「うちの子、最近やたらと耳を掻いている...」「足の裏をずっと舐めているけど、大丈夫だろうか?」そんな心配を抱えていませんか?
実は、これらの行動は食物アレルギーのサインかもしれません。犬の食物アレルギーは全体の約10-15%に見られ[1]、皮膚トラブルの原因の約20-30%を占めると言われています。
でも、ご安心ください。食物アレルギーは正しく理解して対処すれば、愛犬との快適な暮らしを取り戻せます。この記事では、最新の研究をもとに診断方法と治療法をわかりやすくお伝えします。
なお、アレルギー対応フード選びの基本については「小型犬のフード選びガイド」も参考にしてみてください。
食物アレルギーとは
免疫システムの過剰反応
食物アレルギーは、特定の食材(主にタンパク質)に対して免疫システムが過剰に反応することで起こります。本来は無害な食材を「敵」と誤認識してしまい、IgE抗体やT細胞が反応して炎症を引き起こしてしまいます。
食物アレルギー vs 食物不耐性
| 項目 | 食物アレルギー | 食物不耐性 |
|---|---|---|
| 原因 | 免疫システムの過剰反応 | 消化酵素の不足、代謝異常 |
| 症状 | 皮膚掻痒、外耳炎、消化器症状 | 主に消化器症状(下痢、嘔吐) |
| 反応の速さ | 即時型(数分〜数時間)または遅延型(数日) | 摂取後数時間〜1日 |
| 量との関係 | 少量でも反応する | 量に依存(多量で症状悪化) |
| 治療 | アレルゲンの完全除去 | 量の調整、消化酵素補充 |
📊 アレルギーで悩む飼い主さんが同時に抱える悩み
当サイト診断データ 2025年9月〜2026年1月(n=532)
アレルギーを選択した飼い主さんの61.5%が皮膚・被毛の悩みも抱えています。アレルギー反応が皮膚症状として現れやすいことが反映されています。
どんな症状が出るの?診断基準は?
主な症状
💡 皮膚症状(最も多い)
- 掻痒(かゆみ):特に耳、顔、足先、腋窩(わきの下)、鼠径部(股)
- 外耳炎:繰り返す耳のトラブル、悪臭、耳垢の増加
- 皮膚炎:赤み、発疹、脱毛、色素沈着
- 肉球の炎症:足先を舐め続ける、肉球が赤く腫れる
- 膿皮症:二次感染による化膿
💡 消化器症状
- 慢性的な下痢または軟便
- 嘔吐(週1回以上)
- 腹部不快感、ガス
- 食欲不振
💡 その他の症状
- 肛門周囲の掻痒
- 慢性的な目やに
- 行動変化(イライラ、攻撃性)
📊 症状の出現頻度(獣医皮膚科学会データ)
診断の難しさ
食物アレルギーの診断は、実はとても難しいです。その理由は以下の通りです。
- 他のアレルギー(環境アレルゲン、ノミなど)と症状が似ている
- 血液検査やIgE検査の精度が低い(感度・特異度ともに50%以下)[9]
- 確定診断には除去食試験が必須
アレルゲン食材トップ7
研究により、以下の食材が犬の食物アレルギーの原因として特に多いことがわかっています[2]。愛犬のフードに含まれていないか、ぜひチェックしてみてください。
🥇 1位:牛肉(34-38%)
最も頻度が高いアレルゲン。ビーフジャーキー、牛骨、牛乳なども含む
🥈 2位:乳製品(17-21%)
牛乳、チーズ、ヨーグルトなど。乳糖不耐性とは異なる免疫反応
🥉 3位:鶏肉(15-17%)
多くのドッグフードの主原料であるため、長期摂取で感作されやすい。特に皮膚の弱い柴犬やフレンチブルドッグでは鶏肉アレルギーに注意が必要です
4位:小麦(13-15%)
グルテンタンパクが原因。大麦、ライ麦も交差反応の可能性あり
5位:ラム肉(7-9%)
かつては低アレルゲンとされたが、普及により感作が増加
6位:大豆(5-7%)
植物性タンパク質として配合されることが多い
7位:卵(4-6%)
特に卵白のタンパク質(アルブミン)がアレルゲン
💡 重要なポイント
- アレルゲンはタンパク質:炭水化物や脂肪はアレルゲンになりにくい
- 複数のアレルゲンに反応する犬もいる(約20%)
- 「低アレルゲン」とされる食材でも、長期摂取で感作される可能性がある
除去食試験ってどうやるの?8-12週間の手順
「うちの子、食物アレルギーかも...」と思ったら、まずは除去食試験をすることになります。これは獣医皮膚科学会が推奨する、いちばん信頼できる診断方法です[5]。
除去食試験の原則
- 新奇タンパク質または加水分解タンパク質のみを与える
- 8-12週間継続する(多くは4-6週間で改善)[6]
- おやつ、サプリメント、人間の食べ物、フレーバー付き薬は一切禁止
- 症状が改善したら、負荷試験(元のフードを与える)で確認
新奇タンパク質とは
聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言うと愛犬がこれまで一度も食べたことがないタンパク質源のことです。たとえば:
- ベニソン(鹿肉)
- ダック(鴨肉)
- ラビット(ウサギ肉)
- カンガルー肉
- ホース(馬肉)
- 白身魚(タラ、ヒラメなど)
8週間の実施ステップ
📅 準備期(除去食開始前)
- 獣医師と相談し、除去食の種類を決定
- 家族全員に協力を依頼(おやつ禁止の徹底)
- 症状記録シートを準備
📅 第1-2週
- 除去食のみを与える(フードの切り替えは7日かけて徐々に)
- 症状の変化を毎日記録(掻痒の頻度、外耳炎の状態など)
- 多くの犬はまだ症状が継続
📅 第3-4週
- 一部の犬で症状の改善が見られ始める
- 掻痒が減少、外耳炎の赤みが軽減
📅 第5-8週
- 多くの犬(約70-80%)で明確な改善
- 掻痒がほぼ消失、皮膚の赤みが改善
📅 第9-12週
- 遅延型反応の犬も改善し始める
- 8週間で改善しない場合は12週間まで延長
📅 負荷試験(症状改善後)
- 元のフードを2週間与えて症状が再発するか確認
- 再発すれば食物アレルギーと確定診断
- 再発しなければ他の原因を検討
除去食試験中の注意事項
⚠️ 必ず守りたいポイント
- おやつは一切与えない(犬用ガム、ジャーキー、ビスケットなど全て禁止)
- 人間の食べ物を与えない(床に落ちたものも拾わせない)
- フレーバー付き薬は獣医師に相談し、無味のものに変更
- 歯磨きペーストも無味無臭のものを使用
- 散歩中に他の犬や人から食べ物をもらわない
低アレルゲンフードの種類
1. 新奇タンパク質フード
特徴
愛犬が過去に食べたことがないタンパク質源を使用
メリット
- 自然な食材で作られている
- 嗜好性が比較的高い
- 長期的な維持食として使いやすい
デメリット
- 愛犬の食歴を正確に把握する必要がある
- 交差反応のリスク(例:牛肉アレルギーならバイソンも反応する可能性)
- 選択肢が限られる
2. 加水分解タンパク質フード
特徴
タンパク質を酵素で分解し、分子量を10,000ダルトン以下にしたフード[7]。免疫システムが認識できないサイズまで小さくするため、アレルギー反応が起きにくい
メリット
- 最も推奨される除去食試験用フード
- 複数のアレルゲンに対応可能
- 食歴に関係なく使用できる
- 最も信頼性が高い
デメリット
- 価格が高い(1kg 3,000-5,000円程度)
- 嗜好性が低い場合がある
- 処方食が多く、動物病院での購入が必要
3. 限定原材料フード
特徴
原材料を最小限(通常5-8種類)に絞ったフード。シンプルな配合でアレルゲンを特定しやすい
メリット
- 原材料が明確で管理しやすい
- 除去食試験後のアレルゲン特定に有効
- 市販されており入手しやすい
デメリット
- 必ずしもアレルゲンフリーとは限らない
- 製造ラインでの交差汚染の可能性
おすすめアレルギー対応フード
除去食試験や長期的なアレルギー管理に適したフードをご紹介します。どれも獣医師もおすすめすることの多い、信頼できる製品です。
GO! LID サーモン グレインフリー
| 主原料 | サーモン(単一タンパク質) |
|---|---|
| 成分 | タンパク質24% / 脂質12% / 408kcal/100g |
| 対応 | 全年齢 / ドライ / 粒13-15mm |
| 特徴 | グレインフリー消化サポート◎皮膚ケア対応 |
💡 こんな子におすすめ
- 鶏肉・牛肉にアレルギーがある子
- 除去食試験をこれから始める子
- お腹が弱く消化サポートが必要な子
単一タンパク質サーモンで除去食試験に最適なアレルギー対応専用フードです。アレルゲンの特定が容易で、グレインフリー設計のため小麦アレルギーにも対応できます。プロバイオティクス・プレバイオティクス配合で消化の健康もサポートします。
ペトコトフーズ フィッシュ
| 主原料 | 白身魚・スケトウダラ(単一タンパク質) |
|---|---|
| 成分 | タンパク質30% / 脂質17% / 135kcal/100g |
| 対応 | 全年齢 / フレッシュフード |
| 特徴 | 国産ヒューマングレード皮膚ケア◎ |
💡 こんな子におすすめ
- 肉類全般にアレルギーがある子
- 皮膚トラブルでオメガ3が必要な子
- ドライフードが苦手な子
国産白身魚(スケトウダラ)を主原料としたフレッシュフードです。単一タンパク源設計で肉類にアレルギーがある子におすすめ。オメガ3脂肪酸2.8%と高配合で、アレルギーによる皮膚トラブルをサポートします。新鮮な素材を手作りで調理しており、消化吸収にも優れています。
HEKA グレインフリー サーモン
| 主原料 | サーモン(単一タンパク質) |
|---|---|
| 成分 | タンパク質23% / 脂質8.5% / 343kcal/100g |
| 対応 | 成犬・シニア / ドライ / 粒6-8mm |
| 特徴 | グレインフリー低脂肪小粒で食べやすい |
💡 こんな子におすすめ
- お腹が弱く低脂肪フードが必要な子
- 小型犬で小粒が食べやすい子
- コスパ重視で長期継続したい飼い主さん
低脂肪8.5%設計で、敏感な胃腸や膵炎リスクのある犬にも配慮したアレルギー対応専用フードです。単一タンパク質サーモンで除去食試験にも使用でき、小粒6-8mmで小型犬が食べやすい設計になっています。価格と品質のバランスが良く、継続しやすいのも特徴です。
よくある質問
Q1. 食物アレルギーと食物不耐性の違いは何ですか?
食物アレルギーは免疫システムが過剰反応して起こり、主な症状は:
- 皮膚の掻痒(かゆみ)
- 外耳炎
- 消化器症状(下痢、嘔吐)
一方、食物不耐性は消化酵素の不足などで起こり、主に下痢や嘔吐などの消化器症状のみが現れます。アレルギーは少量でも反応しますが、不耐性は量に依存します。
Q2. 除去食試験はどれくらいの期間が必要ですか?
研究で推奨される除去食試験の期間は8-12週間です。
- 多くの犬は4-6週間で症状が改善
- 一部の犬は8週間以上かかることがある
- 8週間で改善しない場合は12週間まで延長
この期間中は新奇タンパク質または加水分解タンパク質フードのみを与え、おやつや人間の食べ物は一切与えません。
Q3. 加水分解タンパク質フードとは何ですか?
加水分解タンパク質フードは、タンパク質を酵素で分解し、分子量を小さくしたフードです。
分子量が10,000ダルトン以下になると、免疫システムが認識できなくなり、アレルギー反応が起きにくくなります[8]。
除去食試験や長期的なアレルギー管理に最も推奨されるフードで、複数のアレルゲンに対応可能、食歴に関係なく使用できるというメリットがあります。
まとめ
犬の食物アレルギーは、適切な診断と管理が大切です。以下のポイントを押さえましょう:
- 食物アレルギーの主な症状は皮膚掻痒と外耳炎(80-90%)
- アレルゲン食材トップ7:牛肉、乳製品、鶏肉、小麦、ラム、大豆、卵
- 確定診断には8-12週間の除去食試験が必須
- 除去食は新奇タンパク質または加水分解タンパク質フードを使用
- 除去食試験中はおやつ・人間の食べ物を一切与えない
- 症状改善後は負荷試験で確認
愛犬のアレルギーが疑われる場合は、必ず獣医師に相談し、きちんとした診断と治療を受けましょう。自己判断でのフード変更は、かえって症状を悪化させることがあります。
参考文献を表示(全9件)
- Veterinary Dermatology Center. "Food Allergy and Intolerance."
- BMC Veterinary Research (2016). "Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (2): common food allergen sources in dogs and cats."
- Merck Veterinary Manual. "Cutaneous Food Allergy in Animals."
- Dr. Louisa Fenny. "The role of food allergies in your dog's ear infections."
- Today's Veterinary Practice. "Elimination Diet Trials: Steps for Success and Common Mistakes."
- DVM360. "Identifying food allergies: The veterinary elimination diet trial."
- Today's Veterinary Practice. "Hydrolyzed Protein and Amino Acid-Based Diets."
- Bonza. "Hydrolyzed Protein Food for Dogs - Are There Alternatives?"
- Journal of the American Veterinary Medical Association (2023). "Food allergy in dogs and cats; current perspectives on etiology, diagnosis, and management."