防災セットの大前提:「最初の3日間」を乗り切る
犬用防災セットを考える際の基本的な考え方は、災害発生から支援が届くまでの「最初の3日間(72時間)」を自力で乗り切ることです。環境省のガイドラインでも、少なくとも5日分の備蓄を推奨していますが、持ち出し用としては3日分を目安にするのが現実的です。
よくある失敗:セットが重すぎて持ち出せない
犬用の防災グッズを万全に揃えようとすると、人間の分と合わせて片手で持てない重さになることがあります。災害時は犬を抱えたりリードを持ったりしながら移動する必要があるため、犬用セットは片手で持てる重さ(3〜5kg程度)に収めることを意識しましょう。
「持ち出し用」と「備蓄用」を分けて考えることも重要です。持ち出し用は最低限必要な物だけを厳選し、備蓄用は自宅に5〜7日分をストックしておく二段構えにしましょう。
最優先で入れるべき物(生命に関わる物)
以下はどんな状況でも最優先で持ち出すべき物です。これらがなければ犬の命に直結します。
優先度A:絶対に入れる物
- フード(3日分以上) — 普段食べているものを小分けにして密封。療法食を食べている犬は特に重要。災害時に入手できない可能性が高い
- 水(1日500ml〜1L×3日分) — 犬のサイズによって必要量が異なる。人間用の水と兼用でもOKだが、犬の分として確保しておく
- 常備薬・療法食の処方箋コピー — 持病がある犬は最優先。薬が切れると命に関わる場合がある
- リード・首輪(予備) — 普段使いとは別に予備を入れておく。災害時にパニックで首輪が外れるケースが多い
- 鑑札・狂犬病予防注射済票のコピー — 迷子になった場合の身元確認に必須。マイクロチップ番号の控えも一緒に
- 犬の写真(飼い主と一緒に写っているもの) — 迷子時の捜索に必要。スマホだけでなく、紙にプリントしたものも用意(充電切れ対策)
フードはローリングストック方式で管理するのがおすすめです。防災用に別途ストックするのではなく、普段使いのフードを常に多めに買い置きし、古い順に消費していく方法です。賞味期限切れの心配がなくなります。
あると助かる物(生活の質に関わる物)
生命に直結はしませんが、避難生活の質を大きく左右する物です。
優先度B:できれば入れたい物
- 排泄処理用品 — ペットシーツ(5〜10枚)、うんち袋、新聞紙。避難所での排泄処理は必須マナー
- 折りたたみ食器 — シリコン製の折りたたみボウルが軽量でおすすめ。水分補給に必要
- ケージ・クレート(折りたたみ式) — 避難所ではケージに入れることが求められる場合が多い。普段からクレートに慣れさせておくことが重要
- タオル(2〜3枚) — 体を拭く、防寒、クレートの目隠しなど多用途に使える
- ワクチン接種証明書のコピー — 避難所で他の動物と一緒になる場合に求められることがある
- ビニール袋(大小各5枚以上) — 排泄物処理、濡れた物の隔離、食器代わりなど万能に使える
クレートトレーニングの重要性
避難所でケージやクレートに入れない犬は、受け入れを断られるケースが実際に報告されています。普段からクレートを「安心できる自分の場所」として認識させておくことが、災害時の最大の備えの一つです。防災グッズを揃えるだけでなく、犬のトレーニングも「防災準備」に含まれます。
入れなくていい物・後回しでよい物
防災セットを軽くするために、思い切って外してよい物を整理します。
| アイテム | 外してよい理由 | 代替手段 |
|---|---|---|
| 大量のおやつ | カロリーの主軸はフードで確保。おやつは嗜好品の位置づけ | フードの一部をおやつ代わりに使う。少量なら入れてもよいが優先度は低い |
| おもちゃ(複数) | かさばる割に優先度が低い。避難初期はおもちゃで遊ぶ余裕がない | 一つだけお気に入りの小さいものを入れる程度で十分 |
| ブラシ・グルーミング用品 | 避難初期(3日間)にブラッシングの必要性は低い | 備蓄用セット(自宅保管)には入れてよい |
| 犬用シャンプー | 避難所でシャンプーする状況はほぼない。水が貴重な状況では使えない | ウェットティッシュ(ペット用)で代替。軽量で多用途 |
| 犬用の服(複数枚) | 防寒が必要な犬種以外は不要。タオルで代替可能 | 寒さに弱い犬種は1枚だけ入れる |
| 大きな犬用ベッド | かさばりすぎて持ち出しセットには不向き | タオルやブランケットを敷いて代用 |
判断基準はシンプルです。「それがなくて犬が3日間で命の危険にさらされるか?」という問いに対してNoなら、持ち出しセットからは外して備蓄用に回しましょう。
見落としがちだけど重要な準備
「物」だけでなく、「情報」と「トレーニング」も防災準備に含まれます。
物以外の準備
- かかりつけ動物病院の連絡先 — 災害時に移転・休診する場合もあるため、複数の動物病院の連絡先を控えておく
- ペット受け入れ可能な避難所の確認 — 自治体によって対応が異なる。事前に確認して複数の候補を把握しておく
- マイクロチップの登録情報の最新化 — 引っ越しや電話番号変更後に更新を忘れているケースが多い
- 犬の性格・特徴メモ — 他人に預ける場合に備えて、食事量・アレルギー・怖がるもの・持病などを紙にまとめておく
- 近隣の飼い主仲間との連絡体制 — 一人で避難できない場合に助け合える関係を日頃から築いておく
防災セットの定期見直しスケジュール
防災セットは作って終わりではありません。定期的な見直しが必要です。
見直しチェックリスト(半年に1回推奨)
- フードの賞味期限は切れていないか(ローリングストックの入れ替え)
- 水の賞味期限は切れていないか
- 薬の使用期限は切れていないか。処方内容に変更はないか
- 犬の体重変化に応じてフード量を調整したか
- 写真は最新のものに更新したか(犬の見た目は変わるため)
- マイクロチップの登録情報(住所・電話番号)は最新か
- ペットシーツ・ビニール袋の劣化はないか
- 避難所のペット受け入れ方針に変更はないか
見直しのタイミングは「防災の日(9月1日)」と「春の引っ越しシーズン(3月)」の年2回が覚えやすくておすすめです。カレンダーやスマホのリマインダーに登録しておきましょう。
よくある質問
Q. 犬用防災セットの重さの目安はどのくらいですか?
犬用セットは片手で持てる重さ(3〜5kg程度)に収めることを意識しましょう。災害時は犬を抱えたりリードを持ったりしながら移動するため、重すぎると持ち出せなくなります。
Q. フードのローリングストック方式とは何ですか?
防災用に別途ストックするのではなく、普段使いのフードを常に多めに買い置きし、古い順に消費していく管理方法です。賞味期限切れの心配がなくなるメリットがあります。
Q. 防災セットはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
半年に1回の見直しが推奨されます。防災の日(9月1日)と春の引っ越しシーズン(3月)の年2回がタイミングとして覚えやすいです。フードや水の賞味期限、薬の使用期限、犬の体重変化などを確認しましょう。
まとめ
犬用防災セットは「最初の3日間を乗り切る」ことを目的に、フード・水・薬・身元確認書類・リードなどの生命に関わる物を最優先で準備しましょう。防災セットの重さは片手で持てる3〜5kgに収め、おやつ大量・シャンプー・ベッドなどは思い切って外すことが大切です。物の準備だけでなく、クレートトレーニングや避難所情報の確認、半年ごとの見直しまで含めて「防災準備」です。