010;103(12):1746-1754. doi:10.1017/S0007114510000097
- Laflamme DP. "Nutrition for aging cats and dogs and the importance of body condition." Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2005;35(3):713-742.